<炎帝の役> or ある場所にて
「...パーシヴァル...!?」
シンのその言葉が届いたか、その龍は語り始める。
《我の名は焰龍王パーシヴァル。かつては小竜だったが、1500年の長きにわたって過ごすうちに人族を痴れ者として生きるようになった者。我を倒せるのならそうするがいい。だが、貴様らに我は倒せん‼》
なんてかっこいいんだろう!と、昔ならそう思っただろう。もしくは、コイツが敵でなければ。
こんな感じで、炎帝の役と呼ばれる戦いが始まった。
―――
其の紅き爪が弱小のギルドを悉く灼き尽くし、そのブレスがほとんどのギルドを薙ぎ払った。
残っているのは一部のSSランクギルドに、我等がアストラル・デスティニアぐらいのものだった。
飛び道具は一切効かず、かといって剣をふるえば反撃にあい、今もSSランクギルドが壊滅した。
残りのギルドは―――どうやら我らがアスデスと、炎帝のリーダー・カースぐらいだった。
《ええい、ちょこまかとうっとうしいわ‼滅び去るがいい、逃げし者よ‼》
それを嫌に思った焰龍王パーシヴァルは、カースを薙ぎ払う。
遂にアストラル・デスティニアしか残らなくなったわけだが―――そこで、焰龍王パーシヴァルが語りだす。
《...貴公らは強い。我など一人だけでも簡単に倒せるだろう。だが―――引くわけにはいかぬゆえ、我の屍を超えるほかないだろう‼》
なんという雄姿か。でも―――結局、倒されるのだろうと思った。
其の尾がシンに命中する。だが、その反撃と言わんばかりにシンは自らの身体に鞭打ってパーシヴァルの尾を落とした。
その後に<時間遡行>を掛けると、シンの肉体はいつもの姿になった。
落とされた尻尾を見ると、血が滴り大地を焦がし、そこに一振りの剣が生まれた。
「...パーシヴァル、君は強いけど...結局、俺には勝てないんだな」
シンがいつもの声ではないナニカの声を発すると、その前足を切り落とした。
それよりもすごいことが起こるように思えてシンを見ると―――疲弊していた。
もしかしたら、今のはシン特有のナニカの力なのだろう。
そう思い、パーシヴァルに向き直ると―――僕の首が、尾から出た骨によって堕とされた。
―――
『...え?』
何が起きたのか、それはなんとなくわかる。
多分、首が落とされたのだろう。痛い―――というか、何の感覚も無い。
もしかしたら、パーシヴァルの尾骨に首を落とされたから、その断面が焼かれて何とか生きているのかもしれない。
ともかく、早く<時間遡行>を使わなければ死ぬのは道理だ。
言葉を発せない状態な為に何とか無詠唱でその魔術を使うと、ようやく息を吐く。
今のは本当に死ぬかと思った。首を尾骨に灼かれて居なければ、恐らくは即死だった。
そう思いながら息を吸うと、首のあたりに違和感を感じる。
感激に涙しているエミリアに「首のあたりで何か変わっていませんか?」と尋ねると―――。
「...後ろの髪が相当灼け焦げている」と言われた。
「...そうですか。じゃ、早めにとどめを刺すか」
そう言いながら、俺の手に自らの魔力で構成された黒白の長剣を二本創造すると、その剣をふるいながら同時に魔術を8つ同時に平行発動する。
それもひとえに―――怒りに任せ。
―――
やりすぎた、と思ったのはパーシヴァルのコアを切り裂きかけた今だった。
魔術で潰そうとしていたところを<龍封結界>に切り替え、同時に<魔力霧消>と<胎化>を使ってそのことを隠蔽する。
「...終わりましたよー」
そんな言葉も、皆には届いていなかったように思えた。
頭部にのみ<時間遡行>を使用し、何とか灼け焦げた髪を戻すと、意外そうな顔をされた。
解せぬ。
―――
「...貴方は本当にレイなの?」
「そうですけど、何か?」
エミリアが言うその言葉は、僕にとっては当たり前の事だった。
そういうと、エミリアは僕を抱きしめた。
少しだけ驚くと、「何を...。」と言葉を発する。
それでも、エミリアはただ僕を抱きしめていた。
少しだけ嗚咽の混じったその抱擁は、ただ暖かかった。
「...よく首を落とされて生きていたね」
次に、当然の心配をしてくれたのはレーヴァだった。
尾骨にまで熱があった事を伝え、それのおかげで生きれたというとドン引きされた。
解せぬ。非常に解せぬ。
最後に言葉を掛けてきたのはシンだった。
「...レイは長髪を落とされると全力で怒るんだね...。あの動きには鬼気迫るものがあったよ」
またもや引かれてしまったのは悲しかった。
まあ、それでも。
僕たちは笑いながら、死体の転がる道を帰って言った。
―――
『彼らは殆ど4人で龍王を討伐したようだ。これには、∀の称号を与えるべきだ』
『アストラル・デスティニア。これは貴殿の功労だな、レイヴィン殿』
『...面白い事をしてくれましたな、我が孫娘は』




