エピソード1・娼婦の娘
不快な表現が含まれます。嫌だと思ったら読むの止めて下さい。
娼館生まれの娼館育ち、他の世界を知らず、娼婦の母にならい初潮を迎えた11歳で客を取って生活していた。そんな彼女の上客として、初めてを買った男はミンス男爵。三日と空けず通い続け、少女の姿に昔の女を思い出す。その女も十代前半で胸ばかり大きく地味な顔の大人しい子だった。
「お前の母親はなんと言う名前かな?」
「……マリエラ。あの人を買いたくても、もうここには居ないよ。何年も前にお金持ちに身請けされて出て行ったから」
「そうか、では、父親が誰なのか知って居るか?」
「名前は知らないけど、男爵様だって言ってた。あの人の唯一の自慢話で、あたしは嘘だと思ってる。よく来る客があたしに似てるんだ、そっちが父親だと思う」
「ふ……ふふふふふ、そうか、お前は私の子だったのか。丁度良い、お前を引き取ろう。年の合う王子が学園に入ると聞いた。お前を教育し直して、男爵家の娘として学園に通わせてやる」
「ミンス様、話聞いてる?」
「本当かどうかは、どうでも良い。私が父親だと言い触らしていたのだろう。引き取る理由として十分だ。男爵家で贅沢な暮らしをさせてやろう。お前は学園で王子様を射止めて妻の座に着け。最悪愛人でも良いが、王家との縁を繋ぐ役割を与えてやる」
ニタリといやらしい笑いを浮かべ、最後の夜を楽しんだミンス男爵は、翌朝娼館の主に身請けを申し出て大金を払い、少女を屋敷に連れ帰った。
初めて自分の部屋を与えられた少女は舞い上がり、この幸運を喜んだ。
「あたし、王子様と結婚するの? この大きな屋敷のお嬢様になって、お貴族様の仲間入りするんだ。あたしを馬鹿にしたやつらなんか、王子様と結婚したらやっつけてもらおう。ふふ、ミンス様ありがとう。一生恩に着ます。あなたのために、頑張って王子様を誘惑するわ!」
彼女の再教育は困難を極め、貴族令嬢としての礼儀作法を身に付けさせる事は、入学までに間に合わなかった。基礎学力など言うに及ばず。金を積んで他国の学校に籍を置き、学園には3年生で編入。その後の彼女の活躍は学園中の噂になるほどだった。真面目な貴族令息達は面白いくらい簡単に落ち、王子の取り巻き達は騎士団長の息子を皮切りに次々毒牙にかけて、最終的にトラヴィスを落とすまでそう時間は掛からなかった。
「ふふふ、男なんて簡単に落とせるわ。ミンス様のためにも、絶対にトラヴィス様を手に入れてみせる! 邪魔な婚約者なんて蹴落としてやるわ。見ていなさい、アナスタシア・ランスウォール! 男は気位の高い女よりも、庇護欲を擽るか弱い女が好きなのよ。この体とテクニックで王子を虜にして、婚約なんてみんなの前で破棄させてやるわ!」
少女の野望はあと少しで叶うと思われたが、詰めの甘さが全てを失う結果を導いた。男爵の庇護を無くした少女は元の世界に戻り、金持ちの男との出会いを待つ。邪魔なアナスタシアと自分を切り捨てた者達への復讐を誓って。
設定として考えていた話です。本編を短くまとめる為にカットしました。
折角考えてあったので書いてみましたが、いらなかったでしょうか。