ラッキースケベで、おっぱいを揉んだり、パンチラを見たり、ブラチラを見たりしたいだけの人生だった
俺が生きてきた25年間。
ラッキースケベなんて……なかった。
転んだ拍子に、おっぱいを揉んだり。
転んだ拍子に、顔がおっぱいにダイブしたり。
転びそうな女の子を助けようとしたら、二人とも転んで、女の子に馬乗りされたり。
女の子のスカートが風によって捲れ、パンチラしたり。
女の子の服が雨によって透けて、ブラチラしたり。
そういった偶然に起こるエッチなイベントに、俺は縁がない。
(一度でいいから、漫画みたいなスケベシチュエーションが起こってほしいな……)
そんなことを願いながら俺は帰宅し、リビングの扉を開いた。
「ただいま~」
「あ、お帰りなさい。お仕事お疲れ様」
「…………」
一人の女性が上半身裸で立っていた。
Gカップおっぱい丸出し。手にはブラジャー。
「ごめんね、こんな格好で。料理を服にこぼしちゃったから、着替えていたの」
「恥じらってよ!!」
「……え?」
「『お帰りなさい』じゃなくて、『きゃああああっ!! どこ見てるのよ変態!』が普通でしょ! 着替えを覗かれて、おっぱいまで見られたんだからさ!」
「……いまさら何を言っているの? 私のおっぱいなんて、さんざん見てるでしょう? ヤることだってヤッているし。それに私達、夫婦でしょ」
「結婚しているからって、いっぱいエッチしているからって、恥じらう気持ちを失ったら、セックスレスになりやすいって、こないだテレビで言ってたぞ!」
「……ふ~ん。なら、恥じらわない私とは、もうシたくないのね?」
「超したいです!」
即答した。
「うん、素直でよろしい。それで? なんで私に恥じらいながら『きゃああああっ!!』って言って欲しかったの?」
「着替えを覗くという、ラッキースケベシチュエーションだったから」
「……全然話が見えてこないんだけれど?」
妻がブラを付けて新しい上着を着るまでに、俺はラッキースケベの説明と、先ほど帰宅するまで考えていたことを伝えた。
「つまり、私が着替えを覗かれて『きゃああああっ!! どこ見てんのよ変態!!』みたいなセリフを恥ずかしそうに言えば、ラッキースケベというシチュエーションが成立した。しかし、顔色一つ変えずに応対した私は論外。よって、ラッキースケベとはならない……」
「そういうこと。ラッキースケベとは、偶然に起こるエッチな出来事、恥ずかしがる女の子、という二つの要素が肝」
「……今スマホで調べてみたんだけど、『恥ずかしがる女の子』は必要ないみたいよ?」
「必要だよ!! 恥ずかしがるからいいんだよ! 可愛いいんだよ! 萌えるんだよ! エッチなんだよ!」
「そ、そう……」
あれ? 軽く引かれた?
「とにかく、俺にとってのラッキースケベは、恥ずかしがる女の子が必須。よってさっきのはノーカウント」
「ざ、残念だったわね……」
「あーあ。一度くらいはラッキーでスケベなシチュエーションに遭遇したいなー」
子供の駄々っ子みたいな感じで言う。
「はぁ……分かったわ。今度偶然にそういうことが起きたら、私が叶えてあげるわよ」
「え、本当?」
「約束するわ。あなたと初体験した頃の私を見せてあ・げ・る♡」
「あ、ありがとう! やはり持つべきものは、理解ある愛しのお嫁さんだ!」
「まあ『偶然』が条件だから、難しいとは思うけれど……」
「大丈夫! 俺何年でも待つから!」
「……ねぇ、正直に言っていい?」
「何?」
「男って、バカでエロよね」
「……返す言葉もございません」
「あと、ラッキースケベって普通にセクハラじゃないかしら? 2次元だから許されるのだと思うけれど?」
「……ラッキースケベ論争はしたくありません」
「私の裸や下着姿を見せるだけじゃ駄目なの?」
「駄目です! 意図的なエッチは別腹です! ラッキーでスケベが萌えるんです! ラッキーなスケベが男の夢なんです! 漫画やアニメみたいなラッキーすぎるスケベを体験したいんです!」
「そ、そう……。なら、私とラッキースケベできることを、楽しみに待っていればいいんじゃない?」
「ああ、楽しみにしているよっ!!」
いや、そもそも、嫁との偶然エッチイベントは、ラッキースケベにカウントしてもいいのだろうか?
やっぱりラッキースケベというものは、学生時代に好きな女の子とするのがロマンであり、男の夢だ。
嫁よ、ごめんなさい。
ラッキースケベとは、偶然に起きるエッチな出来事、恥ずかしがる女の子、学生時代限定、という三つの要素が肝であった……。
……つまり、学生ではない俺と妻のラッキースケベは、本物のラッキースケベではないのだ。
くそ。もう悔いても……遅いのか。
今の嫁とのラッキースケベもいいものだが、やはり本物を体験してみたかったな……。
学生時代に嫁さんと、漫画やアニメみたいな本物のラッキースケベを、一度はしてみたいだけの人生でした。