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悪女の本性を暴け

 ランスウォール伯爵は難しい顔をして馬車の待機所に現れた。この短時間で何があったのか、随分疲れている様にも見える。


「お父様、どちらにいらっしゃったのですか?」

「アナスタシア、待たせたな。おお、テオドール君も一緒だったのか」


 ランスウォール伯爵はアナスタシアがゲルダにされた仕打ちを知らず、ゲルダが迎えに行ったものと思い、そこに娘が居る事に違和感を感じなかったようだ。その当のゲルダはいまだに伯爵を探しているのか、まだ戻って来なかった。


「ランスウォール伯爵、お久しぶりです。あなたに少し確認したい事があるのですが、お時間頂けますか?」

「何だ? 改まって」


 テッドは伯爵と二人で話したかったため、自分の馬車に伯爵を誘導し、アナスタシアに聞かれないようドアを閉めた。伯爵は何と無く何を聞きたいのか察して、溜息を吐いた。


「それで? ゲルダの事か、子供の事、娘の事、どれでも聞きなさい」

「では、こんな事を聞くのは無作法だと承知で聞きます。伯爵は夫を亡くしたばかりだったあの女性と、本当に関係を持ったのですか?」


 ランスウォール伯爵はそこから質問が始まるとは思わず、目を見開いた。驚きはしたが、そこは確かに気になるところだろう。眉を下げ、視線を少し落として語り始めた。


「私には覚えが無い。しかし、うちに来て数日経った頃、彼女が故人を偲びながら酒を飲みたいと言うのに付き合って、亡くなったご主人の話をしながら応接間で遅くまで飲んだのは確かでね。私の方はそんなに飲んだつもりは無いのに、疲れていて途中で寝てしまっていたのだ。しかし気が付いたら、何と言うか……」

「彼女が隣に寝ていた、という事ですか?」

「いや、寝室には行っていない。こんな事を君に話すもの何だが、ソファに横たわる私の上に、彼女は裸で跨っていた。何をするんだと驚いて突き飛ばしたが、あなたも気持ちよかったでしょと彼女に言われた。こちらはまったく記憶は無いし、彼女に対して不快感しか感じ無かった。だからその日のうちに屋敷を出て行ってもらったよ。それまでは大人しい普通の女性だったし、おかしな行動も取っていなかったから、世話になったミューラー子爵の愛した人だと思って勤め先を探したり、親切にしたのが間違いだった。お陰でそれ以来娘と顔を合わすのが気まずくてな。昨日はあの子から言われた言葉で、私に不信感を持たせてしまったのだとわかった。心底ゲルダを屋敷に招き入れてしまった事を後悔したよ」


 ランスウォール伯爵はゲルダの事を良くは思っていないようだった。4年前に終わったと思っていた彼女との関係は、伯爵にとって汚点でしかなく、忘れたい過去であった。それが、あの時の子供よと言ってひと月前に現れた時には、冷たい泥にゆっくりと沈む様な絶望感に襲われたのだった。すぐに事実確認をさせたが、いまだに真実は分かってはいない。


「では何故、そんな女性を連れて来たんです? 後継者はアナだと決めていたなら、なにも子供の事を昨日話す事も無かったでしょう? だからアナは誤解して跡継ぎになる事を放棄すると宣言したんですよ」

「彼女が勝手に付いて来たんだ。雇った馬車で私を追って来たらしい。王都の手前でお金が尽きて、私の宿にやって来た時は本当に驚いたよ。何をしに来たのかと問えば、娘に自分を紹介して欲しいと言ってきたんだ。情け無い話だが、でなければ、子供が出来た経緯を事細かに娘に話すと言って脅されて、身動きが取れなかった。できれば、あの子に知られる前に終わらせてしまいたかったのだが、間に合わなかった」


 テッドは項垂れる伯爵に同情はしたが、何故最初にあの性悪女の本性を見抜けなかったのかと、責めたい気持ちが強かった。


「ではもう一つ、アナの侍女を子供の世話係に降格させた理由は?」

「何の話だ? メアリは次期侍女長にすると決まっているんだぞ。そんな馬鹿な事する訳がないだろう。一時的に自分から子守の様な事をしたようだが、何故そんな話を?」

「あの女性がアナに言っていたんですよ。メアリは子守にしたと。アナスタシア専用の馬車が来ないのは、彼女の馬車を息子に使わせるためだとも言ってましたね。実際は、伯爵の馬車一台で済むからだったわけですが。あの人はアナスタシアの為に、幌馬車を雇って寮まで来ましたよ。その幌馬車に乗って帰れと言って、更には、騎士なのだから、馬に跨って勇ましく帰れとも聞こえました。そんな女性を、いつまで放っておくつもりですか?」


 ランスウォール伯爵は拳を握ってワナワナと震え出し、怒りを露にした。寮に迎えに行くと言い出したのはゲルダだった。伯爵が役所で手続きをしている間に戻って来ると言って勝手に動いたのだが、影でそんな事をしていたのかと、怒りが頂点に達した。伯爵は、ゲルダを見たら切り殺しそうな勢いで馬車を出た。


「伯爵、俺に手伝える事があれば、何でも言って下さい」

「テオドール君、ではあの女を調べるのを手伝ってくれ。過去を調べても何も出てこないのだ。私の所でこれだけの事をしているのだ。子爵家ではもっと何かあったはずだ。男爵家にいた頃の事も、バルシュミーデでの4年間も洗いざらい調べてくれ。全てがわかるまで、ゲルダはうちで監視する。私たち親子の間に亀裂を作り、次男の生母としてうちに入り込むつもりだろうが、そうは行くか。その前に、親子鑑定がどう出るかが心配だが、仮に息子だったとしても、ゲルダの事は許すものか」

きっと、お父さんの人を見る目の無さに苦情が出ると思いますが、ただのお人よしでは無い所をお見せできれば良いなと思います。

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