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明日、来ます

作者: ニコ

 うちの店は昔からある店。

 正直な話。



 あんまりきれいじゃない。






 そんな我が家の店に、毎年恒例の恐怖の日が。




「明日来るそうよ」

「まじか?」


 父と母、私と妹は互いに顔を見合わせた。

 あー、この分だと今日は徹夜だ。





 

「まずは冷蔵庫だ」


 真剣な顔をして父は言った。

 隣で母が、ビニール袋片手にスタンバイ。


 後ろで妹と私が店の床から、鋼鉄の固さになった汚れを落とすのに四苦八苦。

 父と母、冷蔵庫の前でゴソゴソ。


 

「あんた、平成が賞味期限になってるのがあるわ」

「なんだと!?」

「うーん、でも中身ダイジョブそうよ」

「だな。匂いも普通だし」

 それを聞いてた妹と私。後ろから、


「そうゆう問題じゃないでしょ!」と一喝。



ちなみに、害虫だけはいないんだよね。

業者に頼んでるから。


この状態で害虫までいたら最悪ジャン。



で、次の作業に取り掛かる。


「ねー、お父さん、ポテトサラダどうするの?」

「あ……」

「注意されてなかった? 手作り出来るだけヤメテネって」


 そんなこと言われてもなあと父。


「これはうちの自慢の品だから……」

「それは分かるけど、何かあったらまずいよ。せめて夏の間は別のにしようよ」



 そーだなと父。

 とりあえず夏の間は、キュウリと玉ねぎのマリネで落ち着いた。



 それから。


「ねーお父さん、天井にでっかいハチの巣があるんだけど」

 と母。

「別にいいだろ。衛生上問題があるわけじゃない」

 安全上問題があるんじゃない? と私が言ったら父が殺虫剤持ってきたオイオイオオイイオイオイっ


 ちょっと、食材移動してからにしてよ、お父さんっ。




 時計みると夜中の一時

 やっぱ日付変わっちゃったよ。

 普段からちゃんとやってりゃいいのに。


 でも店内、見違えるほどきれいになったわ。

 別の店に来たみたいっ。

 床って白かったんだ……。

 

 


 そして迎えた当日。

 びしいっ、とスーツ姿の人が二人店にやってきた。

 家族総出で、キンチョーの面持ちで迎える。

 お店の中はピッカピカ。

 

「綺麗ですねー」

 来た人は女性と男性。女性の方が店内見渡してそう言う。

 えへへそうですか? そりゃもう徹夜で掃除しましたから。

「冷蔵庫の中身、点検しますね」

 それも想定済み。キタっ、と父と母、ドヤ顔。


「うん、ちゃんと整理整頓されてますね」

 ムフフと二人でまたドヤ顔。恥ずかしいからやめてよ。

 ひととおり冷蔵庫やパントリーを見回った後、相手さんたちは言った。

「そうだ、こないだお伝えしたポテトサラダですが……」

「あ、はい、夏の間は玉ねぎのマリネにすることにしました」

 すかさず私が答える。

 相手さん、うんうんと満足そう。

 

 そのあとひととおり点検し終わり、二人は書類にサラサラと何か書きとめてハンコを押した。

「合格です。良かったですね」

 それを聞いて家族全員ε-(´∀`*)ホッ


 そして二人は帰り際にこう言った。


「昨日は夜中までお掃除大変でしたね」



 ばれてーら……一家全員、普段からきれいにしようと心に誓うのであった。




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― 新着の感想 ―
[良い点]  面白かったです。はい、「お前こないだも、面白かったです、だったじゃねえか?」と言われそうですが、理由があります。何故なら、面白くなかった作品には、感想書かない、そもそも最後まで読まないか…
[良い点] 短い文章ながら、その中に起承転結が盛り込まれており、非常に読みやすい文章。また、このサイト内の小説によくある「いや、そんな展開ならなくね?」というような要素がなく、リアリティに溢れる作品で…
[良い点] 飲食店は大変なんですね。期限切れの食べ物が冷蔵庫にあるような状態で、今まで何も問題が起きなかったことが奇跡だなと思ってしまいました。
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