表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

46/61

四十六話 『差』

「あたしたちが、みんなでデザート・ワームを倒したのよ」

「つまりシン、お前は見ていただけという事だな」

「そんなわけないじゃないですか!」

「そう、シンは、すごい」


 サピエルが俺を責めてきたと思ったら、すぐにリリアとルクシアが否定してくれた。

 なんだか庇われているみたいで、くすぐったいやら悔しいやら。

 だから俺は、サピエルに対して少しやり返してやろうと思った。


「そういうそっちはどうなんだ? あれだけ騒いでたって事は、なにかイレギュラーでも起きたんだろう」

「くっ!」

「図星みたいだな。それにいつも一緒にくっついていたグングとクルトはどうしたんだ?」


 俺がサピエルを軽く挑発すると、先程サピエルに絡まれていた受付嬢が喋り出した。


「サピエルさんたちが、Sランクのデザート・ワームの討伐クエストを失敗されたようでして……」

「黙れっ!」

「なんだって……? だからか、さっき俺たちのクエストに反応していたのは」


 ギルドの受付システム的にブッキングする事はないが、デザート・ワームのクエストというだけで気になったのだろう。

 同じSランクだった場合、一体どうなっていたのか……。


「とはいえデザート・ワームだったら、そんなに苦戦する相手じゃないだろう。Sランクでも五匹いるかどうかなんじゃないのか?」

「ハッ! そんな数なら、この腕はなくなったりしていなかっただろうな」


 そう言ったサピエルは、見せ付けるように装備していた砂漠用のマントを外す。

 ――――俺は頭が吹き飛ばれたかのような衝撃を受けて、なにも言えなくなってしまった。


 俺の目に映ったのはなんと、彼の片腕が消えて人としてアンバランスな見た目になっていたからだ。

 あのサピエルが?という事はグングたちはまさか?そんなに難しいクエストだったのか?

 一瞬で色んな事が浮かんできた。


 だが俺の思考を中断するように、後ろから「きゃあっ!」と悲鳴のような声が聞こえた。

 おそらくリリアだと思うが、彼女からしたら目を逸らしたくなるくらいの事だろう。

 俺はなんとか声を出して、サピエルに質問をした。


「そんなに数が多かったのか? それともデザート・ワームの特別強い個体でもいたのか?」

「両方だ! 数も十は確実に越えて、二十……いや三十匹近くいたかもしれない」

「ですから、調査隊からそんな報告は……」

「それだけじゃない! 俺たちがいくら攻撃しても全然効いている様子がなかったんだ! 俺のウルトも全く効いていなかったんだぞ!?」

「ウルトが? もしイレギュラーが発生したにしても、それは流石に強すぎるな」


 サピエルがそこまで言うのなら、おそらく本当……だと思う。

 だがデザート・ワームを倒してきた俺たちの攻撃は、大小はあれどダメージは入っていた。


「ランク差はあるが、果たして同じデザート・ワームでそんなに個体差が出るのか……?」

「だから難易度の見誤りだと言っている!」


 確かにランク帯の違い、と言ってしまえば簡単だが、俺にはなにかが引っかかっていた。

 俺たちの時はラプスウェルのスキルや、リリアのウルトはかなり効いていたように見えた。

 ――――ラプスウェルとリリアの攻撃は効いて……サピエルの、攻撃は……。

 そう考えた瞬間、俺の中にある仮説が沸いてきた。


「いや、まさか……」

「シンさん? なにか気付いたんですか?」

「あぁ……その、まさかとは思うが……」

「どうしたのよ、早く言いなさいよ」




「サピエル、お前のステータスが低いんじゃないか?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ