待機
「コイツもハズレかよ!」
冷凍倉庫の中で金髪の怒号が響いていた。
もう何人目になるのか、ホームレスを攫っては口を割らせる為に拷問する。
もともと関係の無い人達だけに、喋る事もなく責め殺されていた。
その時、一緒に山を踏んでいた1人が。
「ひょっとして…金を手に入れてるんじゃ?」
そう言うと、金があるなら簡易宿泊所に泊まってるんじゃ無いですかね?。
それを聞いて金髪が喚き出した。
「俺らの上納金で贅沢三昧かよ!」
そして死んだホームレスに蹴りを入れると、椅子に座って考え出した。
「よし!半分はドヤを当たれ、残りはあいりんセンターの周りで見張ってろ」
ひょっとして戻る可能性もある事から半々に分かれた、これがその後の出来事に影響を与える事になる。
西成警察署では、ホームレスの失踪事件を誘拐事件と見て捜査する事になった。
あいりんセンターの前にホームレスに偽装した警察官を派遣する事になり、地元の警察署員だと身バレする可能性があるとして。
殺人事件の捜査に応援として来ていた、南河内署の捜査員が抜擢された。
「何で俺がこんな格好で…」
南河内署から応援として駆り出された、通称ゴリこと山田警部補だ。
「似合ってますよ…」
最近コンビを組んでる西成署の捜査員に身体中に、貼るカイロを貼って貰うと最後にドカジャンを羽織る。
何処から見てもホームレスそのものだ。
「偽装のワゴン車も用意してます」
そう促されて西成署の裏にある駐車場からハイエースに乗り込むとあいりんセンターを目指した。
あいりんセンターの近くに着くと、車内でワンカップの日本酒を渡されて。
「服に掛けて匂いを撒き散らしてください」
酩酊したホームレスを装う作戦のようだ、ゴリはハイエースから降りるとゆっくりとした足取りであいりんセンターに向かう。
時刻は夕方から夜に変わる時間帯で、周りも薄暗くなって来た。
ダンボールハウスの入り口に赤いテープが貼ってあるのを探す。
西成署で捜索した際に無人になっているのを確認した物だ、近くのビルの屋上から西成署の捜査員が監視する手筈になっている。
探していた赤いテープが見つかった、中に入るとワンカップの蓋を開けて半分だけ服に振りまいた。
「息も酒臭く無いとリアリティが無いよな」
そう言うとチビチビと日本酒を飲み出した。