表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
19/92

“異端審問会”

...目の前の少女のせいで、僕たちは現在ギルドを組んでいる。

アストラル・デスティニア。そんな大層な名前じゃなくてもと思ったのは、目の前の少女―――レーヴァが名前を決めた時から思っていた。

ただ、そのようなことを言えば今は80000ルーメンぐらいの明るさを放つレーヴァがその80000ルーメン分をどうにかして僕への殺意に変えてきそうな気がしたので、そんな事を言う人は僕たちの中にはいない。


なんだかんだで、4人で行動するようになってからもう一週間が経過していた。

場所も、最初にいたグレス王国王都・グレートデヴァルから少し離れた、城塞都市グレンとなっていた。

ランクはたった一週間ではあまり上がらず、Dランクで頭打ちだった(なお、通常の冒険者だとGからDに上がるのに半年ぐらいかかるらしい)。


『...今日も来たぜ、あの化け物たち...。』

『しっ、聞こえるぜ?』

でも―――最近は、何故か恐れられていた。

ランクなんて普通だし、少し昇級が早いだけであって驚くこともないように思えるのだけど―――。

そう思いながら僕たちは依頼板に乗っていた依頼、[Cランク 殺戮者スレイヤー討伐]を受注して、いつもの転移床に向かう。


『...今日も異端狩りするのか...。』

『いや、流石に魔物だろ』

...ようやく恐れられている理由が分かった頃、僕たちはいつもの転移を行っていた。



―――



“異端審問会”。

レギュリア大陸に、政治に関与するほどの権力を誇り、その大部分に広がる“教会”の暗部とされている組織の名前だ。

基本、その見た目は紺のフード付き外套に覆面だとされている。

...なぜ僕たちがそう呼ばれているか。その理由は―――。

「...殺戮者ってついてたけど、どちらかというと私たちが殺戮者スレイヤーだったよね?」

―――この少女、レーヴァの存在だ。


一応、レーヴァはこの国の王女らしい。物好きな貴族に限らなければ基本は一夫一妻制なのがこの国な為に、たとえ王族だったとしても兄弟姉妹が多い事は少ない。

だから血眼になって兵士たちが探しているかと言えば、そういう訳でもない。

「ちょくちょく町娘に変装して飛び出してたからね。多分、そのせいであきれられてるんだと思うんだよね」

レーヴァのその言葉にもある様に、きっと今もグレートデヴァルを兵士たちが駆け巡っていることだろう。


でも用心には越した事は無い、と3人がかりで説得させた結果―――異端審問会の恰好であれば何も問題ないという事に落ち着き、僕たちは異端審問会の恰好をしていた。

何故ここにも異端審問会と言う言葉があるのかは分からないけれども、少なからずそれで助かっているのは事実だ。

グレートデヴァルから出るときなんか、「一応確認させてもらうが、レーヴァ王女はいないだろうな?」と聞かれて危なく捕まるところだった。

それでもここにいるのだから、僕達は強運だ。


そんな事を頭の片隅で考えながら依頼満了の事を報告し、銀銭25枚を各々受け取った後ランクが早くもCへと上がり、早くワイバーンを倒せる依頼を受けられるようになるAへと上がりたいと願っているエミリアを宥めて、町を出て―――半月経ったころには、ようやくグレス王国を飛び出していた。


「...それで、これからどこに行くとかあるの?」

グレス王国領を出、一番最初にレーヴァが言った言葉は自らの無計画さをアピールするものだった。

エミリアはきっとレーヴァがどこに行こうともついていくだろうから、特に何も心配はしていなかった。

ただ、僕たちの事がよく分からないからこんな質問をするのだろう。

レギュリア大陸に戻って、アリオスでまたのんびり過ごしたい―――。

その自分の気持ちを伝えるより早く。

「...レギュリアにあるラィデォル魔術学院に行って、その先にある未来を見てみたい」

と、シンが珍しく要領を得ない言葉を放ったのだった。



―――



「...ラィデォル魔術学院か。...懐かしい名前だなあ」

シンの言った名を復唱してから、レーヴァは在りし日を眺める様に遠い目をした。

僕の周りにはǸǸ者が多いのだろうか。かくいう僕も其の一員なのだけれども。


と、ようやく現実に戻ってきたレーヴァは危惧することがあるようだ。

「...レギュリアに行くまでに、危険なところを通る必要があるのだけれど」

珍しく真剣な眼差し。エミリアもそんなレーヴァの様子に呆気に取られている。

ただ、きっとシンはそれも知っているだろう。そう思ってその顔を覗くと、たまに浮かぶ思案気な顔が拝めた。

「...ラビリントスのあるジャリア海を渡るか、魔物の量が尋常じゃなくてワイバーンとか龍種も多くいるラギアス天地から陸伝いに行くか...か。海は早いけど水龍に目をつけられれば一生海暮らしだし、ラギアス天地から向かえば最低でも2年半はかかる...。どうしたものか...」

独り言の多いシンなど見たくはなかった。そう思いながら、僕とエミリアは思案に暮れる二人を尻目に依頼を受けるようになった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ