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Case:4

 ???年前。

 魔人間症の発症理由が解明されてされておらず、複数の罹患者とそれに伴うモルフォフェウスへの影響で、一帯は混沌のさなかにあった。

 政府は原因不明の魔人間症に抗うべく、3人の自己治療を行った元魔人間症罹患者を集めた魔人間症対策班を結成した。

 天使の魔人間症を発症し、奇跡の力で魔人間症を克服したミカエラ・フェズ。

 悪辣の魔人間症を発症し、自らの強固な意思で魔人間症自体を取り込み再び人へと成ったラオ・セツカ。

 金属の魔人間症を発症し、自身が設計開発した治療器で魔人間症を治療したヘファスタ・アメノマ。

 チームは結成後直ぐに活動を始め、様々な人々を救っていった。

 

 そして、数百年の月日が流れた……


「ミカ、ヘファ、対象を不昼城内に発見したよ。」

「こちらも不昼城に外部からアンカーを刺した、俺の作ったのが正常に動いてるなら城の移動は防げるはずだ。」

「あらアメノマ、自信が無いの?」

「無駄口は後だフェズ、セツカの元に向かうぞ。」

 月すら姿を現さない常夜の中、魔人間症対策班の3人は街の中心に現れた城へと来た。

 周囲の住宅街は影響に飲まれ城の一部となってしまい、住民達は城の従者へと変異している。

「今回は常夜といい城といい、中々強い影響の持ち主だな。」

「そうねー、アンタの工場や私の天界レベルね〜。」

 不昼城に入ると、セツカが扉を閉じる。

「ラオの地獄は?」

「アンタの影響も大概よね。」

「目標地点に到達、フェズが先陣を切って続いて突入するぞ。」

「はいはい。」

 玉座前の扉をフェズに開けさせ突入する。

「全く、私が偉くなったらアンタは最前線のリーダーにするから覚悟しなさいよ!」

 多量に撃ち出された血弾が空中で爆散し消滅する。

「はいストーップ♪」

 飛びかかってきた対象をセツカが止める。

「ちぃっ、何だよお前らぁっ!? オレ様の城にズケズケと!!」

「アンカー発射!!」

「くっ、この、この俺が……っ!!」

「さて、知っていること全て……まずはお前の名前から吐いてもらおうか。」

 こちらを強く睨み付けるも、抵抗は無意味と気付いたのか諦めたように溜息を吐く。

「オレ様はフォリン・ドゥールブ=ジース、お前ら魔対班だろ、つうことはオレ様は殺されんのか?」

「殺さない、少なくとも対話ができるうちにはな。」

「ちっ、こうも床に磔られてたら対話もクソもねえだろ、お前に協力するから外せ。」

「アンタ、そう言って私たちをまた襲うつもりだろ〜?」

「まぁ、暴れたらタオが壊すけど!!」

「はぁ、すまないな、今から外してやる。」

 露骨な嫌悪感を示すフェズと、無邪気な殺意を見せるセツカのことを詫びながらアンカーを外す。

「はは、嘘だったらどうするつもりだったんだ?」

「魔人間症罹患者は契約を反故にできない、ついでにお前の病名の自覚はあるか?」

「……ノーライフキング。」

 ジースはアンカーを外されると身体を霧に変え、玉座に座り直す。

「アンデッドの王、吸血鬼がオレ様の魔人間症だよ。」

「うふふ、下賎な闇の王なのね?」

「フェズ、煽るな。」

 苦虫を噛み潰したような顔でこちらを見つめるフォリン。

「ねー、吸血鬼さんなのになんでそんなに弱ってるの?」

「……なるほど、血を吸ってないのか?」

「……ノーコメント。」

 伏せて黙り込んでしまう。

「まぁいい、俺が絶対治してやる、同行願えるか?」

「拒否してもそのガキと女がオレ様を殺すだけだろ?」

「あら、私はどっちでもいいけど?」

 フェズが目が笑っていない笑みを浮かべる。

 少しの沈黙のあと、ジースはぶらりと立ち上がり、こちらの耳元に顔を近付ける。

「隙だらけで今からでも殺せちまいそうだ……し冗談だよ、オレ様をどこへでも連れていきゃいいだろ?」


──────────────


「問診を始める。」

「へいへい、問診も見た顔がやるったぁ、相当人が足りてねえな、ここ。」

 実際足りていない。

 フェズは気に食わない相手にはすぐ消しにかかる、セツカは治すより壊した方が手っ取り早いといいすぐに被検体を殺す。

 結果、基本的に問診を行うのも治療を施すのも、なんならリハビリや仕事斡旋も俺がやっている。

「名前は聞いた、吸血鬼株というのも聞いた。」

「なら、そっちは何を聞きたいんだ?」

「何故血を吸わなかったのか、吸血鬼と自覚があるなら血を吸わなかったら弱るのは分かっているはずだろう?」

 ジースがバツの悪そうな表情で目をそらす。

「黙秘権は。」

「無い、嘘でもいいから理由を話してもらう。」

「じゃあ、これは嘘なんだけどよ……」


「オレ様は大切な人まで眷属にしちまった……唯一の肉親である妹をな?だからこの世にしがみつく理由がなくなっちまって吸血しなくなった……なんてどうだ?」


 ……

 冗長な沈黙が部屋を支配する。

 <嘘>という言葉で本心を隠して居るのだろう、不快そうな表情で少し俯いている。

 バイタルがやや不安定になり、影響を留めきれて居ないのか室内灯が明滅する。

「お前の治療をすればその子らが治る可能性もある。」

「治らなかったら?」

「必ず治す、その時はお前をウチの班に加入してもらい、治る手段を見つけるまで俺を監視して構わない。」

 ジースがシニカルな笑み浮かべると、室内灯の明滅は止まる。

「ははは、信用を買うと同時にオレ様をスカウトするって魂胆か?」

「そう取ってもらって構わない、どうせ全てが終わった後の更生先には、人の足りていないウチに引き込むつもりだったからな。」

 室内灯が消えたと思えば、すぐに点灯する。

 目の前のジースが消えていると思えば、俺の首元に牙を立てられる。

「やっぱり今すぐにでも吸い殺せそうだ……冗談だって、殺気を立てるな。」

「で、いい返答は貰えるか?」



「あぁ。」

 バイタル値が正常値を指す。

「オレ様の妹のことはヨロシク頼むぜ、先輩(・・)。」

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