北極が来た!!
大晦日になり、サイトウは山仕事を早めにきりあげた。ドピーからLINEが来ていたためだ。このLINEは、サイトウにとって初めてのLINEだった。
7時にサエナイ神社の狛犬のところに集合ね。
サエナイ神社は町中にあり、サイトウの家から車で40分ぐらいかかる。サイトウは家に着くと、さっさと風呂に入り、少し休んでから着替え、ドピーにもらった酒を持って出かけた。多くの町の人が、サエナイ神社でカウントダウンをするためか、道は少し混んでいた。サイトウが人に誘われるのは、林業の仕事を始めてから初のことだった。7時より少し早めに着いたが、すでに外人に変装したドピー、マナ、そして太一君と思われる若者が来ていた。
ドピー「サイトウさん。」
マナ「お久しぶりです。」
太一「はじめまして。」
挨拶を簡単に済ませ、4人は近くのファミレスで夕食を食べることにした。サエナイ神社は、多くの人でいっばいだった。
ファミレスに向かう途中で、空に穴が開いた。夜のためか、あれ、穴が開いてるんじゃない?という感じで、町の人々は注目していた。穴は徐々に広がり、町をすっぽりと覆うぐらいの大きさになり、その中から巨大な氷の塊でできた大陸が現れた。町に氷の細かな粒が降り注ぎ、人々はパニックになった。
ドピー「ついに来た、とうとう"北極"が来てしまった。みんな、酒を飲むんだ!!」
マナは酒を飲むと渡り鳥になり、太一は黒猫になった。ドピーは犬になり、サイトウは、体から緑のコケか藻のようなものが生え始めた。
ドピー「サイトウさん、キモい。」
マナ「病院に行った方がいいんじゃないですか?」
太一「ドピーは犬、マナちゃんは鳥、俺は?サイトウさんは?」
マナ「太一君は黒猫、サイトウさんは分かんない。」
サイトウは、体中、緑で埋め尽くされ、とうとう顔にもコケや藻が生えて、完全なコケ人間みたいになってしまった。
ドピー「ごめん、サイトウさんにこの酒は合わなかったのかも。本当にごめんなさい、みんな、とりあえず隠れて。酒の効果は、たぶん明日の朝ぐらいまでは大丈夫だと思う。」
サイトウ「ちょ、俺はいったい何に・・・・。」
変身した皆は散らばり、どこかへ行ってしまった。サイトウは、自分の姿を見ようとファミレスへ行くと、ガラスが割れて店の中は荒らされ、誰一人いなかった。とりあえず、男子トイレに入り鏡を見ると、一瞬息が止まりそうになった。
サイトウ「なんだこれは!!」
もはや、体の形をしたコケと藻の塊になっていた。
サイトウ「まあ、明日の朝までだしな・・・・。」
サイトウは、ドリンクサービスのココアを勝手に取って席に座り、飲み始めた。割れたガラス越しに外を眺めていると、二足歩行で歩く2匹のシロクマが話しながら歩いていた。
シロクマ1「今日は大漁だな。」
シロクマ2「この星の人間達は、平和ボケしてやがる、闘うことを知らないようだな。」
サイトウは、シロクマ2匹と目が合った。
シロクマ達「うわあ!!」
サイトウ「うわあ!!」