五十九話 昔話Ⅱ
そして俺たち……いや、俺がやっと剣を振れる程度になった頃。
サピエルが朝から一人でクエストへ向かった。
その時に俺は少しだけ話しをしたが、どこに行くのかまでは聞かなかった。
どうせいつもと同じ、彼にとっては簡単なクエストだと思っていたから。
――数時間後。
それを知ったヴェイグさんは、かなり慌てた様子でサピエルを追いかけようとしていた。
どうやら二人で一緒に行く予定だったらしい。
目的地は基本的に子供一人でも問題ないくらいのモンスターしか生息していない場所だ。
それなのに討伐クエストが出ている。
……そう「例外がある」という事だ。
俺が以前に読んだ本に書かれていた。
モンスターには色んな習性や特性を持つ種族たちがいる。
お互い共生関係にある別種族のモンスター、ヒト族が利用出来る習性、そして勿論その逆……ヒトには危険な特性も存在する。
今回二人が行くクエストもそういった物だ。
気を付けていれば問題はないが、無警戒だと危険なモンスターがいるものの一つだった。
ヴェイグさんはきっとそういったクエストの事を教える為に、今回の討伐クエストを計画していたのだろう。
「あいつ! 準備してからだって言ったのに!」
「ごめんなさい。俺がちゃんと引き留めていれば……」
「シン、気にするな。最近のサピエルはどうにも身勝手なところがあるからな」
「でもっ!」
「知らなかったんだ、お前のせいなんかじゃないさ。大丈夫だ、俺に任せておけ」
そう言ったヴェイグさんが深刻そうな顔をしていたのをよく覚えている。
いつもはホームにいるレオニスたちも、別行動をしていてその日はすぐに出られる人数が少なかったからだ。
俺は罪悪感から、何か手伝えればと思って一緒に行きたいと伝えた。
最初は渋っていたヴェイグさんも、必死に頼んでいると折れてくれた。
少しでも足手まといにならないように、自分の支度は数分と掛からずに済ませる。
そしてヴェイグさんのところに戻ってくると、数人程度だが集まっていた。
ブリーフィングも丁度今から始まるところだったようだ。
「サピエルの救出を最優先、人数が少ないから固まって行動」
「「「はい!」」」
「よし。それとシンは俺の傍を離れない事、いいな!」
「はいっ!」
ヴェイグさんは全員分の荷物や、装備の状態を見ると手早く話しを終わらせる。
みんなの返事に頷くとしっかり俺に釘を刺す。
俺も大きな声で返事をすると、すぐに出発する事になった。