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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
13/92

剣術の授業 or ある吟遊詩人の詩

一部過去譚はありますが、ご了承ください。

...その後、特に何があるというわけでもなく僕達は普通に過ごした。

ただ、一回だけ成長を見守るという名目で親の授業観察があった。

お父様はどのような姿で来るのだろうと思っていると、どうやら見る場所は決まっていた様で。

身分を証明する木札には、『アルフォンス・ヴァルディアヌス』という名前があった。

その名前はお父様を育てていた育ての親の名前、アルフォンからとったらしかった。

...僕の許には一切隠居後のアルフォン義御爺様の事を聞かないけど、何か魔術でも使って平民にしたのだろうか。それは分からなかった。



―――



特に何もなく過ぎていく日々は、毎日がほとんど同じことの繰り返しだった。

...いや、僕から見ればシンが大きくなっていたのが目についた。

僕の背は3期生の時に止まったのだけれど、シンはまだまだ伸び盛りなのか背が伸びていく。

いつかはイア位の背になるのだろうか...と、そう考えると少し空しくなるのだった。

「...まあ、僕のǸǸ前の背になるだけだと思うよ?ǸǸ前と今の姿は少しづつ違うのだけれども、まあ背位は同じになるんだと思うんだよね」

そう言いながら肩をすくめて見せるシンが羨ましく思えた。


因みに、イアには「...まあ、どうせお前の事だから声も高いままだろ。そうなったら、恋人にそれをいじられないようにしろよ?面倒なことになるから」と遠い目をしだされた。きっと、それは実談なのだろう。僕も、そう言った時にイアと同じ目に合わない様に、とできもしない注意をするのだった。



...とまあ、そんなこんなで僕達は今5期生だ。

本当に特にやることも変わらず、魔術のバリエーションが増えた事と剣術の腕の方が立つようになってきたこと、そして剣を二本持ちになって、(無詠唱)魔術と同時に剣をふるうようになったことぐらい―――つまり、技能面の成長が目立った。

イアに言わせてみれば、「まだまだあの世界(・・・・)よりは遅い」そうだけども。


で、5期生と言う事は剣術が科目に入るわけで。

「...じゃあ、今日から剣術の授業も行っていくことになったから、宜しく頼む。一応指南役の、ヒバナ・イアだ。まあ、あまり強くないから手加減してほしい」

と、そう嘯くイアが新たに授業の担任に加わった。



―――



「...あのセンセー、何が弱いから手加減しろだ!めっちゃ強いじゃねえかよ!」

「まあまあ...。きっと、他の人に比べればという話なんですよ」

「そうだよなー。きっと、子供をいじめて楽しい奴なんだよ」

「いや、それは曲解だと―――」

軽く汗を拭きながら僕は文句を言う同級生―――ヴァルカリアと言ったか―――を宥めていた。

彼の額には<治癒ケアルガ>を用いても残った青アザが。

それがイアの作ったものだとは、この口調を聞いても分かるだろう。


「それにしても、お前スゲーな」

唐突に、その話の矛先は僕に向く。

「すごくはないと思うのですが...。」

思う事をそのまま伝えても、「いや、アイツに痣がつけられなかったのはお前とシンぐらいだろ」

正論で返される。

多分、ずっと一緒にいて癖が分かるからなのだろうけど...そんな事を言うと、僕の身元が分かってしまうので言わなかった。


「...暇に話してるなら動けるよな?よし、先にお前からだ。レイ、お前は後で執行エグゼキュートするからな、首を洗って待っていろ」

と、そんな様子を見たかイアのその辛辣なお言葉が。

...結局、前にいた人が粘ってくれたおかげで僕の番は廻ってこなかった。


...のだけど。

「...もしかして、だが。<執行人エグゼキューター>の効果が切れると思っていたのか?」

目を冷たく光らせたイアににらまれ、その後シンに固まった肉体を動かしてもらい、何とか家まで帰った。

結局、夕方の剣術訓練の時間にぼこぼこにされてようやく肉体が動くようになり―――その肉体の硬直こそが<執行人エグゼキューター>の力なのだ、と理解できた。



―――



これは、今から10年ほどの前の話。

ある女性の話だ。


その女性は、レヴァスと言った。

其の身に胎児を宿し、すぐにも子が産まれるのではないかと言った様子だったが、彼女はなぜここにいるのか分からなかった。

結局、彼女は近くに寄った人の手によって家を提供され、子を産んだ。

その少女は今、グレス王国王女付の目付役と言う型に収まっていた。

その少女の名は―――。

...いや、今はまだ話すときではあるまい。私はどうせ、今はまだ―――アイツ(・・・)を見つけて叱るまでは、旅を行い道々にて商う吟遊詩人兼冒険者に過ぎないのだから。

『おーい、早く行くぞー!』

おっと、私を呼ぶ声が聞こえた。いったん、今は筆をおくことにしよう―――。

~~~『氷華斉太 旅詩譚』より~~~

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