引落
一度に下ろせるかわかりませんが、そこは目を瞑ってください。
(土下座)
阿部野橋、JR、近鉄、地下鉄、路面電車にアクセス出来る立地から銀行、コンビニの数が多い。
銀行からは30万円、コンビニは10万円をそれぞれ下ろしては封筒に小分けすると終わったのは午後3時を回っていた。
西成に戻ってドヤ街を歩くとホルモンの焼ける匂いに誘われる。
道に鉄板をせり出してホルモン焼きの店が営業していた、鉄板の角に着くと缶ビールを注文する。
「キリン」
それだけで通じる、350ミリの麒麟一番搾りが300円、店の親父が無言で出す。
「串5本とレバー」
それだけで言うと店の親父が焼き始めた、タレの焼ける匂いを嗅ぎながらビールを飲む。
追加でビールを頼んでも会計は二千円行かない、焼きたての肉を頬張るとビールで流し込んだ。
美味い、貪る様に食い終わると店を出て今夜のドヤを探す。
西成のドヤはピンキリだ、500円から千円以上まで、ただ寝るだけの部屋から家電付きで値段が別れる。
500円のドヤに入る、西成のドヤは基本一泊は無い、二日分千円を払うと部屋に案内された。
免許証などの本人確認も無い、名前も苗字だけ、それだけで泊まれる。
男は過去を捨てた、おそらくは死んだ事になっている筈だ、だからこそ西成から動けない。
運転免許証も住民票も無くても暮らせる街、だからこそ自分はここに居る。
部屋は内鍵だけの3畳間でトイレも風呂も無い、勿論テレビも冷蔵庫も無しで扇風機だけは金を払えば借りれる。
部屋にあるのは布団一組、ただそれだけだ、シーツだけは変えてるがいつ干したのかわからない布団に横になると、金の入ったバックを枕にトカレフを抱えながら眠りについた。
その頃、西成警察署では路上で殺された男の捜査本部が立ち上がっていた。
次回は警察の動きを書きたいと思います