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主婦。

2人だけのクリスマス。

あの頃と少し違う特別な。

結婚してのクリスマスは

付き合ってる頃とは勿論違って。

12月入るとクリスマスの飾り付けをして

2人で過ごすには少し広いマンションだけど

旦那様はこれから増えるんだからとはにかんでいた。



今日は結婚してから初めてのクリスマス。

何が起こるのかしら。







その日は旦那様もあたしも浮き足立っていて

朝から2人とも顔がにやけていた。

今日はいつもより更に腕によりをかけて

料理の準備をしなきゃ。

数ヶ月前から近くのケーキ屋さんフロマージュで習ってたから

ケーキもきっと大丈夫なはず。

今日の予定は夕飯、ケーキの準備と旦那様へプレゼントの準備。


「何だか顔がにやけちゃう」




旦那様との出会いは大学1年生。

大学が同じでしかも同じ学部、学科。

名前順も近かったから話すようになった。


今でも覚えてるのは大学2年生の頃。

その頃、旦那様、小野塚恵一さんは付き合ってる方がいて

その悩みを話してくれていました。

女の子の友達もいたけど、異性との友達は恵一さんだけ。


夏休み終わりの文化祭の準備をしてる時、

恵一さんの彼女さんに呼び出されました。

恵一さんとの話題には出てきますが

お会いするのは初めてだったりする彼女。

学部が一緒なだけなので、顔を見たことのある程度だったんです。



「あんたさ、恵一とつるむの止めてくんない?」

「え?」

「恵一が迷惑だって言ってんの。直接言えないからあたしが言いに来たんだけど」


その頃、恵一さんとは話してすらいなかった。

連絡もなかったし、大学にもそんなに来ていなくて。


「・・・あ、そうでしたか。わかりました」

「本当やめてよね」


恵一さんから聞く彼女はもう少し優しい感じだった。

何よりも恵一さんのことを考えている、そんな人だと思ってた。



それからあたしは恵一さんと出会う前の生活に戻っていた。

だけど心にぽっかり穴が開いたみたいな、そんな感じで。

心が痛かった。




ある時、恵一さんから電話が来ていた。

あたしは勿論出ることも出来ず、ただ鳴っている携帯を見てるだけ。


「・・・何でこんな気持ちなんだろう」


ただ胸が痛くて、切なくて、

恵一さんと話したいとか、会いたいとか

そんな風に色んなことを思って涙が零れた。


その時期、時間を埋める為に地元の本屋でバイトをしてた。

本は好きだったし、初めてのバイトは本当楽しくて

でも心に開いた穴は埋めることが出来なかった。


「岩崎さん、今日はもうあがっていいよ」

「あ、はい。お疲れ様です」


恵一さんの彼女さんに言われて3ヶ月ほどが経ち

季節は冬間近だった。

大学の関係で一人暮らしをしていたから

帰りに買い物をしていくのがいつものことだった。


「こんばんわ、おじさん。何か安い物ありますか?」

「あぁ、今日は鍋の具材が安いよ」

「ならその一式くださいな」

「あいよ!」


商店街の人たちはみんな良い人たちばかり。

八百屋のおじさんはいつもお世話になってます。



「日向!」

「・・・!」

「お前、何で!」

「おじさん、これお代!」


何故だかわかんないけど

逃げ出したくなった。

おじさんにお金を渡してその場を立ち去る。




「おい、日向!!!」

「・・・何で」


恵一さんに手を掴まれて、狭い通路で足を止める。

涙が止まらない。


「・・・日向」

「・・・」

「聞いた、日向が俺から話聞くのもう嫌だって」

「・・・」


恵一さんが掴んでた所が痛い。

声が出ない。



「・・・違う」

「え?」

「彼女さんが小野塚くんが迷惑してるからって」

「・・・」

「だから離れたの。でも・・・」


涙が止まらなかった。

しゃくりあげて、まるで子供みたいに泣く。


「・・・別れてきたんだ、彼女と」

「・・・え?」

「日向が離れてわかった。俺の大切なのはあいつじゃなくて日向だって」


その言葉を聞いた瞬間に、崩れるように落ちた。

さらに涙が零れる。


「・・・これからは辛い思いしなくていいんだよ」

「ん・・・」


それから少しして

元彼女さんの所に2人で向かった。


恵一さんがあたしと仲良くしてたのが羨ましくて

そんな嘘をついてしまったらしい。





「本当懐かしい」

「何が?」

「け、恵一さん」

「ただいま」


あたしの肩に顎を乗せて

お腹に手を回す。


「クリスマスだから早めに終わらせちゃった」

「まだ午前中」

「いいんだよ」


お腹を摩る恵一さんの手は優しく。

嬉しそう。


「一緒に買い物行こうか」

「え?」

「学生時代に戻ったみたいに、手繋いで」


思い出していたことが懐かしくなって

笑ってしまった。




手を繋いで買い物。

学生時代に戻ったみたいなそんな気分で。


お腹には新しい命。

2人だけのクリスマスをもう少し過ごさせてね?








みなさんにもいつか訪れる幸せなクリスマスを。

誰かと過ごせますように。

主婦も難しい。

てか全部難しい。

楽しいんだけどねw

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