表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ウルフ・ストーリー  作者: たぬたろう
第一章古代種
6/8

第六話 旅人

前回のあらすじ

お兄ちゃんは妹さんが嫌いだそうです

改変期と呼ばれる時代があった。

大量の新種が生まれた時期。

そしてそれまでの種族が大量に絶滅した時期。

しかしその時代、さらにその前の記録は失われている。

なにがあったのか知る人間は存在しない。


魔王を倒した狼を勇者はエンペラーと名付けた。

誇り高く、人に気付かれる事なく人を導いた狼。

勇者は敬意を示しエンペラーの名と名付けた。

その名は人間達にも広く伝わった。

狼の子孫はエンペラー・ウルフと呼ばれるようになった。


エンペラー・ウルフは改変期を生き延びたグレートプレーンズオオカミだった。



□■□□■□



「待ってたぜお嬢ちゃん!」


洞窟から出てくるとやはり大量の人間達が待ち伏せしていた。

一人一人は脅威ではないが数が尋常ではない。

人間の森が出来ている。

特に奥に居る巨大な剣を持った人間。

あれはヤバイ。

あの人間だけが全くの異質。

さっき見た黒い鎧の男ほどではないがそれに近い物がある。

この状況では逃げきれる事は不可能だ。


「ひっひっひっ。」

「つまらん。」

「おいおい、何言ってんだねーちゃん。これも大事なクエストだろ?」


この群れを統率しているであろう人間がその危険な人間に何かを問うている。

クエストと言ったか?

冒険者組合に近づくのはもうやめたほうがいいな。

こんなクエストをリコにさせたくもないし、こんな依頼が来るのであればあの建物の中で殺されるかもしれない。


「こんなつまらん事する気はないって言ったんだ!」

「そうかい。ならてめぇも纏めて殺してやるよ!」


こちらに襲いかかってくるかと思った集団が奥に居た危険な人間に襲いかかる。

一人では群れ相手には勝てない。

そう思った瞬間目の前に血の雨が振った。

何が起こったか理解は出来なかった。

ただ奥に居た人間の持つその巨大な剣。

それが振るわれたのが理解は出来た。


「はぁ・・・。」

「てめぇ!」


それからは見事としか言いようがなかった。

あの武器を振るうだけで"当たっていないはず"の人間が切り裂かれている。

魔法でもない。

どんな小規模の魔法であろうともかならず痕跡が残る。

その痕跡は欠片もない。

目の前の人間はただ剣を振るっているだけだ。

あれだけ居た人間が瞬く間に肉の固まりとなった。


「だから言ったんだよつまんねぇって。」

「あ、あの。あなたは?」

「私の名前かい?そうだな・・・浪漫の旅人って呼んでくれ。こんなくだらないクエスト出すような冒険者組合に居る気無いからよろしくー。」


こちらに剣を向ける気は無いのかもしれない。

しかし危険だ。

戦うよりも相手にどう戦う気を起こさせないかが重要だ・・・。


「な、なんで殺したんですか?」

「だって殺そうとしたんだよ?殺されても文句は言えないでしょ?それよりちょっと良いかな。私はここの遺跡に用があるんだ。」

「古代種の遺跡ですか・・・?」

「そう。もしかしたらここに手がかりがあるんじゃないかなーっと思ってついでにクエスト受けたんだけど・・・。失敗だったねぇ。まぁさっさと見限れたからそうとも言えないのかな?」


そう言って洞窟に入っていく。

あれが案内して欲しいというなら逆らわない方がいい。

こいつからリコを守り切れるとは思えない。

遺跡につくと熱心に絵とやらを眺めていた。

しかしそれはあの人間のお気に召す物じゃないらしい。

明らかに落胆の色が見て取れた。


「なるほどね・・・。」

「あ、あの。」

「あぁごめんね。ここは私には関係の無い遺跡だったよ。」

「そう・・・ですか。」

「一度街に戻ろうか。そこまで守ってあげるよ。」

「はい。ありがとうございます。」


そう言ってまた洞窟を出る。

するとあの死体の山にスライムが群がっていた。

どこから出てきたのかわからないが強い魔物ではない。

数が問題だが心配する必要がなかった。

旅人と言った人間が姿を見せた途端スライム達は我先にと逃げ出していた。

リコの話ではスライムは知性を持たずただ食欲のみで動くという事だったがそれでもこの旅人とやらに恐怖をしたらしい。

スライムが居なくなった後、その死体の山に水を掛ける。

ジュウジュウと音がして骨も残さずに溶けていく。

後に残ったのは装備品。

それらを回収し、リコの前の住処から持ってきた荷車というものに乗せる。

前の様に手下となる魔物が居ないが自分が引っ張ればいい。

そう思っていたら旅人が片手で引いていく。


「やっぱちょっと重いなぁ。」


ちょっとと言う話ではない。

革の装備品は死体と共に溶けたがそれでも鉱石とやらで作られた鎧や武器は残ってそこに乗っている。

そんなものが山になっているのに息一つ乱さずに引いていく。

もう理解が出来ない。

しないほうがいいのかも知れない。

けれど見ておかねばならない。

遺跡で会ったあの人間。

リコの兄というあの人間。

あれはリコを殺す気だ。

ならば最低でもこの旅人とやらと同等以上の力を得なくてはならない。

ならばすることは一つだ。

リコに通訳をしてもらいこの人間に鍛えてもらう。

笑顔で答えてくれた事から鍛えてくれるんだろう。

街までどれほど鍛えれるかはわからない。

けれど何もしないよりはいい。

街に戻るのは最初に来た時よりも時間はかかるがそれでもマシだ。



そうして旅人に鍛えてもらいつつやっと街が見えてきたところでまた騒ぎの音が聞こえる。

これは・・・。

多分だが街自体が我々を拒絶しているのかもしれない。

リコはまだわかっていないが旅人とやらは違う。

いつもの笑顔ではあるのだがその顔は一変の油断も見えない。

ここ数日でわかったのだがこの人間、相手が例え弱かろうと全く油断しない。

旅人ならば日が落ちるまでには街を滅ぼせるほどの実力はある。

旅人が動けば簡単にこの危険を打ち破れるだろう。

しかしリコは人間だ。

それも非力な人間だ。

下手に街を敵に回したら生きられなくなるだろう。

旅人もそれを理解している。

なんどか二人の会話を耳にしたがリコに「傷つけたくないなら傷つけなければいい。この世界では生きづらいかもしれないけれど私は好きだよ。」と言っていた。

ならば二人に任せよう。

それが最善策だ・・・。

解説


死体に掛けた水。

簡単にいえば生物に有効な酸です。

ほっといたら死霊系の魔物になってしまうしその場合かなり強力になってしまうからです。

特に今回の死体の数はリュコスは人間の森と表現しましたが大体100人前後。

1~2体の死霊系なら対処はできるけどその数はさすがに不味いですよ?

なので死体を消却しました。

冒険者組合に事情とタグを渡せば罪には問われませんし、冒険者が冒険者を殺すのはよくあることなので問題はないです。

ただ装備品などは一部を冒険者組合に提出しその遺族に送るのが義務です。

まぁ基本根無し草だったり天涯孤独だったりで提出されない事が多いです。


ちなみに魔物に襲われて死んだ場合大体スライムがよってきます。

知性も理性もない食欲だけのモンスター。

さらに死肉を食らうので掃除屋なんて呼ばれたりします。

しかしスライムも骨は食べないのでそれが残りボーンナイトなど骨系の死霊モンスターになります。

まぁ大体は殺した魔物が食べるのでそうそう無いですがね。


第一章はここで終わり。

ある意味ここまでがプロローグです。

ここから各街を周り仲間を作ったり敵を倒したりぽろりがあったり(無い)ラッキースケベがあったり(無い)・・・。

ここからが本番です。

次回はここまでの設定やプロフィールを投稿。

その次が第二章です。

大まかな道筋だけでどうするか全く決めてませんが・・・。


それに実はもう一本作っている話があるのでそちらを先に投稿するかもしれません。

とりあえず次回更新は来月となります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ