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境界の物語  作者: ∀・1
αストーリア
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魔術適性試験

「えー、それでは魔術適性試験を行いたいと思います。この結果によって感情的にならない様に」

その言葉から始まった魔術適性試験。


一期生の末に行われると予告されていたこの試験にて、僕とシンを除いた同学級の人たちは大小さまざまにそれを期待していた。

僕達は―――期待していなかったと言えば嘘になるけども、それでも僕達は毎朝魔術と剣術の訓練を行わされてきている身だから、適性云々以前に使えることが分かっていたので面倒臭い感情に振り回される事は無かった。


...で、現在はその適性試験のまっさだなか。

僕よりも前にいる人たちがその結果によって一喜一憂しているのを見ては、心の中でそんな事で踊らされていて可哀想に、と内心思った。でも、そのようなことを悲しんでいる人に言えば僕の身がどんな酷いぼろ雑巾になるのか分からなかったので言わなかった。―――まあ、前歯がおられるようなことにはならないだろうけども。

そんなこんなしているうちに、僕の前の人―――つまりシンが終わったようで、僕は急いで適性試験が行われている方に向かう。


「レイヴン君、君の番です。この水晶玉に魔力を込めてみてください」

そこにいたのは、魔術の基礎を教えてくれている胡散臭い隻眼の男。

しかも、この水晶玉と言うのは相当に高価なもので、普通の経路で買おうとすると金貨数十枚はくだらなく、高いものにいたって言えば聖金貨2、3枚はするらしく、通常は国の方から学校に配布されていた。


「...シン君はすごいですね。まだまだ魔術など使ったこともないはずなのに、この水晶を破壊するに足り得る魔力を、それも制御しながら写してくれたのですから。

その兄であるレイヴン君は、どれほどのものなのか―――見定めさせていただきましょうか...?」

なんとなく、目が怖い。いや、隻眼だからとかそういうのではなくて、本当にギラギラとした欲望の視線が僕にとってとても痛いという理由のせいで怖かった。


仕方なく、僕は魔力を送る。すると、水晶玉にあった能力なのだろうか、僕の魔力が根底から引きずり降ろされる感覚があった。

此処でシンみたいに器用ならば僕はシンのように制御が出来たのかもしれない。けれども、僕の魔力制御は言うほどうまくない(魔術を使うときの制御で言えばこれきりではないけども)。

そのまま魔力を引きずり落され続け―――5秒ほどたったころ、水晶が砕け散った。


「「...え?」」

僕は、何故水晶が砕けたのか数瞬分からなかった。

それが魔力の許容量を超えたからと気づくにはいうほど時間は必要ではなかったものの、その驚きと言うよりかは―――まだまだ魔力が体内に溢れていることの方が疑問に思えた。

根底から魔力が引っ張られたはずなのに、なぜまだまだ魔力が溢れているのか―――そのヒントは、これから丁度2年前になるシンと出会った時の言葉にあったのだけれど―――それは、いまだ理解できなかった。


...と、水晶が高価だと言う事を思い至った僕は恐る恐る隻眼の教師を見る。すると―――

「...ハハハ、砕けるには使用容量の数十倍は必要な筈だ、だがそれを砕いたとなると魔力量は250000ほどになる...。だが、レイヴン君は倒れていない、という事はまだまだ余裕がある...。

...これは面白くなりそうだ」

―――そんな感じで、譫言のようにつぶやいていたかと思うと、突然詰め寄ってきた。


「...いや、君がこれほどの魔力を持っているなんて正直予想外でしたよ」

やっと冷静になったか、その教師―――ロベルティオと言ったはずだ―――はいつもの不気味な様子を取り戻してくれた(不気味な様子を取り戻してくれたなんて、ちょっとおかしいけれども)。

「...えーと、水晶って高価なものですよね?僕はどうすればよいのでしょうか...?」

そう聞くと、少しだけ驚いたように空っぽの眼窩を見開くと、

「いや、君は何もしなくていいですよ。ただ、君の魔力量が弟君よりも制御が甘い分桁外れだと伝えるだけですので」

「いや、それそのままじゃないですか!?」

正論に含まれた直球ストレートを心に打ち込んできた。


其の傷から立ち直ると、僕は「...この水晶直しますよ」という。

「そんな事をできるのは神族の力を持つ者だけですよ―――」などと言っている気がした隻眼先生の前で、僕は<時間遡行スリーパー・オン>を使う。


「馬鹿な!?その力は神族しか使えないはず―――」

ガタっと、椅子が倒れるのも構わない様子の隻眼先生ロベルティオ・フーバーは、ふと思い出したように僕に在る事を行う様に告げる。

「...君の能力を見ての願いです。<神体降臨レヴァイン>を使ってくれないでしょうか?」

その言葉は、僕にとって少なからずの傷を残すものとなっていた。

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