四十三話 最後まで
ラプスウェルが大剣を正面に構えると、目を瞑って大きく深呼吸を始める。
二、三回ほど呼吸をしたら、目を開くと同時にスキルを発動した。
「アクティブスキル＜断魔剣＞……叩っ切るわよ！！」
彼女の大剣が、デザート・ワームに向かって振り下ろされる。
その刃はデザート・ワームの体皮を破り、胴体へ深々と刺さった。
デザート・ワームは歯牙が生えている頭部から、鳴き声のようにギチギチッ！といった音を立てる。
イリスの＜フラッシュバインド＞で固定されている身体を、必死に動かしている。
おそらく命の危険を感じて、逃げようとしているのだろうか。
「これは流石に効いてそうだ！」
「もう一発いくわ！」
ラプスウェルが先程と同じダメージスキルを発動する。
その事に気付いたのか、デザート・ワームは更に激しく暴れだす。
だがそれに意味はなく、彼女の大剣はまたも同じ個所へと触れた。
そしてついにデザート・ワームの胴体を分断する事に成功した。
別れたデザート・ワームの下半分が消滅していく。
だがその衝撃で＜フラッシュバインド＞が解けてしまった。
しかもラプスウェルは攻撃の直後で動く事が出来ない。
その一瞬で頭部だけになったデザート・ワームがラプスウェルに襲い掛かる。
「きゃあっ！」
「任せてください！ ＜エアリアルアロー＞！」
少し離れた場所に待機してもらっていたリリアのウルトが、デザート・ワームの頭部を射抜く。
ラプスウェルの目の前まで来ていたデザート・ワームは、その威力で地面を転がっていった。
矢が直撃したデザート・ワームは既に瀕死といった状態で、俺たちから逃げようとしていたが動きはかなり遅い。
俺はとどめを刺すために、逃げるデザート・ワームに向かって走りだす。
速度は断然こちらが速いので、一瞬で追いついた。
そして矢が刺さっている場所に向かって、思いっきり殴りつけた。
「終わりだ！」
俺が攻撃すると、デザート・ワームは大きく痙攣する。
これがラストアタックになったようで、デザート・ワームの消滅が始まった。
すぐにインベントリを開いて確認してみると、しっかりと素材が入っていたのでこれでクエスト完了だ。
俺は頑張ってくれたラプスウェルのところまで戻る。
するとリリアとイリスを含めて、三人で話しをしていた。
「怪我とかは大丈夫ですか？」
「なんともないわ。ありがと」
「ラプスちゃん、お疲れさま」
「イリスもね。あのバインドとかって結構強かったわね」
「そうね。神様に教えてもらって本当に良かったわ」
どうやら早速、今回の戦闘の所感を言い合ってるみたいだ。
前回もそうだったが、こういうところが本当にいいパーティだと思う。
まぁこんな砂漠の真ん中で、やる事ではないと思うけどな。
「みんなお疲れ。ほら、話すのはホームに帰ってからでいいだろう」
「そうね……。結構MP使ったから疲れたわ……」
「相変わらず暑いですもんね」
「あらあら、ちゃんと水分補給しないとね」
今回は特にイレギュラーは発生しなかったので、レオニスに報告出来る事はなさそうだ。
クエストの受注書に『マーク』が付いたので、俺たちは帰り支度を始めた。
「み……、みず……。ほし……い」
「きゃっ！ ルクシアちゃん！？」
「あらあら」
「そういえば忘れてたわね……」
「あぁ……」
