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三話 現状への理解

 俺は飯が来るまでの間に話を聞こうと、椅子に深く座り直してリリアへと向き直る。


「それで。早速本題なんだが、いいか?」

「はい。先程もお聞きした通りなのですが、シンさん。私たちのパーティにどうか入って頂けないでしょうか」


 そう言ったリリアは最初に声を掛けてきた時と同様に、深々と頭を下げてきた。

 サピエルが冒険者ギルドで、わざと周囲の人へと見せ付けるように俺をパーティから追い出した。

 その瞬間を見ていたと言ったリリアだったが、俺にそこまで執着する理由が分からない。


「すまないが俺もすぐに分かったとは言えない。だが何か事情があるなら聞くし、そうじゃなくてもアドバイスくらいは出来るかもしれない。だからどうして俺を誘おうと思ったのか、それを聞かせてくれないか?」

「そうですね……えっと、まず私たちの現状から聞いて貰ってもいいですか?」


 俺は「あぁ」と相槌だけ打って、リリアの話を聞く事にした。

 リリアは重苦しいような口調で喋りだした。


「……まず最初に、私たちのパーティにはヒト族がいないんです」


 それくらいはどこにでもある、本当によくある話だ。

 多種多様な複数の種族が存在する亜人種あじんしゅとは違い『ヒト族』にはヒトしかいない。

 ヒトの繁殖数や生息域の限界など、理由は多数あるがヒト族というのは絶対数が少ないのだ。

 だからヒト族が一人もいないパーティというのは、この世界では当たり前に存在している。


 そして亜人種たちはその種族ごとに固有のスキルを持っているが、その種族だったら誰もが共通の能力で全く同じスキルを持っているという事にもなる。

 だがヒト族はその固有のスキルを持たない。

 その代わりなのか分からないが、ヒト族は亜人種とは違う特別で強力なスキルを、個人個人で持っている場合が多い。

 俺が数時間前まで所属していた『元パーティ』は、そうした理由でヒト族しかメンバーに加えないという決まりを設けてあったくらいだ。


「私は冒険者になる為に強い仲間を探していまして、既にいくつかの方に声を掛けました。ありがたい事に皆さん協力的で、右も左も分からない私とパーティを組んでくれる事になりました」


 そう、リリアは一国の王女である筈なのに護衛や付き人のような者を連れていないのだ。

 甘いとか舐めてるとか、そんな事を言われると思ったのだろうか。リリアは下を向いたまま話が止まっていた。


「どうして冒険者を目指したのかは特に聞かないが、まぁ……王女が護衛の一人も連れずにやっていくには流石に無謀にもほどがあるだろうな。それで?」


 俺が先を促したからかリリアは水を一口飲むと、また話を続ける。


「そして実際にステータスもスキルも、かなり強力なパーティとして集まる事が出来た……と思っていました」

「いました、という事は」

「はい……。皆さん全員が、それぞれ欠点を抱えていました」


 欠点、というと種族固有のデメリットという感じでは無さそうか。

 獣人族なら発情期と呼ぶ繁殖期があったり、淫魔族は性質的に異性とパーティが組みにくいなどが分かりやすくデメリットと言えるだろう。

 だがこれだけじゃ何も分からないので、とりあえずその欠点なり他にも問題があるのかどうかを聞くしかない。

 そう思った俺は素直にそのまま聞いてみた。


「それだけ聞いても分からないな。一応聞くが、その欠点以外にも何か問題はあったりするのか?」


 俺の言葉に反応したリリアは、俯いていた顔を急に上げると、口どころか目も声も大きく開いた。


「それはもう!! 私たち、致命的にチームワークが悪かったんです!!」

「…………なるほどなぁ」


 そう叫んだリリアはもう半泣き……いや、ギャン泣きといった感じで、俺を勧誘した理由がその『チームワークの悪さ』を改善したいから、との事だった。

 呆れ半分、やるせなさ半分を感じた俺は、つい現実逃避したくなって窓の方へと目を向けた。

 するとそこには夜を待てない星がたった一つ、力強くキラリと輝いてるのが見えていた。

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