第1話
眠い。
通学路の電車の中で毎日思うことだ。
「おう、桜井直人くん!」
迫力のある声が車内に響き渡った。上原竜司が朝から迷惑なことを。
「竜司静かに。」
「了解です桜井直人くん!」
さすが馬鹿。
車内にいる同じ学校の後輩達が嫌そうな視線を俺たちに向けている。
確かにこいつは容姿はまずまずだが中身ジャイアンだもんな。
あとなぜかこいつに気に入られちゃったし。
竜司と共に行動すると誰も近寄って来ないような……
「遅いよ直人!」
2年2組の教室に入った途端、彩香に怒られた。
「遅刻してねーからセーフだろ。」
「でもこのままだったら本当に危ないから!あと三回遅刻で10回遅刻したことになる…」
「は〜い、わかりました〜」
「……これから気をつけてよ。」
彩香の顔がムッとした。お堅い性格の方は困るわ。
「彩香、竜司来てない?」
「え?来てないけど。」
あいつトイレ行くって言って逃げやがったな。今頃どっかでスマホゲームでもしてるんだろ。
昼休み。
橘哲也がニヤニヤしながら話しかけてきた。
「お前今日の朝さー、彩香と話してただろ。いいなー。」
「俺はロングヘアーよりショートカットの方が好みなんで。」
「いや関係ないでしょ。それよりさ〜彩香の事どう思ってんの?」
「お堅い方だなーって。」
「なんでも適当なお前とは正反対だな笑」
「いや俺、根は真面目だから。」
「嘘つけ笑」
「いや真剣に。」
「でもお前本当に恋愛とか興味なさそうだもんな。可愛い子好きになったりしないの?」
「もういいよ。早くご飯食べたい。」
「いいから興味あるかないかだけ。」
「ない訳ではないからね。彩香とかも普通に可愛いと思うよ⁉︎」
……あれ?皆なぜ俺を見てんの?
なぜ彩香の顔が赤くなってんの?まさか聞かれた?
「直人声大きすぎ。」
「マジ?聞かれた?まぁ確かに彩香も可愛いけど俺が一番可愛いから。」
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気持ちわりーんだよ、という罵声と共にその場はなんとか誤魔化せた。
ただこの時直人の脇汗が尋常じゃないことになってたのは誰も知らなかった。
竜司はその頃職員室にいました。