私がルール
神様は言いました。
「そこには何もない。 あるのは情報だけだよ」と。
科学者は神様の言葉を考えました。
「今私の目の前に一つのリンゴがあります。 確かな事実です」
「そうだね。 でもあるのはリンゴがあるという情報だけ」
「では、リンゴの色は赤でしょうか?」
「君にとっては赤いかもしれないけど、他の人はそうとも限らないよ」
科学者は天井を見上げて考えを巡らせました。
「リンゴは重いでしょうか?」
「君にとっては軽いかもしれないけど、他の人はそうとも限らないよ」
「つまり超人が存在する、と?」
「それは君を調べてみないと分からないよ」
科学者は何かを納得した様子で再度質問しました。
「私が世界の法則ということでしょうか?」
「そうだね。 この世界に関していえばその通りだよ」
「ありがとうございます。 楽しいお話でした」
「それじゃ、お礼はもらっていくよ」
神様は席を立ち、奇妙な扉をくぐって帰っていきました。
――――――
目を覚ますと午後3時を過ぎていた。
1時間ほどしか寝ていないというのに、やけに熟睡したような満足感がある。
夢で交わした会話を思い出す。
脳が情報を受け取り感覚を生み出すとの結論。
全ては脳が認識して、自己解釈した情報にすぎないと。
私が世界の振る舞いを決めているのだと。
果たして私の友人は、私と同じように思考して動いているのだろうか。
そんな疑問が湧いてくる。
夢の中で尋ねた気もするが、あまり思い出せない。
小腹がすいた。
カゴにもっていたリンゴに手を伸ばすが、何も感触が無い。
リンゴが一つ減っている。
最後の一つだったんだけどな……