祖母
祖母が危篤になったとの知らせを受けて本家を訪ねたところ、
祖母は危篤から脱し、会話ができる状態でした。
当時82歳だった祖母は10年前に連れ添った祖父を亡くしていました。
その時の祖母の話によると
「おじいちゃんが坂の上で呼んでるんだけど、坂だから疲れちゃってね」
ーだから戻ってきちゃったー
というものでした。
「おじいちゃん〜〜」と苦笑する私。
「今度は坂の下で待っててねって言わないとね」と母。
危篤を脱したとはいえ何とも失礼な会話です。
母よ、いいのか?実の母に向かって。
後日、再び危篤の知らせが入りました。
その時も危機を脱し、駆けつけた母との会話では
「今度は桜の花が咲いていて、近くで子供達の遊んでいる声がしていた。
ただ、子供を背負っていたから、一緒に連れていくわけにはいかなかった」
ーだから戻ってきちゃったー
と言っていたと言うのです。
祖母に死んでほしくないと思っていた私が
無意識に小さい子供に戻って、祖母に甘えてしまったのではないか、
祖母の黄泉路を邪魔してしまったのではないかと思いました。
結局のところ、三度目の奇跡はおきませんでした。
きっとおじいちゃんは今度は坂の下で祖母を待っていたのだと思います。
後日談
祖母の初七日の法要の後、叔母と母の口喧嘩が始まってしまいました。
ヘタに口出しすると厄介だと思ったのか、誰も止める気配がありません。
と、突然祖母の遺影がパタンと倒れました。
まぁ、それだけのことなのですが。
気まずくなったのか、口喧嘩はうやむやのうちに終了しました。