第6話 お話の時間
すみません、遅れましたm(_ _)m
「じゃ、また、レストルームで!」
「うん!」
大広間に戻ってきた2人、ルーチェとウィンディは二手に分かれることになった。
「レイラ。いや、アレク、行こう。」
微笑むウィンディの傍には男装した彼女の使い魔、レイラがいる。いつもならウィンディより低い身長だが、男装をすると見上げる程になる。レイラの腕にウィンディは手を添え、エスコートされてそのままある方向へと向かった。
「ごきげんよう。楽しまれてますか?…随分悩まれるんですね。」
ファルルの為にデザートを選んでいた騎士エイスは、はっと顔を上げる。そこには男性を連れ、仮面を外したウィンディがいた。
「え、あぁ、ごきげんよう。…そうですね。」
彼は苦笑しながら会釈をした。ウィンディはにっこりと笑いながらこう言う。
「あの、少し話したいことがあるのですが…」
すると、その言葉を遮って声が響いた。
「おいエイス!!探したぞ?」
疲れた様子でエイスの主、アスルが駆けてくる。そしてすぐにウィンディに気がついた。
「あぁウィンディ公女じゃないですか。」
「ごきげんよう、アスル様。」
ドレスを摘んでお辞儀をする。
「エイスに何か用でも?」
アスルは少し訝しげな表情をするが、レイラを見て変な用事ではないと判断したようだった。
「ええ、ちょっとした頼み事がありまして。」
「そうですか。…エイス、聞いて差しあげろよ?…俺は食事を取ってきますので。失礼。」
途中騎士に圧をかけるように睨んだ後、軽く頭を下げてどこかへ行った。ウィンディは向き直り、再び口を開く。
「頼みという程でもないのですが……あ、ここで話すのもあまり良くないのでこちらへ来ていただけますか?」
仮面をつけ、エイスに着いてくるよう促す。彼は戸惑いつつも、アスルの言葉を思い出し着いて行くことにした。
○
ルーチェは騎士と接触したウィンディを確認すると、人間姿ーー銀髪の幼い女の子であるーーのライアを影に控えさせながらブティリータの方へと歩き出した。
「やぁハル。」
ファルルの姿をしたままの彼女は、声をかけられると肩を跳ねさせた。
「な、なに…?」
もじもじと髪を触りながら上目遣いでルーチェを見る。
「さっきはどしたん?」
「…。やだ〜!」
一瞬固まった後そう言いながら先程とは別人のようにルーチェの腕をぱしぱし叩いた。そして抱きつく。
「なんか…ごめんね?私の親友ちゃん?♡」
男爵令嬢になんやかんやとされて、呆れ返った王女はライアに合図を送った。ブティリータサイドの作戦実行の合図だ。途端、幼い女の子が2人の前に現れた。ライアはブティリータの手を引っ張り、ルーチェから引き離す。
「えっなになに?」
そしてそのまま走って2階へと引っ張っていく。本来の姿がドラゴンだからなのか、その見た目からは想像出来ないくらい強いようだ。ルーチェも2人の後を追った。
○
「実は、ご紹介したい人がいるんです。」
ウィンディの言葉にエイスははて、という顔をした。彼女が騎士を連れたのは貴族のレストルーム。また使い魔に手伝って貰い、誰も入れないようにしていた。ふと彼女は懐中時計を取り出し、中を見る。
ーーコンコンコン。
「あ、丁度来ましたね。」
ウィンディは振り返り、ノックされた扉が開く。そこにはファルルとルーチェがいた。
「あっ。…そして貴女は…」
ファルルを見たエイスは驚くが、安堵している様子だった。だが、そばに居たルーチェに気づけば嫌悪感を示す。
「あら、もうお知り合いだったんですね。」
ウィンディは驚いたようにそう言い、ファルルの方を向く。
「ハル、仮面取ったら?」
しかし、彼女は仮面を取ろうとしない。ブティリータが変えたのは髪色と瞳の色だけ。仮面を外すと、騎士はともかく友人でありそうなルーチェとウィンディには偽物であることがバレてしまうのだ。
「や、ちょっと…恥ずかしい、かなぁ。」
ブティリータは顔を手で覆う。
「大丈夫ですよ。」
そうエイスは緩く微笑む。それを見たブティリータは頬を染めながら仮面を外した。黙っておけば可愛らしいと言える顔を騎士はただ見つめていた。そして彼も同じように仮面を外す。あまりにも整った顔がそこに現れた。
(あの2人も、さっきみたいに丸め込めば大丈夫だよね。)
エイスに見惚れながらも、ちらりと2人の方を見る。予想外にも、2人は彼女の素顔を見ても何も言わなかった。それどころか、
「可愛らしい方でしょう?」
と騎士へ言い出す始末だった。ルーチェがブティリータの髪を掬う。
「綺麗でいい色の金髪ーー」
ブティリータはファルルとして認められているこの状況に酔い、騎士エイスは盲目的な恋に酔っていた。ルーチェが髪を掬い、ウィンディの懐中時計がかち、と止まったとき、それは覚めた。
次回は2/13 7:00頃予定