Case:5
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「ん……ここは……?」
「あら、やっと起きたのね。」
「あれ、私、確か……」
木陰の下、女性が私の頭を膝の上に乗せ、優しく撫でながら歌を歌っていた。
「もう、あれだけ門の外に出たらダメって言ったじゃない。」
「え、っと、どなたですか……?」
「もう、姉の顔を忘れるだなんて寝惚けてるのかしら……?」
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頭が、痛む。
ゆっくりと立ち上がりながら、
「もう、×××ったらホントに大丈夫?」
「違う、私は……」
女性がクスクス笑いながら
「そうね、今はラージュだったわね。」
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頭の中がぐちゃぐちゃする。
×××という名前、はじめて見る女性、強く痛む頭。
「そうね〜? ラージュはすぐにでも戻りたいだろうけど、お姉ちゃんからの素敵なアドバイスを聞いてからにして貰えるかしら?」
「そ、もそも、お姉ちゃんじゃないです……」
「まぁまぁ……」
視界が暗転する。
光を取り戻すと、また膝枕されている。
「死ぬよりマシでしょ?」
「死ぬ、って……」
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「今アナタは、そうね〜、食べられかけているのよね。」
「なら、尚更早く戻らなきゃ!!」
女性がクスクスと微笑む。
「起きたところでまた寝ちゃうのがオチよ。」
「なら、どうすれば……」
「貴女を襲ってるのは霊喰餌夢、セイレーンとバクと口裂け女の造魔。」
「れ、くいえむ、あれんじ……?」
「ウリエルの門から出てきた……アナタの職場で言う魔人間症ね。」
知らない言葉の連続に頭が更に痛くなる。
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あぁ、子守唄もどんどんうるさくなっていく。
「今聞こえてるでしょ、これがソイツの呪詞と言ったところかしら。」
「じゃあ、どうすれば……」
「ふふっ、狂犬病ってのは治療薬の無い病気なのよ。」
「な、何が……?」
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「私が開いておいたわ、ほら、行ってきなさい。」
「お友達は傷付けないようにね〜?」
──────────────
声が聞こえる。
「くっ、ラージュちゃんだけでも離してくれませんかね?」
「あらぁ、この中でも上物よ?」
先輩と、知らない……
「だ、か、ら、ラージュちゃんはそもそも霊でも何でも無いんすよ、というか、取引に応じないんすか?」
「取り引きも何も、劣勢なのはそちらでしょう?」
お腹が、空いて……
「俺ぁ加減が出来ないし、出来れば仕事のためにアンタは殺さずに降伏して欲しいんすよ。」
「あら、脅しのつもり、それこそこの子を人質にするつも……」
が、ぐ、る……
「あら、この子、どうやって私の歌から……」
grrrrrrrrr
──────────────
!!
「はぁ、はぁ、気がついたっすか?」
「が、ぐ、わた、わたし。」
真っ赤に染まった会議室、噛み傷まみれのジース先輩、
口の中に広がる血の味。
「大丈夫っすよ、もう奴は居ないから、怯えないで。」
「わ、わた、私……」
居ないんじゃなくて……
先輩を突き飛ばし、街に逃げる。
「ラージュちゃん!!」
私、私。
「私、もう一緒に。」
「居てもらわなきゃ困るな」
ヘファスタ班長が、目の前に立ちはだかる。
「ふむ、人狼株が消しきれてなかったか。」
「ヘファスタ班長、私は、危険です、から。」
「だから我が班に入れて管理してるんだよ、人狼株と思ってたが、違う種か……?」
「ラージュちゃん、ボロボロの俺を突き飛ばすとか容赦ないっすね〜。」
「だって、私が……」
「損失はどうだ?」
「会議に出てた霊幻班とメイドは全員殺されたっすねー。」
「霊を喰う奴か、しかしアラートは出てなかったが……」
「ウリエルの門……」
ヘファスタ班長が目を見開きこちらを見る。
「ラージュ、どこまで知っている……?」
「夢の中で、姉が……」
「姉?」
「はい、自称姉が……」
ヘファスタ班長が苦虫を噛み潰したかのような顔で何かを思案する。
ジース先輩は逆に楽しそうに、頷いている。
「分かった、門を知ってる以上、その話も信じよう。」
「ほら、言ったじゃないすか先輩、あと三つはあるってー。」
「あの、何の話ですか……」
ため息を吐いてから、
「ウリエルの門とミカエルの門がある以上、あと2つあると考えた方がいいという話だ。」
とだけ言った。