北極へ
サイトウと数人のコケ人間達は、引き揚げられた勢い余って、網から放り出された。冷たいカマクラの中をサイトウは滑り、壁にぶつかって止まった。シロクマ達は、サイトウ達が入っていた網をライトで照らすと、コケ人間だらけになっていたので驚いた。
シロクマ達「この人間達は腐っている!!」
「捨てろ!!捨てろ!!」
「触らない方がいいぞ!!」
シロクマ達は、コケ人間達が入った網ごと切り離し、地上に落とした。コケ人間達は、地面に叩きつけられて、粉々に砕けた。
サイトウとともに網から放り出された何人かのコケ人間達も、シロクマ達は大きなゴム手袋をして捕まえ、地上に放り投げたが、抵抗するコケ人間達に体毛を捕まれた。そのため、そこから藻やコケが広がり、あっという間にミドリクマになった。シロクマ達は発狂した。かつて、宇宙藻によって多くのシロクマ達がミドリクマになり、そして皮膚病になって免疫が低下し、死んだことがあったからだ。対策としては、塩素の入ったプールに入って体を洗い、藻を落とすぐらいしかないが、サイトウのコケや藻は、進行スピードが速すぎるので、体を洗う暇など与えてくれなかった。ミドリクマとなったシロクマ達は、バタバタとその場に倒れ、そのカマクラにはサイトウ一人だけとなった。
サイトウ「参ったなあ、これじゃあ町に戻れない。どうすれば・・・・。」
サイトウは、カマクラの中の操縦席と思われる席に座り、4つしかないボタンのうち、青色のボタンを押してみた。すると、カマクラは動き出し、さらに上空にある北極へと向かって飛んだ。北極に着くと、カマクラは地面にドッキングした。サイトウは、恐る恐るカマクラの外に出てみると、北極は、大小いろいろなカマクラだらけだった。中を覗いてみると、シロクマ達が騒いでいたり、網に掛けられた人間達がいたり、人間達を男と女に仕分けしたりしていた。人間の腕だけ、足だけを集めたカマクラがあり、サイトウはゾッとした。
サイトウ「斬られてバラバラにされるんだ・・・・。」
サイトウは、カマクラの中を覗く気がなくなり、しばらく歩いた。しばらく歩いた結果、北極にはカマクラしかないようなので、自分が乗って来たカマクラで帰ろうと思い、元来た一本道を引き返し始めた。
サイトウ(北極は真っ白だなあ、白しか色がない。)
そんなことを思いながら歩いていると、自分が乗って来たと思われるカマクラに、シロクマ達が何人か集まっていた。サイトウは、近くにあるカマクラとカマクラの間に隠れた。防護服のようなものを来た者が中から3人ほど出て来た。そして、サイトウの乗って来たカマクラは、地上へと飛んで行った。
サイトウ「うわっしまった。」
サイトウ(コケに感染したシロクマ達を、カマクラごと捨てたんだ、他の動くカマクラを捜さないと。そうだ、網に掛けられた人間達のカマクラがあったなあ、あのカマクラでなら、町に帰れるかもしれない。)
サイトウは、そのカマクラがあった辺りに来たが、いまいちどのカマクラか分からなかった。なので、その近辺のカマクラを覗くと、人間の生首だけが、男と女に分けられて集められていた。
サイトウ「もうイヤ!!」