俺は人間だ
目を開けると長い黒髪と黒服を纏った少女がいた。
およそ15歳にも満たない顔つきと身長だ。
「私は死神」
ん?いやいや何を言ってるんだこの子は。
死神?だとしたらここは地獄か何かかよ
「あの~とりあえずここはどこ?」
「ここは魔界よ」
魔界かーそう来たかー。
地獄でもなければ天国でもない。魔界かー。
ゲームのやり過ぎたかな。よくないねゲームのやりすぎは。
とっとと目を覚まして大学にいかなきゃ。
「あなたにはこの魔界を救ってもらう為のヒーローになってもらう」
「は?ヒーロー?魔界の?」
何を言っているんだ?この子は。
「えぇその通り。今魔界は人類軍に侵略されそうになっているの。そこで魔王は異世界から魔界を救ってくれるヒーローを連れてこいと私に命じたの。理解した?」
「いやいやおかしいだろ。俺は人間だぞ。その敵の人間に魔界を救ってもらおうって・・・・ダメだろ」
そういうと少女は首を傾けながら不思議そうな顔で俺を見つめた。
「何をいってるのかしらあなたは。どうみてもゴブリンじゃない」
「は?」
自分の手を見てみる
「う、嘘だろ。緑色…だ。」
「はい鏡」
少女は黒い服の中からデカイ鏡を取り出した。
そこに写るのは3等親ぐらいしかない緑色のバケモノだった。
「う、うわぁぁぁぁ!!」
なんだこれなんだこれ
どうなってんだよこれ!
「嘘だ!あんたが騙してるんだろ!」
そうだ、そうにきまっている。
どうして俺がゴブリンになってなきゃいけない
「ふぅ」
少女は呆れた顔で俺を宙に浮かせた
「うわっちょっ!」
「信じられないと言うならこの世界の現実とあなたの姿をしっかりと認識させてあげる」
そういって少女と共に空高く舞い上がった。
「おい!おろせ!!俺は高いところは嫌い・・・・」
目の前に広がるのはとても自分がいた世界とはかけはねれていた。
目の前には森
右には広大に広がる大地や火山。
左には大きな城が見えた。
しまいには島がいくつも浮いている。
「・・・なんなんだここは」
少女は森の奥へと進んだ。
「ここら辺でいいだろう」
少女はそうつぶやくと突然急降下した。
「うわーーー!」
俺の顔面ぎりぎりで地面の上に止まった。
死ぬかと思った。
「おい!どこだここは!」
「いちいちうるさい男ね。言ったでしょ。この世界の現実と貴様の姿をしっかりと認識させてあげると」
そう言うと少女はまた黒い服の中から短剣と盾を取り出した。
「はい。これはあなたの物よ。好きに使いなさい」
少女は一人で宙に浮かび消えた。
「は?いや、これでどうしろと……。」
ギァーーーー!
右の方向から叫び声が聞こえた。
「いいぞ。今だ!畳み掛けろ!」
続けて人の声も聞こえた。
恐る恐る近付くと
ゴブリンと人が戦っていた。
しかも状況は4体1とゴブリンの劣性
人は躊躇いもなくゴブリンを切っていた
ゴブリン体から青色の液体が飛び散る
なにしてんだ!?こいつら!?
足がすくみその場から離れようとする
ガサッ
「もう一匹いたか!」
やばっ逃げなきゃ!
しかし慣れない体のせいか、足をつまずき坂を転がり落ちた。
「痛ってぇ」
痛がってる場合じゃない。早く逃げなきゃ。
「俺から逃げれると思ったかよゴブリンごときが」
しかし目の前には剣を片手に持った男が立っていた。
やばいやばい。なにか防げるもの!
周りを見渡すと右手側5メートルほど先に少女が渡してくれた盾が落ちていた。
「どこ見てんだよ!」
男は剣を構えながら向かってきた。
俺はすぐ立ち上がり盾に向かって走った。
盾を手に取るとすぐ男の方へと構えた。
「ん~??」
男は俺が構えた盾を見ながら高らかに笑い出した。
「貴様俺の攻撃をそんな物で防げると思っているのか?」
いや無理だろ。俺でもわかる。
これじゃ1発は耐えれてもその後が耐えられない。
てゆーか俺が剣の追い付けないと思う。
男が徐々に距離を詰めてくる。
どうする?逃げることはできない。背を向けたら確実に刺される。
・・・まてよ?あいつは今日本語を話してたよな?
俺が聞き取ることができたんだ。きっとそうだ。
なら俺が日本人ってことを、人間だってことを証明できれば!
「ま、まってくれ!」
「ん?」
男は足を止めた。
今の状況を簡潔に伝えなきゃ!
「俺は人間だ!ここの世界とは別のところから来た・・・と思う。
俺には今何が起こっているのかわからないんだ!だから頼む!
今ここで何が起こっているのか説明してくれないか!?」
どうだ?伝わったか!?
「ごちゃごちゃうるせーゴブリンだなぁ!!」
・・・え?
「さっきから何言ってんだてめーは。
相変わらずゴブリンは奇声しかあげねーな。もういいや、殺そう」
男が止めていた足をまた動かし距離を縮めてくる。
「そ、そんな!まってくれ!」
俺殺されるのか!?
こんな意味も分からない状態で!?
俺はどうすることもできず尻餅をついた。
「死ねや」
男が大きく剣を振り下ろした。
もう駄目だと目をつぶった瞬間声が聞こえた。
「だから言ったでしょ?あなたはゴブリンなの」
キィィン
高い金属音が鳴り響く。
目を開けると目の前には消えたはずの少女がいた。
手には少女の背丈以上もある大鎌を構えていた。
「な、どこ行ってたんだよ!」
「どこって。・・・ずっとあなたの上にいたわよ?」
少女は尻餅をついた俺を見ると
「まったく情けないわね。魔界のヒーローともなる男が」
「だからなんなんだよ!そのヒーローって!」
「まぁいいわ。また後でゆっくり説明してあげるわ」
そういって少女は男に大鎌をむけた。
「くそ!なんでこんなとこに死神が!」
男はさっきとの態度とは急変し、その言葉に緊張感が生まれた。
「どうするの?殺られたい?今なら見逃してもいいのだけれど。」
少女は余裕な口調で男に問いかけた。
「はは!逃げるだ?ここであんたを殺せば俺も一気に上級職に!!」
「そ。なら死んで」
一瞬だった。
少女は目にも止まらに速さで男の背後に瞬間移動し
それと同時に男の体が真っ二つに切れ血が飛び散った。
「うっっ」
目の前に起きた惨劇を見て吐き気が来た
なんなんだあの子は?どうして躊躇もなく人を・・・
「その理由は簡単よ」
少女は心を読んだかのように俺に近づき笑顔で言い放った
「殺らなきゃ殺られる。ここはそういう世界なの。いたってシンプルでしょ?」
その笑顔が俺には恐怖に感じた