五十七話 再臨
俺とイリスは神に呼ばれ、神殿の入り口を通る。
以前に来た時も思ったが他の利用者はいないのだろうか。
そんな事を思いながら、巫女であるリタと目を合わせた。
「久し振りだな……というほど経ってもないか」
「ようこそ神殿へ、こちらまでどうぞ」
「あらあら、相変わらずね」
俺が挨拶代わりの軽口を喋りながら近づくと、リタはまるで初めて会ったかのように自己紹介を続ける。
「私は巫女のリタと申します、本日はどのような御用でしょうか?」
「あ、あぁ。今日は神の方から呼ばれていてな」
「だから神様に私、イリスが来たって伝えてもらえるかしら?」
「かしこまりました。確認してみますので、少々お待ちください」
そう言ったリタは女神像へと祈る仕草をする。
これもまた少し待つのかと思っていたら一分も経たない間にリタが動いた。
「お待たせしました。確認が出来ましたのでこちらの転移陣へどうぞ」
「ああ。今日は随分早いんだな」
「ありがとう。きっと神様も待ってたんでしょう」
俺たちはリタに返事をして転移陣に乗ると、すぐに光があふれてきた。
目を焼かれそうなくらいの光量で、やはり目を開けていられなかった。
これくらいさっさと改善すればいいだろうに……。
「いらっしゃい、お二人さん」
眩しさが消える前、俺はまだ目を開けてもいないのに聞き覚えのある声が聞こえてきた。
目を開けると、これまた見覚えのある――部屋と言うには何もない空間に立っていた。
またここか、と思った俺はつい神に対して『意見』を口にする。
「もう少し見栄えのいい部屋にでも変えたらどうなんだ?」
「あら、ふふっ。そんな事気にするタイプなの?」
「別にそういう訳ではないが。神に会うのにこんな簡素な部屋みたいな場所に立ってるだけっていうのも味気ないと思っただけだ」
「君以外には特にそういった反応を貰った事は無いわねー。だからまぁ、大丈夫じゃないかしら」
けらけらと笑いながら神はそう言った。
多分だが他のやつもこの神とやらの威厳の無さ、更にこの部屋の『神々しい』とは真逆の見た目。
それらのせいで呆気に取られていたのだと思う。
なんて考えていたら隣のイリスが喋りだした。
「それで神様。サピエルさんの件なのですが」
「そうそう。それで貴方を呼んだのよ。シン・グラベリウスくん」
イリスが急かしてくれたお陰で、本題を聞けそうな流れになった。
神の軽い口調に引きずられて、俺もずっと軽口を喋り続けて話しが進まなくなりそうだったから助かった。
聞いていた話しだと急ぎの要件といった感じだったのに、こんな感じで大丈夫なんだろうか。