Case:6
???
「それで、検体も外敵自体も、どちらも捕まえることなく身体だけ失って霊体で戻ってきたと。」
真っ暗な部屋、様々な体躯の造魔人間が1つの霊体を叱責する。
『霊体なら私の歌が効くとかいう虚構掴ませたのは誰だったかしら?』
「貴様……」
門の前に子供が1人歩み出る。
「ふふーん、こんなヤツ早く創りの大樹に戻して解して作り直そうよー。」
「まぁ待て、こやつは霊喰餌夢を反転させ零悔永無に変えたわけじゃ、これを使えば霊体として奴らに干渉することも……」
「無理だよ。」
門が開かれる、私が、身体が吸い込まれ、私で無くな……
「奴らは霊を実体化させるお香を持ってるし、霊だけをくっつける粉も開発してる。」
「待てと言っておるのに……」
嫌だ、消えたく、な
『助……』
「全く……別のもんが出てくる前に閉めろ。」
「はーい。」
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「フェズ、お前の言っていたことは正しかった様だ。」
椅子に座り、カップにミカエラの好きなお茶を注ぐ。
「ウリエルの門が見つかった、この様子だと最低でもあと2つはあるだろう。」
「今、局全体で探知範囲を広げて門の捜索をしている。」
「失楽園の樹……人智を越えし進化へ至る樹木。」
「こんなものさえ顕現しなければ……」
ガチャリ、と戸が開く。
「先輩ー、門の場所が分かったって探知班から連絡来たっすよー。」
「そうか、すぐに向かう。」
お茶を一気飲みし、椅子から立つ。
「また来る。」
「ラージュちゃんもう会議室に着いてるらしいっすよー。」
「あぁ、すぐに行く。」
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対策班は会議室に呼ばれていた。
更生局を襲ってきた造魔、私が夢に見た門、そして魔人間症の再発……
「全部私のせいですよね……」
頭が痛くなる。
夢の話が正しければ私がその門から出てきた訳だし、その門の関係者っぽい人が襲って私を連れ去ろうとしてたわけで……
むしろ無関係になる要素が無いという状態、壊滅的な被害を受けた霊幻班の残りメンバーからは痛い視線を感じるし、治療班からも興味と奇異の目で凝視されている。
「遅くなった、門が見つかったんだろう?」
「ラージュちゃん早いっすねー、治療班から何か変なことされてないっすか〜?」
先輩方が到着すると探知班が椅子から立ち上がりホワイトボードの前に立つ。
「皆様、本日はよくお集まりいただきました。」
「今回は彼女の夢で話に出てきたというウリエルの門、その場所と思しき門が見つかったため遠征隊を組むことになりました。」
霊幻班班長が手を上げる。
「ふむ、ファトゥムくんどうぞ。」
「ウチはこの前の襲撃の損失で人員が裂けるほどの人数が居ない、物資支援のみ可能ということ本業務に戻りたいのだが?」
「もう、ファトゥムったら、またそんなこと言って……」
警備班が落ち着かせようと肩に手を置こうとするが、すり抜ける。
「業務に戻るのは許可できませんが人員不足なのはこちらでも確認しております。」
「大体今回の事件含め保研のしわ寄せが来てんだ、他の班から人員を出すよりこいつらに行かせんのが筋じゃねえの?」
「黙って聞いてりゃ……!!」
「落ち着け、ジース。」
ピリピリと緊張が走る。
「ふむ、探知班から情報、霊幻班から物資支援だけで足りそうですか?」
「ウチは3人しか居ない班ですので、それで業務に支障を来すのですが……」
「それなら!!」
警備班班長が机を叩きながら立ち上がる。
「保護研の業務でしたらベロス第3班から編入補填しますので、大丈夫ですよ!!」
「机がズレるので強く叩かないように、それで、ドゥブールくんの意見はこうだがアメノマくんはどうだい?」
「ベロス第3班は元々保護研究班の人員が何人か所属しておりますので、その対応で構いません。」
班長が私たちに立つように目で合図を送る。
「それでは、我々はすぐにでもウリエルの門へと向かわせていただきます。」
「ふむ、急ぐみたいだね。」
会議室を後にする。
扉を閉める間際、霊幻班班長の
「アイツらの出発が許されんなら俺も基本業務に戻ってよかったんじゃねえか……」
とのボヤキだけが静かな会議室で聞こえた。