四十八話 報告するまでがクエスト
ギルド内の騒ぎを聞きつけたレオニスが、奥の部屋から出てきた。
頭を搔きながら近くまで歩いてくると、俺とサピエルを見て呆れた顔をした。
「ったく……てめぇら、こんなとこで暴れるんじゃねぇよ」
「俺はなにもしてないぞ」
「どこをどうみたらそんな事言えるんだ。おいサピエル、立てるか?」
「くっ、当たり……まえ、だ」
サピエルは一人で立ち上がろうとする。
だが足に力が入らないのか、途中でバランスを崩した。
そこにすかさずレオニスが肩を貸す。
「はぁー……全然駄目そうじゃねぇか」
「余計な……真似を、するな……!」
「黙ってろ。お前はシンに負けた、それが事実だ」
「ふざ……けるな、よ……! 俺は、まだ……!!」
「黙ってろって言っただろうが。治療ならしてやるから、向こうの部屋に行くぞ」
「くっ……!」
「治療が終わったら拘束はしておくからな。ベットの上で頭を冷やしておけ」
レオニスに肩を借りるというよりも、ほとんど担がれる形でサピエルは連れていかれる。
その時、俺に向かってサピエルが「シン、必ずお前を倒してやる」と睨みながら捨て台詞を吐いてくるのだった。
「サピエルさん、怖かったですね……」
「そうね、目付きも相当危なかったわ」
「みんなすまないな、昔はあんなやつじゃなかったんだが」
「い、いえっ! シンさんが謝るような事じゃないですから!」
「そうねぇ、今日は偶然かち合っちゃっただけだろうし」
「だいじょうぶ」
「あんたはあたしたちと同じパーティなんだから、気にしなくていいんだからね」
「そうか……みんな、ありがとうな」
元パーティメンバーである俺が謝る事にしたが、みんなは本当に気にしていないようだった。
特にラプスウェルの言葉は、不覚にも少し感動してしまった。
サピエルに邪魔をされていたせいでクエストのクリア報告が出来ていなかった俺たちは、改めて報告をする事にした。
「さっきはサピエルがすまなかったな」
「いいえ、助けていただいてありがとうございました」
「じゃあ今度こそ、これの受領を頼む」
「はい、クエストお疲れ様でした。こちらが報酬になります」
俺は受付嬢からクリア報酬を受け取って、みんなの方へ向き直る。
「待たせたな。じゃあ、帰ろうか」
「はいっ!」