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二十四話 群れるという事

 森の奥の方から『なにか』が動くような音が聞こえてくる。

 俺たちは音の聞こえる方へと意識を向けた。


「おおきい」

「そうだな、そしてかなり速そうだ」


 草木を掻き分ける音は、話しをしている間にもどんどんと近付いてくる。

 先程倒したウルフが呼んだ、という事なのだろうが素直にウルフが来るのかどうか……。


「見えてきたわよ!」

「みんな下がっていてくれ」

「はい!」

「わかった」

「よろしくお願いね」

「あたしは別に大丈夫だけど」


 俺はみんなが後ろに下がったのを確認したので、前を向いて腰のナイフを手に取る。


「果たして鬼が出るか蛇が出るか」


 『それ』が見える前に、暗い森の奥から一瞬だけ金色がギラリと光ったのが見えた。

 俺は直感で危険を感じ取って後ろへ飛んだ。

 次の瞬間、俺が居た場所には……金色の眼、漆黒の毛、そしてウルフの二回ふたまわりほど大きい狼型のモンスターが立っていた。


「な、なんですかこのモンスターは!?」

「つよそう」

「あらあら……」

「ウルフの親玉って事かしら」

「こいつは……夜狼ナイト・ウルフか!」


 ウルフの上位種であるシャープ・ウルフ。

 そこから更に派生したモンスター、それがこの夜狼ナイト・ウルフだ。

 俺の記憶が間違っていなければ、BかAかどちらかのランクで討伐対象になっていたはずだ。


 何故こんなランクで……群れを率いていたのだろうか?

 いや、この際なんでもいい。

 みんなには荷が重い敵だ。

 サポート専門だった俺一人で、この夜狼を倒さなければならない。

 これまで戦ってきたモンスターたちとの経験と、俺のユニークスキル<支援職人グランド・サポーター>で上がったステータスなら、きっと倒す事は出来るだろう。

 だが今は後ろのみんなを守りながら戦わなければいけない。

 一人でも欠けたらパーティ内のステータスを参照するという、支援職人の最大の武器であり最大の弱点が現れてしまうからだ。


 そう考えていた俺は、夜狼から意識を外してしまった。

 夜狼は隙を見せた俺の横を一瞬ですり抜けて、後ろにいたイリスへと接近していた。


「イリス!」

「やらせないわっ」

「まかせて」


 夜狼の牙がイリスへと届く前に、ラプスウェルとルクシアの二人がフォローに入ってくれた。

 攻撃を防がれた夜狼は一旦下がると、すぐに俺たちの周りをぐるぐると走りだした。


「みんなすまない、イリスも大丈夫か」

「ええ、私は大丈夫よ」

「こっちは任せなさい!」

「しんぱい、いらない」

「私たちも戦います!」


 後ろに集まっていたみんなはそれぞれの武器を構えた。

 そうだ、俺は当たり前の事を失念していた。

 俺のステータスはみんなのステータス、だったら任せても大丈夫なはずだ。

 そう信じて夜狼の隙を探す事にした。


 高速で動いて攻撃する機会を探っていそうな夜狼。

 俺たちもそれに対応する為に、動きをしっかりと注視している。

 その内、夜狼のスピードに目が徐々に慣れてきた。

 だが夜狼もそれを理解しているのか、完全に慣れ切る前に爪に牙にと攻撃を仕掛けてきた。

 俺に向かってきた時は防ぎながらも反撃をしていく、掠る程度にしか当たっていないが。

 みんなへの攻撃は前衛の二人がしっかりと受けてくれている。

 四人は最初の作戦通り、イリスが回復、リリアはスキルまで使って夜狼の動きを止めようとしている。


 だがウルフたちを相手にした時とは違い、そう上手くはいかなかった。

 夜狼は高ランク帯のモンスターなだけあって、致命的な隙も作れずスピードも落ちてこない。 

 そうして戦闘が長引くうちにリリアはMPが切れ、イリスの回復も段々と間に合わなくなってきた。


 このままでは埒が明かない。

 そう思った俺は、ラプスウェルに攻撃を防がれて後ろに下がった夜狼に対して突っ込む事にした。

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