開く扉と閉じる世界
夕暮れという時間は、いつも不思議な感じがする。
あと少しで日は隠れ、深い深い漆黒の闇が訪れる。
彼女もまた、その日暮れを惜しむ一人であった。
『都渡 ラビ』
県立高校に通う、2年生だ。
――――空が紅く、紅く色づく。
日が翳り、ゆっくりと漆黒が訪れる……
……筈だった。
訪れるべきその漆黒は、純粋な黒へと姿を変え、彼女以外のものは白く染まっていく。
気がつけば空は黒く、大地は白く、その姿をシルエットのようにして、存在をかろうじて保っていた。
「何よ……コレ……」
ラビが呟くのとほぼ同時に、世界にひびが入った。
世界が瓦解し、崩れ去っていく。
真っ黒な空も、真っ白な大地も、すべてガラスが割れるように崩れ、奈落へと真っ逆さまに落ちていく。
それは、彼女も例外ではない。
ただ重力に任せるまま、彼女は落下していく。
怖いという感情よりも、驚きのほうが強かったらしく、声のひとつも発さない。
ただ願うのは自身の身の安全と、友人の安否・・・・・・それだけだった。
『・・・丈夫、君はまだ・・・・・・』
意識が途切れる寸前、何かの声が聞こえた気がした。
だが、それが何を意味するのか、何を言っていたのか。
彼女に知る術は・・・・・・無い。