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高校生。

みんな幸せそう。

でもあたしだって!


毎年のようにみんな幸せそうに過ごす日。

そんな人たちをあたしはここから見てきた。


そう、このケーキ屋のカウンターから。




「あかりー、これ出してー」

「はーい」

「つまみ食いしたら怒るからねー」

「ば、ばれてる」


あたしはこのケーキ屋、フロマージュの一人娘。

うちの店はちょっと湯名でテレビとか雑誌で特集されてたりする。


クリスマスは毎年1週間前から大忙し。

あたしは手伝いに借り出される訳だけど、


今年はちょっと違う。





「あかり」

「おはよ、矢部くん」

「おはよ」


あたし17にして初彼氏出来ました キラーン

12月頭に付き合いだしたの。


「今日も寒いね」

「そうだな」

「矢部くん手袋しないで平気なの?」

「ああ、平気」


ずっとこんな感じだけど、付き合ってるのよ!

店の手伝いして、バイト代もらってるし、

クリスマスは2人で過ごしたいなぁ


こういう場合って女の子から誘っちゃいけないものなの?




「どーなのカンちゃん!」

「どうなのってあたしに聞かないでよー」


カンちゃんとこ神崎美枝ちゃんはあたしの親友。

高1からのお友達なの!


「カンちゃんとこはどうなの?」

「うちは一緒にいるのが普通だからなー」


カンちゃんには中学の頃から付き合ってる彼氏がいる。

高校は違うんだけど、それでも放課後はずっと一緒にいるから

あたしも何度も会ったことある。


「誘う、誘わないの問題じゃないってことなのね?」

「告白は矢部からなんだから、待ってればいいと思うけど」


カンちゃんはクリスマスなんだから、男から誘わないと。しかも付き合って最初なんだし。

とミルクティーを飲んで続ける。


カンちゃんの言う通り、告白は矢部くんからだった。

1年の頃から、有名だった矢部くん。

頭がよくて、それなりにかっこよくて

あたしはいつでも遠くから見ている存在だった。

2年で同じクラスになって、名前順の関係で席が近くなったけど、

それまでと同じ、遠くから見つめる存在。

話したことも数度、それも義務的な会話だけ。


告白された時のことは今でも覚えてる。

12月に入ってそろそろコートを着なくちゃいけないなって時に

委員会で帰るのが遅れたあたしは教室に寄って、帰ろうとしてた。

寒い寒いと言いながら、廊下を走って教室に入ると

そこには矢部くんがいた。


席が近いからゆっくり近づく。

心臓の音が大きい。

何か話したい。何か矢部くんの中にあたしっていう存在を。

無理だってわかってるのに、恋は盲目ってこういうことなのかもね。


「・・・矢部くん、じゃあね」

「・・・・・・あ」

「ん?」


矢部くんは振り返って、あたしの目を真っ直ぐ見てた。

あたしは思わず、緊張してしまう。


「ちょっと話したいことがあるんだけど」

「・・・話したいこと?」

「ああ、うん」


自分の席、つまり矢部くんの斜め後ろに座る。

矢部くんは前を向いたままだ。


「ずっと」

「ん?」

「ずっと言おうと思ってたんだ」

「・・・何?」


その間の時間は忘れない。

短かったけど、とてつもなく長く感じた。


「ずっと好きだったんだ」

「え」

「君のことが・・・」


一瞬殴られたみたいな感じだった。

誰が?誰を?何で?とかそんな疑問がたくさん浮かぶ。


「付き合ってくれないかな?」

「・・・うん!」




今覚えば何で矢部くんはあたしのこと好きになってくれたんだろう。

結局あの時浮かんだ疑問はそのまま。


矢部くんは、あたしを見てたってこと?



カンちゃん、どうしよう。

クリスマスは明日だよ。


「矢部くん、帰ろ」

「ああ」


矢部くんはいつも無口。

あたしばっかり話してる。


「・・・あかり?」

「え、あ」


気付くと足を止めてた。

動かない、どうして。


「ごめ、先帰る」

「!あかり!」


走ってその場から逃げた。

矢部くんは追いかけてこない。

涙が止まんない。







「ただいま・・・」

「おかえり、あかりちゃん」

「高梨さん」


高梨さんはうちの人気パティシエ。

女性に人気の人。


「どうしたの、泣いたの?」

「見てわかるでしょ!」

「あぁ、そうだね。ごめんね」

「もうやだぁ」


その場に泣き崩れたあたしを高梨さんは部屋まで連れてってくれた。



「彼氏置いてきた?」

「うん」

「そっかー」


高梨さんを始め、親も店員さん達もあたしが彼氏いることは知ってる。

毎日一緒に登下校してるからね。


「だって何も言ってくれないんだもん」

「でも好きだって言ってくれたんでしょ?」

「うん」

「だったら信じてあげなきゃ」

「・・・」


涙は止まった。

タオルで顔を抑える。


「あかりちゃんもその子のこと好きなら信じてあげなきゃ」

「・・・信じる」

「うん、それが大事」


高梨さんは笑顔でポンポンと頭を撫でてくれた。


「高梨さん、ケーキ作りたいの、教えて!」

「OK、任せて!」


矢部くんにはあとで連絡しておこう。

あたしの思いをケーキに込めて、全部伝えよう。





結局矢部くんからのメールの返事も電話に出ることもなかった。


でも朝には迎えに来てくれた。

お互い何も言わないんだけど。


「放課後、一緒に行きたい所があるんだ」

「行きたい所?」

「ああ、ついてきてほしい」

「わかった」


ケーキはうちの冷蔵庫で眠ってる。

矢部くんの用事のあとに帰ればいいよね。





お昼に高梨さんからメールが届いた。


『ケーキの様子見たけど、美味しそうに出来てたよ!

あかりちゃんの思いが詰まったケーキだからね。成功すること祈ってる!』


この人何で彼女作んないんだろうと思った。

モテるのに、不思議。




「あかり、帰るよ」

「うん」


いつもと同じ放課後。

だけど、矢部くんが何処か違う。




「ここなんだ」

「ここって・・・」


その場所はうちのケーキ屋が見える喫茶店だった。

視覚的にうちからは見れないけど。


「1年の時からついこの間までここでバイトしてたんだ」

「そうなの?」

「ああ、ずっと見てた」


懐かしそうにうちの店を見る。

幸せそうなお客さんたち。


「あかりはいつも楽しそうに店を手伝ってて、表情がくるくる変わるし。

嬉しそうにお客さんを眺めてて、それを見てるのが好きだった」

「知らなかった・・・」

「言わなかったから」


矢部くん、少し恥ずかしそう。

いつもと違う。


「俺あんまり話すタイプじゃないから、

あかりが不安がってるのは気付いてたんだけど、どうにも言えなくて」

「そっか」

「言わなくてごめんな?」

「ううん、いいの」


嬉しくて泣きそうなのは内緒。

矢部くんはあたしの手を取る。


「これからもよろしく」

「こちらこそ」


それから2人でうちの店に向かった。

あたしの部屋であたしが作ったケーキを食べる。


「美味しい」

「良かった」

「あかり、パティシエになれば?」

「えー、そうだなぁ」


ねぇ、気付いてる?

ちゃんと思いを伝え合ってから

矢部くん話してくれてるって。

凄く嬉しいの。


「あかり、笑ってる」

「そうかな?」

「絶対ね」


矢部くんも嬉しそう。

多分お互い辛かったんだ。






その日、うちで行われたクリスマスパーティに

矢部くんも参加した。

家族だけのものだから、親とかもいたけど

矢部くんのこと気に入ってくれたみたい。


「あかり」

「ん?」

「そろそろ名前で呼んでくれない?」

「え」

「呼んで?」


何か矢部くん積極的になってる気がする。

なんか駄目だなぁ


「か、要・・・」

「上出来」


それからのこと、

要は今まであたしに干渉できなかった分

したがりになった。


今ではカンちゃんも驚くくらいのラブラブなのよ!







今年のクリスマスからずっと2人きりで過ごせるように

あたしはずっと祈り続ける!


みんなにも素敵なクリスマスが訪れますように。

家に近くにケーキ屋があるんですが

あそこでバイトしてる子は大変そうだ。

高校生の頃ってよくある話でへこむんだよねw

自分にはそうならないだろうって思ってもw

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