十六話 最初のつまづき
俺たちヒト族のステータスは基本的に、どれだけ伸ばそうとしても1000を越えてほぼ頭打ち。
スキルの力で稀にだが、それを越えたステータスになる場合もある。
サピエルの場合が正にそうだった。
アクティブタイプのスキルを使って一定時間の間、全ステータスを上昇させるタイプだ。
それでも一番高いステータスで1200……だったか。
更に俺の<支援職人>を含めても3600が限界だ。
それが今の俺のステータスは全て10000を越えている。
種族が違うだけでここまで伸びるのか。
一つのパーティに所属していると見識が狭まる、なんて言うやつがいた。
その時の俺は否定した覚えがあるが……今のステータスを見てしまうと、そう言ってしまうのも納得出来る。
「これは本当に凄いな。支援職人の効果で俺のステータスは、パーティ内の一番高い数値と同じになるんだが……特に魔法力が飛びぬけているな。これはイリスか?」
俺が聞くとイリスは自分のステータスを確認して同意した。
「魔法力ならそうみたい、私でも見た事がない数値になっているわ」
「あたしも。魔族は攻撃力や防御力が伸びやすいんだけど、それでもこんなに高いのはあたしの知ってる限り見た事がないわよ」
神族と魔族の二人がそう言うという事は、俺の感覚が間違っているという訳ではなさそうだ。
とはいえ、いつまでもステータスに驚いている場合じゃない。
本当にそろそろ支度を済ませてから、クエストを受ける為にギルドに行かないと。
「みんなの元々のステータスが高いのもあるんだろうが、ここまでステータスが上がった事はさっきも説明した通り、俺のユニークスキルの効果だ。それより今は、個人の力量とリリアから聞いていたチームワークを確認したい」
「ギルド、いく」
「そうですね!」
ルクシアもリリアもやる気いっぱいのようだ。
こんな生徒ならこちらも教え甲斐がある。
「それじゃあみんなにはこれから、五分で準備を済ませてもらう」
「五分ですか!?」
「なんでそんなに短いのよ、急ぐ必要なんてないじゃない」
これはチームワークとかより以前の、冒険者としての心構えとも言える条件なのだ。
街の外に出たら、いつモンスターに襲われるか分からない。
だからのんびりと準備している時間はない……かもしれない。
目の前に急にモンスターが現れた場合、こちらの支度を待ってくれる保障なんてないからだ。
俺がそれを伝えると、それぞれ真剣な顔や、反省といった顔を面々に浮かべた。
「まずはそういう心構えから大事という事だ」
「そうだったんですね……。すみませんでした」
「そうね、あたしも緩んでたかもしれないわ。ごめんなさい」
「構わないさ、みんなもそう落ち込まなくていい。こんな最初から怒るつもりはないから安心してくれ」
文句を言っていたリリアやラプスウェルが謝ってきた。
他の二人も目線を下げていたので、同じ事を思っていたのだろう。
だがまだ初日、まずは心構えからと思っていたので丁度いいくらいだった。
そして俺の言葉に、みんなが返事を返してきたので、早速準備の開始を伝える。
「そういう訳で、今から五分だ。終わったらまたここに集合だ、始めてくれ」