第一話 黒の騎士団の反乱
*前回のあらすじ*
うわ、この人強い
*注意*
あとがきにとても胸クソ悪い話がくっついてます。
街とは違う方向に気配がする。
数人だ。
敵意はないようだが怪しい。
出てくる前に噛み殺すか・・・。
「まて、私だ。」
「あなたは・・・ファーゴットさん!」
「無事で良かった・・・。今あの街で何が起きてるか説明する。」
出てきたのはファーゴットという人間。
それとたまにこいつと居る人間が数名。
リコとも友好的な相手ではあるが、今街のあの殺気と血の匂いからしてこいつらが敵とは限らないがリコが頭を撫でて止めるのだかおとなしくしていよう。
その後、聞いた話は簡単だ。
古代種の遺跡で会った男がリコを反逆者として、殺害のクエストを出した。
それによりフリエラの街に居たリコの使い魔である魔物達を虐殺。
さらに従わない者も捕らえているのだとか。
今は緑の採取者のメンバーが黒の騎士団と交戦状態になり、街の人間を守り戦っているのだとか。
要は人間同士の殺し合いがあの街で起きているらしい。
つくづく愚かだな人間というのは。
「そんな・・・。」
リコの瞳から涙が流た。
それが何を思ってかは分からないが、それを許すのは彼女を守ると決めた事に背く事だ。
今すぐあの街の愚か者共を噛み殺してやろうかと思っていたらリコが抱きついてきた。
リコは悲しい事があるといつも私に抱きついてくる。
彼女の悲しみの原因を倒すより、今はリコを慰めてやろう。
「事実だ。黒の騎士団は君にとって敵だ。赤の旅団は手を出さないだろうが守ることもしないだろう。だが緑の採取者は味方だ。」
「なんで味方するんだい?」
「緑の採取者というか黒の騎士団以外は仲間を重要視する。それは知識であったり連携であったりな。リコは優秀な採取者だ。簡単に失っていい存在じゃない。」
「なるほど。で?これからどうしろと?」
「緑の採取者本部へ向かって欲しい。これが地図。それと・・・、おい持って来い。」
ファーゴットに指示を受けた人間が荷物を持ってくる。
匂いからリコの物とどうやら旅人の物らしい。
随分用意が良いとは思う。
まるでこうなる事を予想していたような感じすらする。
「君達の荷物だ。」
「なるほど。私は一応まだ黒の騎士団だが良いのかい?」
「辞めるんだろう?ただこの娘を守ってくれ。」
「まぁ良いよ。んで誰に会いに行けばいいんだい?」
「緑の採取者現団長マ=グロという人物だ。彼は獣人。それも海系の獣人なのだが」
「あぁ知り合いだ。あいつのとこなら丁度いい。この娘が安全な場所までついたら会いに行くつもりだったからな。」
「それは調度良かった・・・。ならすまんが頼む。私達はあの街をなんとかするつもりなんだ。いつ君が帰ってきても良いようにな。」
「はい・・・。」
それだけ言うと彼らは森に居るという黒の騎士団に対する抵抗組織の元へと帰っていった。
しかし大丈夫なのだろうか?
リコと同じ緑の採取者というのは基本的に弱い奴らばかりだ。
戦闘能力で言えば冒険者組合の中で一番強いのが黒の騎士団、こいつらはまぁ当然だろう。
魔物と戦うことを主軸としている奴らだ。
弱かったら話にならない。
隣りにいる旅人と同等の奴が居ないかぎりは自分だけでも十分戦える程度の強さだが。
そして次に強いのが赤の旅団。
こいつらは護衛をするのが主な仕事と聞いている。
護衛というのはよくわからないが弱い奴を守って街から街へと流れる奴ららしい。
まぁこいつらも弱い奴をかばいながら旅をするのだから弱くては話にならない。
そして一番下が緑の採取者だ。
リコもだが基本的に植物を取ってきたり、石を取ってきたりと戦闘を行う奴らではない。
なぜそれが必要なのかわからないが基本的に魔物から逃げつつ必要な物を集めるのが仕事なのだから戦いは苦手のはずだ。
それでもあのファーゴットという奴は強い。
旅人ほどではないが私でも敵うまい。
しかし、ファーゴットほどの実力者は自分の知るかぎりでは緑の採取者には存在しないはずだ・・・。
「二人共悩むのは良いけどさっさとマ=グロのとこ行くぞ~。ここに居ても何も出来ない。」
リコはまだフリエラの街を見ていたが旅人の言う通りだ。
ここで街を眺めていても何かが変わるわけではない。
早急にマ=グロと言う人間の所へ行くしか無い。
旅人はさっさと自分の荷物を担ぐがリコは自分の荷物を運ぶことは出来ない。
ワウっと一声吠えると旅人は意図を組んでくれたのかリコの荷物を自分の背に括りつけてくれた。
リコもようやく前を向いて歩き出してくれた。
何も出来ないがせめてリコを慕って付いてきた魔物達が無事である事を祈ろう。
私はドリアードのクレア。
クレアと言うのはご主人様であるリコ様が付けてくれた名前だ。
私達、魔物というのは名前を持たない。
しかし「それじゃあ呼びづらいよ。」とリコ様は名前をくださった。
名前があり、それを呼ばれるというのはなんと楽しい事か。
それに人間達が作った魔物牧場と言う場所に住まわせてもらい、定期的に葉っぱを渡せば安全に生活できる様にもしてくれた。
森に住んでいる頃は周りは、同種族ですら縄張りや、水場などですら争っていたがここではそんな事はない。
健やかに成長出来るのだ。
「ようクレア。薬草取りに来たぜ。」
「あら、ごぶごぶ。畑はもう良いの?」
ごぶごぶと言うのは私と同じで、リコ様に仕えるゴブリンだ。
彼も私と同じで、リコ様に助けてもらって魔物牧場に住んでいる。
ゴブリンというのは人間にすぐ襲われる。
理由はよくわからないが、人間を襲うかららしい。
私達は別に好き好んで人を襲ってるわけじゃない。
縄張りを守るため、仲間を人間が殺すから、結局のところ自己防衛だ。
私達は、私達を守るのに必死なだけだ。
「おう、サーペントウルフやビックビートルなんかと協力して開墾ってのもしてきたぜ。」
「ふーん。ゴブリンっていうと狩猟民族って聞いたんだけど・・・。」
「まぁ確かにそういう種族だが・・・。俺はずっとこうやって畑を耕すのが夢だったんだよ。ご主人のおかげだな。」
そう、リコ様のおかげだ。
街の人間達はまだ私達を怖がっている人も居るけれど、子供達は違う。
リコ様が連れてきた魔物達と一緒に走り回ったり、遊んだり、時には私達の仕事を手伝ってくれたりもする。
きっといつかこんな光景が色んな街に溢れれば、私達はもっと平和に穏やかに生きて行けるはずだ・・・。
そう思うと今日もしっかり葉っぱに栄養や水を行き渡らせて、青々とした葉っぱをいっぱい作ろうと思う。
なんで目の前に赤い水たまりあるのかな・・・。
牧場も燃えている・・・。
あれ?ごぶごぶだ・・・。どうして動かないのかな・・・?
怪我・・・してるのかな?
早く、私の葉っぱを飲まないと駄目だよ・・・?
今度ここに小さな池を作ってくれるって約束したじゃない・・・。
約束・・・破るの許さないよ・・・?
魚も放して・・・人間の子供達と釣りするんだって・・・言ってたじゃない・・・。
「そっちはどうだ。」
「はっ、このドリアード最後まで抵抗しなかったよ。あっけないもんだな。」
痛い・・・。
なんで蹴るの・・・?
薬草くださいって言えばあげるよ・・・?
だから・・・痛いことしないで・・・。
痛いことするのも・・・されるのもリコ様が・・・悲しむから駄目だよ・・・。
「おい!サーペントウルフ達を子供がかばって攻撃してくるらしいぞ!さっさと応援に行くぞ。」
足音が遠ざかっていく・・・。
なんで・・・私達攻撃されたんだろう・・・。
なにか・・・私達悪い事したかな・・・?
あぁ・・・もう一度リコ様に会って・・・お話・・・したかったな・・・・。
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今回はちょっと短め。
あとがきにある話のドリアードさんは第一章第四話で出会っていたドリアードさんの記憶の小話です。
このリコの魔物牧場に居る魔物についてはもっと掘り下げたかったとこですがやめました。
結構長くなるしきついからw。
ぶっちゃけこの魔物達だけでひっそり生活出来るレベルじゃね?って量を考えてました。
まぁ、ちょっと駆け足にして飛ばしてしまったとこですが・・・。
今回のこの小話については深くは掘り下げませんが後々絶対必要な事なので書きました。
半分ノリでも書いてますが必要な話なのです。
主導はエル・ファンタジアですが実働部隊は全て黒の騎士団とそれに同調している街の人間です。
この事実やそれに反対していた街の子供達についても後々必要となってくる伏線なのでいつかこれがお披露目出来たらと・・・。
*登場種族説明*
*ドリアード
薬草としては最高級の葉を茂らせる魔物。
召喚魔法無しでも多少の意思疎通は可能でドリアード一体居れば遊んで暮らせるとまで言われているが人に付いて行く事はほとんどない。
周囲の植物の成長を促す魔法も仕えるらしい。
年老いた個体はハイドリアードと呼ばれ天災とまで呼ばれる。
ハイドリアードからは死者すら蘇らす薬草が取れるとか取れないとか
*ゴブリン
ファンタジー物で定番の魔物。
洞窟や森のなかに集落を築き、野生の動物や獣型の魔物を狩って生活する。
稀にゴブリンの商売人も存在する比較的人間に友好的に見えるが縄張りを犯す者や仲間を傷つける者を許さない。
繁殖力が強く、「一匹見つけたら近くに千匹居ると思え」と言われるほど数が多い。
*ビックビートル
おっきい働き蟻
マジックアイテムや召喚魔法で女王と錯覚させる従える事が出来るほか、はぐれのビックビートルだけ恩義を感じると従える事ができる。
*サーペントウルフ
野生の狼だったのが魔物化したものと言われている。
毛並みはふさふさ。
飼い馴らせば普通の犬と変わらない。
次回の更新ですが現在、この話含め六本書いてるので正確にいつ投稿するとかは書けませんが一ヶ月以内に必ず投稿します。




