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高田つぐみのひみつ  作者: 車男
4/7

つぐみと部活動

 「続きまして、水泳部の紹介です!」

「こんにちは!私たち水泳部は・・・」

ミーティングの翌日、3,4時間目を使っての部活動紹介が始まった。話し合った結果、私たちはトレーニングウェアに身を包み、2,3年生の10人で並んで前に立って、説明することになった。水着を着て紹介する案も出たが、それはさすがに恥ずかしいということで、プールでの練習以外の、走り込みやトレーニングで着る、練習着に着替えて紹介することになった。もっとも、足元はみんな、上履きにスニーカーソックス着用で、裸足なのは私だけだけれど・・・。

「以上で、水泳部の紹介を終わります!今日の放課後も、部室にて待っているので、ぜひ来てください!」

「水泳部のみなさん、ありがとうございました!つづきまして・・・」

ステージ裏にはけると、部長が緊張していたのか、副部長の私に抱き付いてきた。ちなみに、私が副部長になったのはつい昨日から。早急に決めて書類を出さなければならなかったらしく、2年生の中から指名制で私になった。理由は、水泳のうまさや、社交性など。私が副部長なんて、まったく考えもしていなかったけれど、選ばれたのはとてもうれしかった。

「うわーん、緊張したよー」

「頑張りましたね、部長!」

普段から靴下を履かずに過ごしている私だけれど、さすがにあの大勢の前に一人だけ裸足で立つのは、かなりかなーり恥ずかしかった。制服じゃなくて、トレーニングウェアで出たことで、幾分かイレギュラーっぽさはなくなったかな。

「それじゃ、放課後また部室に集合ね!いったん各自着替えて、自分のクラスの列に戻ろう!」

「はーい!」


 「あ、つぐー、おつかれー」

「おつかれー。あー、緊張した!」

体育館からいったん水泳部更衣室で制服に着替え(もちろん、半そでのセーラー服に裸足だ)、再び体育館に戻る。部活動紹介はまだ続いており、運動部から文化部の紹介に移ったころだった。

「つばめちゃんは、前に出たりしないの?」

「うん、先輩たちがやってくれるみたいで、2年は今回は見学なんだってー」

ちなみに、つばめちゃんは吹奏楽部。40人ほどの部員を擁する、人気の部活だ。そんななかで、人気のトランペットを担当している。

 吹奏楽部の紹介になると、ステージの上には各々楽器を持った部員が並び、ジブリの名曲メドレーを披露した。昨年度のコンクールで地区大会金賞を受賞した曲の一つだ。人数は少ないけれど、感動する演奏だった。私はスカートを押さえた体操座りをして、その演奏を聞いていた。音楽に合わせて、素足でぱたぱたとリズムをとる。


 部活動紹介が終わり、教室に戻ると昼休みだ。昨日と同じメンバーで、机をくっつけて昼食をとる。

「そういえば、小鳩ちゃんは何部なの?」

私のお弁当の半分サイズくらいのかわいい弁当からちょこちょことご飯を食べる小鳩ちゃん。家庭科部とかお似合いだけどな。

「私、じつは書道部なんだ。さっきのパフォーマンスは先輩たちがやってたんだけど・・・」

「書道部なんだ!意外!」

「確かに、字がすごく整ってるよね。ノートとかすごく読みやすいもの」

先程の紹介では、書道部は大きな紙に”歓迎”という文字と、墨で桜を描いた大作を書いていた。書道部だったんだ!

「賞はまだあんまり取れてないんだけどね。とれるように今年は頑張りたいな」

その後、ポカポカ陽気に眠くなりながらも、裸足のまま授業を受け、放課後。同じ2年の水泳部員と一緒に、ペタペタと裸足のまま部室を目指す。

「それにしても、つぐってすごいよねー。足の裏、真っ黒じゃん」

階段を上る際、下から足の裏をのぞき込まれて、突っ込まれてしまう。

「仕方ないよー。ってか、あんまり見ないでよ、恥ずかしいなあ」

実際裸足で過ごすのはそんなに恥ずかしくはないのだが、私も女の子なので、足の裏を、それも真っ黒なのをじっくり見られるのは恥ずかしい。特に男子に見られると・・・!

「おつかれさまでーす!」

「おつかれ!みんな!さっそく来てくれたよ、新入生!」

「わあ、ほんとですか!」

ミーティングルームに入ると、初々しい顔をした女子生徒が二人、ジュースを飲みながら座っていた。机の上には、活動内容が書かれた自作のパンフレットが広げてある。だんだん人が減っていく水泳部、新入生の勧誘はかなり大事になってくる。

「こんにちは!副部長の、高田つぐみです!よろしくね」

「よ、よろしくお願いします!1年1組の野中小羽こはねです…」

「こはねちゃん…!カワイイ名前だね!」

「あたしは、同じく、1組の西原つばめです!付き添いです!」

小羽ちゃんは、ショートヘアで小柄なカワイイ女の子、付き添いというつばめちゃんは、ロングヘアのすらっとした女の子だった。もちろん、2人とも長袖のセーラー服に、しっかり上履きとソックスを履いていた。二人とも文化系の部活が似合いそうな雰囲気だけれど、水泳の経験とかあるのだろうか?

「小羽ちゃんは、部員希望?それともマネージャー希望?」

「え、マネージャーも募集しているんですか?」

小羽ちゃんの目が、幾分がキラキラしだした気がする。見た目的にも、マネージャーさんがすごく似合いそうな女の子だ。

「そうなんだ!去年まで先輩がやってくれてたんだけど、卒業しちゃってね…」

その後、部員が集まって、説明を聞いてもらったら、小羽ちゃんはマネージャーとして水泳部に加わってくれることになった。

「ありがとう、小羽ちゃん!これから、よろしくね!」

「はい、こちらこそ、よろしくお願いします!」

部員第一号!しかも、必要としてたマネージャー枠!これからが期待できそうだ。


 「それじゃあね、つぐみ、また明日!」

「うん、バイバイ!」

部活のミーティングも終わり、新入部員とも仲良くなることができた。私はみんなを見送ると、ひとり部室に残り、その日話した内容をまとめていた。副部長である私の役割だ。

「ふう、終わった…!」

まとめ終わったころには、窓から入る日がオレンジ色になっていた。日中は暖かかったけれど、コンクリートのむき出しが多い部室内はひんやりとしてきた。汗ばんでいた素足からも今は汗が引いている。

「…ちょっと寒いな」

私は左足をイスにあげると、その足裏をなでてみた。一日中裸足のまま学校内を過ごしたせいで、床についていた部分は見事にホコリや砂で灰色に汚れがついていた。土踏まずの部分はまだ綺麗なままで、学校がどんなに汚れていたのかを身をもって感じていた。

「えへへ、今日もこんなに汚れちゃった…!」

真っ黒になった足の裏を見て、私はドキドキしていた。学校という、普段裸足で歩かないようなところを一日中裸足で歩いて、汚れた足裏。スマホを起動すると、無音カメラを開き、そんな足の裏を撮る。1年の3学期はまだ上履きがあったので、基本的にそれを履いて過ごしていたけれど、上履きもソックスも履かずに生活するのはやっぱりいい。ほかの人たちの目は気になるけれど、上履きがないのは仕方のないことだしね…!

 その後、右足の汚れも確認して、同じように写真に収めると、私は荷物を持って部室を後にした。肌寒くなっていたので、カーディガンを上に着こむ。ソックスはないので、足元は裸足のままだ。何となくアンバランスで、でもお気に入りのファッションである。きちんと鍵をかけて、そのカギは同じ階にある体育教官室へ返すことになっている。

「高田さん、上履きはまだ届かないの?」

「あ、はい、週明けになるらしくて…」

「あらら…。怪我とかには気を付けてね!」

「はい、ありがとうございます!」

顧問の鷹口先生に心配されてしまった。運動部なので、室内用のトレーニングシューズはあるけれど、校則で普段の学校生活では履けないことになっているし、容認されたとしても、私は今の裸足生活が大好きだから、履かずに過ごすことを選ぶだろう。

 靴箱につくと、普段から入れてある足を拭く用の雑巾を取り出し、靴箱に手をついて、片方ずつごしごし。ここ数日は上履きがないから裸足のまま過ごしているけれど、部活終わりなど、ソックスや上履きを履かないまま部室から靴箱まで来ることもあって、足拭きは常備していた。さすがに汚れた足のままスニーカーを履くのは嫌なので、一度ここで汚れをリセットすることにしている。ちょっと惜しい気もするけれど、また明日も裸足で過ごせるし、仕方ない!汚れを両足ともに拭きとると、まだうっすらと

灰色っぽさの残る素足をそのままスニーカーへ突っ込む。考えてみると、靴を履いたのは朝ぶりだ。一日中裸足のまま過ごしていると、はじめのうちは足が痛くなることもあったが、今ではすっかり慣れて、そんなこともなくなった。もはや上履きなんてなくてもいいのではないだろうか、なんて思うけれど、さすがにずーっと裸足だと先生に怒られかねないし。

 朝はたくさんあった自転車も、この時間になると私のしか残っていなかった。

「さ、帰るか!」

自転車にまたがり、素足履きの足をぐいっと踏み込む。明日も、裸足生活。どこを裸足で歩こうかな…!


つづく


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