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六十話 昔話Ⅲ

 俺たちは少しでも急ぐ為に馬に乗って目的地のフィールドにやってきた。

 周辺を見渡してみたが、俺でも倒せそうな小さな昆虫型や獣型のモンスターしか見当たらない。

 みんなで声を出しつつ先に進んでいった。


「サピエル! どこにいるんだ!」

「いるなら返事をしろ!」


 周りからは警戒したモンスターたちが逃げだしたり、逆にこちらを睨みつけたりしてきた。

 それらを無視して、もう少し奥にある森フィールド付近まで馬を走らせる事にした。


「シンも離れるなよ!」

「はい!」


 ヴェイグさんが後ろにいる俺へ声を掛けてくる。

 それにしっかりと返事をしながら、俺も周囲を観察する事は忘れない。

 もしかするとどこかにサピエルが倒れている可能性もあったからだ。

 身体が消滅してなければまだ間に合うかもしれない。

 だから無事であってくれ、と願いながら馬を走らせ続けた。




 俺たちは森の入り口までやってきた。

 ここまでにサピエルの姿は見えなかった。

 きっと森へ入ったのだろう。


 中に入るなら馬を置いていくしかない。

 一旦馬を置いてくるか?

 そう悩む時間も惜しいみたいで、ヴェイグさんはパーティの一人に馬を任せる事にしたようだった。


 戦力にならない俺が、ここでもし一人残っても周囲の危険があるかもしれないという判断だろう。

 俺は自分の弱さに不甲斐なさと、何故着いてきてしまったのかという後悔が今更沸いてきた。

 だが勢いだけでもここまで来てしまったのだ。

 もう進むしかない、と心を奮い立たせながら足を動かした。




 森の中は太陽の日差しが差し込んでいたので比較的明るかった。

 足元は当然ながら伸び伸びと根が這っていたので、とても歩きにくい状態だった。

 俺はこんなところでモンスターに襲われたらかなり厳しいと思った。


 だが流石に歴戦の冒険者であるヴェイグさんたちは、全く歩くスピードが落ちなかった。

 俺は着いていくのが精一杯で、何度か足がもつれてしまっていた。


 そうしてモンスターにも出会う事なく、なんとか進んでいくと少し開けた場所に出た。

 ここまでにもサピエルへ声を掛け続けていたが、やはり返事はなかった。

 ヴェイグさんたちは木々の間も確認しながら進んでいたので、道中での見落としはきっとない筈だ。


 開けた場所を確認すると、ヴェイグさんと比べても明らかに大きい蜘蛛が佇んでいた。

 更にその周りには広々と巣が張り、そこから糸が四方八方に伸びていた。

 巣にはウルフ型や昆虫型といった色んなモンスターが囚われていた。

 よく見るとその中になんとサピエルの姿があった。


 それを確認したヴェイグさんが苦々しい声で「クソッ」と呟いた。

 きっと最悪な状況だという事がその顔と声から伝わってきた。

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