非日常への入口はすぐそこに
「普通が一番良い」だなんて、誰が一番初めに言い始めたのだろうか。
実際、この言葉には何度頷いても足りないくらい自分は同意している。
転校初日、なんとか遅刻をせずに学校にたどり着いた。しかし、この時期、この中途半端な時期に転校してくるような転校生が珍しくないだろうか。珍しいに決まっている。
転校の挨拶をしてすぐの休み時間、やはり自分の周りには人が集まっていた。しかし、まだ少ないのが唯一の救いだ。
適当にあしらっておけば時間が経つにつれて興味を薄れるだろう。
「ねえ、深影さん。」
「なに?えっと…」
例によってクラスの中心の人物のような明るく、可愛らしい雰囲気の女の子が話しかけてくる。
「あ、私は学級委員をやってる七丘祐希っていうの。よろしくね。」
「よろしく。」
「分からないことがあったらなんでも言ってね。それじゃあ。」
笑顔の花が咲くという表現がとても当てはまる笑顔を残して彼女は自分の席へと戻っていく。
なんだかこちらまで幸せな気分になりそうだった。
それは周りにいた人たちも同意のようで、皆が口々に「可愛い」や「癒される」さらには「俺も教えて欲しい」というような声が聞こえてくる。
やはり、彼女はこのクラスの中心で人気者なのだろう。自分とは対照的だ。
彼女は恐らく自毛であろう綺麗な茶色をした長い髪、スラッとした長い手足にしまった腰、それなのになかなか豊満な胸、そして極めつけは愛らしいなんて言葉では片付けられないほどの整った顔をしている。
それに対して自分は、前髪を眉の辺りで切りそろえたいわゆるおかっぱ頭の黒髪、そして長くも短くもない平均的な手足、それなのに胸は平均以下の大きさ、そして顔はというと、クリクリとした目…とはお世辞にも言えないようなジト目―これはわざとではなく生まれつきなのだが―総合しても可愛いとは言われる要素などどこにもない。
これは住む世界が違うな。ため息混じりにそう思った。