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四十四話 役立たず

 倒れたルクシアに水を飲ませ、岩場の陰で少し休んでから帰る事にした俺たち。

 デザート・ワームは倒したので、もうこの辺りに危険はないと思ったからだ。


 俺たちが十分ほど休んでいると、ルクシアが目を覚ました。


「う、ん……」

「あら、ルクシアちゃん。まだ少し寝ていたら?」

「だいじょうぶ」


 イリスは念のためルクシアをまだ少し寝かせたままにしようとした。

 だがそれを断ってルクシアは起き上がる。


「シン、ごめんなさい」

「ルクシア?」

「戦えなかった、から。みんなも、ごめんなさい」


 そう言って頭を下げるルクシア。

 俺は戦闘に関して気にしてはいないが……確かに複数の相手だったら、ルクシアが危険だった。


「そんな! 私もなにもしてないですからっ」

「そうねぇ。それなら私も最初にスキル使っただけで、後は二人が全部やってくれたわ」

「そうだな、確かにその通りだ」

「うん……だから、ごめんなさい」

「でもな、それだったら俺もアイテムを使っただけだ。イリスがバインドをした。ラプスが攻撃をした。そしてリリアが最後にウルトで倒したようなもんだ」


 落ち込むルクシアに対して、俺は励ますようにみんなが頑張った事を喋る。

 そこに今回のMVPであるラプスウェルが声を挟む。


「別にいいんじゃない? 実際あたしが一番頑張ったと思うわ。でもイリスが抑えてくれて、あたしが攻撃して、危なかったところをリリアが助けてくれて、最後にシンが倒した。つまりそういう事なんじゃない?」


 どうやらラプスウェルも、彼女なりにルクシアの事を励まそうとしているらしい。

 俺は大人しく聞いている事にした。

 だがルクシアは、その説明だけでは分からなかったみたいだ。


「……? わたし、なにもしてない」

「そういう事じゃないわ。じゃあ夜狼の時は?」

「わたしと、ラプス、たたかった」

「そうね。でもリリアが援護してくれたわ」

「リリアと、イリスのこと、まもった」

「そうね。でもイリスも回復してくれていたわ」


 どうやらルクシアの言葉に、一つ一つ否定していくつもりのようだ。

 ルクシアはそれでも曲げないつもりらしい。


「わたし、きょう、なにもしてない」

「そんな事ないわよ。だって一番最初に見付けたでしょ、デザート・ワームの場所」

「……っ!」


 そう、この広い砂漠フィールドの中から見つけ出したのはルクシアだった。

 彼女は何故だか過剰だと思うくらい、戦闘に参加出来なかった事を責め続けている。

 だから俺はここでラプスウェルに加勢する。


「そうだな。俺たちだけじゃ見逃していたかもしれない」

「そうですね!」

「うふふ、だったらみんなで倒してるわね」

「うん……わかった」


 どうやらルクシアを元気づけられたようだ。

 俺たちは身体も少し休めたので、これで本当に帰路に就く事にした。

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