襲撃
カイロとワンカップのおかげで身体はポカポカと暖かい。
油断して半分寝掛けていた所をいきなり襲撃された。
ダンボールハウスの入り口を壊しながら、男が入って来ると無理矢理外に連れ出された。
「てめえ、何者だ!」
ゴリがそう言った途端に男が右手に持っていた凶器を振りかぶった。
リトルジュニア用の木のバット、小学生の野球用のバットは小さくて軽い。
ゴリの頭目掛けて凶器が襲いかかる。
ゴリは左手を頭の上に被せるとバットから頭を守った。
メシリッっと鈍い音がゴリの腕の中から聞こえる。
「ぐっ!」
思わずゴリの口から息が漏れる。
(骨までいったか…)
そう思った途端に腕が痺れて力が出なくなった。
思わず右手で左腕を触ると、今度は足の膝を狙って来た。
このままだと膝の皿を割られる!
そう思った瞬間、身体が動いた。
左手を庇いながらダッシュで前に出る。
バットが身体に当たるが、構わずタックルして相手をよろけさせる。
その時もう1人居た方から、ジャコッっと聴き慣れた音がする。
(拳銃のスライド音!)
音の方を見ると、スライドを引いた拳銃の銃口が見えた。
(マズイ!)
そう思った時にパトカーのサイレンが辺りに響く。
屋上から連絡を受けたパトカーが、ライトをハイビームにすると銃を持った男に向ける。
急ブレーキを踏んでゴムの臭いを辺りに撒き散らしながら、急停車するとドアから警官が飛び出して来た。
「銃を捨てろ!」
そう言うと警官はM60を空に向けて発砲した。
パンッっと音がして空砲の音が響く。
日本の警官の銃は最初の1発は空砲が入っている。
それで威嚇して投降を促す、マニュアル通りに手順を踏んだのだが相手はそんな事は知らない。
ゴリに向けていた銃口をパトカーに向けると拳銃を発砲した。
パンパンパンっと連続で音がすると、パトカーのウインドウガラスが粉々に砕け散った。
そのうち1発は警官の防弾チョッキに当たると、貫通して体内に弾が残る!
着弾した警官が後ろにのけぞった、その後に他の警官がM60を向けると一斉に発砲した。
パンパンッっと渇いた音がビルの谷間にこだまする。
音が止んだ後に拳銃を持った男が地面に倒れているのが見える。
「確保おおおお!」
その声を皮切りにバットを持った男に警官達が群がる。
数人の警官に羽交い締めにされ地面に引き倒された男が手錠を掛けられた。
「大丈夫ですか?ゴリさん!」
見れば若い警官がゴリの顔を覗き込んでいた。
「救急車!早く!」
その声を最後にゴリは意識を手放した。