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歪んだ記憶、消えない記憶



黒。



全部、黒。



ここはどこ?





『約束だよ…。』





誰?




誰があたしと、何を約束してるの?





『僕と、一緒に…』




一緒に?わからない…、






『一緒に…、ずっと……。』




闇に、闇に消えないで。



消えないで…。








「………おい!」




現実に呼び戻したのは、けんとの声。





「…!あたしなんで倒れてんの…?」




「それはこっちが聞きたい。

勝手に倒れるな…。」





けんとは相当焦っていたのか、少し汗をかいているようで。

心配してくれたのが、ちょっとうれしい。





「…倒れてる間…。

闇の中で、誰かが言ってた…『約束、僕と一緒に…』。

それ以外は聞こえなかった。」





けんとは、はっとする。何かに気づいたような。




「聞こえない?ううん、聞きたくなかったのかもしれない。

過去の自分が、その記憶を嫌がっていた…。」





黙ってけんとは話を聞いている。

うつむいて、表情がよく見えない。





「…あんた、何か知ってる?

知ってるんでしょ…?」





けんとは、時の歪みを触れるから。

普通の人間、だけど歪んだものに触れるから。

歪んだものを、普通のものに見せられるから。





「あたしの…、歪んだ記憶を触ったの?」








りゆの声が、けんとの頭の中で響く。





歪んだ記憶…、そうだ。

触った、のか…!?

俺は…?






――消えることの無い…、

   記憶を埋めて…。




「………………。」






けんとは、黙るしかなかった。

自分が、自分が記憶に触って、少し記憶を変えたから。

それを今、思い出してしまったから。

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