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植物

石筍暗黒草 1


 この植物が発見されたきっかけはある事故によるものだった。

 それは洞窟内の落盤事故。

 鍾乳洞を探索していた学者が一人、落盤により取り残された。持っていたカンテラの明かりは徐々に薄れ、じきに消えてしまった。

 彼はそのままうずくまり、空気の浪費を抑えようとした。そのとき彼は一つの石筍をすがるように握りしめていた。

 闇の中、息を殺していると、小さな枯葉が風に吹かれるような物音を彼は聞いた。

 指先を舐めて風を確認する。完全に無風だ。

 音は掌あたりから感じた。音だけでなく幽かな微振動も感じられる。

 石筍が、石膏の塊であるはずのそれが動いている。

 それは徐々に膨らんでいくように感じられた。冷たい石膏から何か薄いかさかさした平べったいものの感触が増えている。

 闇の中で、それは変異していくのだ。

 彼は何度もそれを撫でさすり、全体の形を確かめようとした。しかし、一筋の光もない闇の中、なれない掌の触感による観察は遅々として進まなかった。

 それでもそれが植物のこの芽が開くような動きをしていることだけは理解できた。

 翌朝、落盤した個所を取り除き救助が来た。しかし、彼の発言は一顧だにされなかった。

 石筍は石筍のままそこにたたずんでいたし、闇のなか一時的に錯乱したと判断され、彼の発見は闇に葬られた。

 それから十数年たってようやく、この奇怪な植物の存在が認知されるようになった。

 その石筍と思われていたものを掘り返してみれば、根に相当する器官が発見された。

 しかしその根が何を吸い上げているのかはなぞだった。

 石灰と玄武岩の混合でしかなく通常の植物が必要とする窒素酸化物はまったく発見できなかった。

 また内部構造を調べるため洞窟の外に出したところ、太陽光線を浴びた途端に崩落した。

 太陽光線を遮断する入れ物に入れて運んだとしても、根から切り離されたそれは数時間で崩落し、詳しい調査を行うことは不可能だった。


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