『∀』の称号を持つ者
...一応、あれから半年ぐらいが経った。
ランク的には、今でもAランクのままだ(というよりかは、Aランクより上がらなくなった)。
それでも、何故かSSランクに位置するはずの竜の討伐が受注できるようになった。
3人に聞いてみても、何も答えてくれない。
ただ、エミリアが「...まあ、自分のランクって言うのを見てみればいいと思うんだけど」とだけ言って、また黙った。
一応、ランクと言うのは自分がいる冒険者ギルドに聞けばわかるようになっている。
ただ、ランクなんて受注するときに一瞬だけ見えるぐらいだから、ランクが分かることはあまりない。
だから、稀に高ランクの冒険者がこうやってランクを聞きに来たり、低ランク者が高ランクの依頼を受けようとして紙をはがそうとして腕を痛めるような事がある為に存在しているものだ...と思う。
「...すいません、僕ってランクは何なんでしょうか...?」
「ああ、では魔力認識版に手をかざしてください」
魔力認識版と言うのは、昔カード制だったランク識別を無限に違う組み合わせがあるとされる魔力識に変えたことによって生まれたものだ。
依頼を終えたものが義務としてかざすものだが、依頼を受け、それが終わった事を認識する為だけに作られており、依頼を受けたのにかざさないと死亡したことになってしまう、ちょっとした欠陥品だったりもする。
なので、これだけは特別製なのだけれども―――。
「...あれ?」
「...不調でしょうか...?」
何故か、かざしても光らなかった。
本来なら、これにかざせば僕はAランクを示す紺色に光る筈なのだけれども...石版の色は、そもそものこの石の色である黒のままだった。
と、何か声が聞こえた。
『...これは不調などではなく、ただ単純に称号を持つ者用に対応していないからだ。
称号獲得者用の魔力認識版を用意するように』
...前言撤回、これは特別製ではない。寧ろ、これも欠陥品の部類だ。
「...称号獲得者用魔力認識版ですか...。
...了解いたしました」
そう言い残して、担当者もさらっと手をかざして白色=SSランクであることを証明したのち、どこかへ去っていった。
そして戻ってくると、手には魔職認識版が丁度収まりそうな窪みのある物を持ってきた。
「こちらに手を入れてもらいます」
窪みの真下に腕が入りそうなぐらいの太さの穴が開いていた。
魔力認識版が窪みに嵌め込められたのち、僕は穴に腕を容れる。
すると、なんという事でしょうか。
魔力認識版が黄金の光を放ちだしたではないですか!
それを見たランク確認の担当者は、「...∀ランクですか...」と呟いていた。
―――
「...みんな、僕たちが∀の称号をもらってたのを僕だけに隠してたり...しないかな?」
「「さあ?」」
「...ボクは隠してるつもりはなかったのですが...。」
宿に戻った後、僕は3人に詰問していた。
シンとレーヴァは思った通り示し合わせているかのような態度をとり、エミリアも思った通りに困ったような表情をした。
つまり―――やはりこの3人は称号の事を隠していたのだ。
「...まあ、竜の討伐の依頼を受けられる時点で気付いていたようだから何も言わなかったんだよ」
「言い訳は聞きたくない」
シンのその言葉すらも、僕にとってはやはり言い訳にしか聞こえない。
「いや、仕方ないだろ?」と言っていた言葉も今の僕にとっては羽音に過ぎない。
何より―――こんな簡単なことも分からなかった自分が情けないと思った。
「...まあ、分かったし良いよね?ね?」
「「...。」」
「ちょ、ちょっと!?エミリアまでそんな目で見ないでよ!」
そこで茶化そうとしたレーヴァは、何故か少し苛立ちを覚えた。
―――
...あるところに、氷を纏う人が居た。
その人は、自らが食べ物を食べようにもなかなか食べづらく、いるだけでその村に迷惑が掛かるような強い災厄の力を持っていた。
その人は、自らを龍に食べられることで周りに迷惑を掛けないようにした。が...それがこのラギアス天地を常冬の大地へと至らしめることにつながった。
そして、その人を貪った龍は長き眠りにつき、暫しの間眠り続け―――そして、今また目覚めようとしていた。




