思い出す、何かを。
ピアノの音色が止まる。
「別に。
ただ、どこかで聞いたような気がして…。」
何だろう、遠い記憶の中に…。
そういえば、小さいころの記憶が無かった気がする…。
思い出したい、思い出せ!!
『一緒に歌おうよ!
僕と一緒に!』
――何て歌?
『愛の……、………!』
聞こえない、何の歌なの?
「ねぇあんた…、それ、何て曲なの…?」
恐る恐る聞く。
「……それが、その、…わからない。」
「どうして?なぜ分からないの?」
「…昔から知っていた。
それに何故この曲をお前が知っている。」
そんなもん知るか!この馬鹿男!
何て、冗談だけれど。
「そんなもん知らないわよ…。
…曲、続けてよ。」
またピアノの音色が響く。
とても、とてもきれいな、旋律。
―――ららら、ら…♪
頭の中に、ふと浮かぶメロディ。
誰かが歌ってる…、気がする。
「……ららら、ら…、らら…、
ららら…らら…?」
何であたし知ってんの…、このメロディを…?
ピアノの音色はまた止まる。
「おま…、この歌知ってんのか?」
「知ってるわけ無いじゃない。
勝手に頭に浮かぶのよ。」
…。
「……、」
♪〜♪〜〜〜♪♪〜
またピアノの音色が、音楽室を支配する。
綺麗、綺麗だけれど。
「……こんなに……れ………ない…?」
記憶に直接流れてくる、何だろうこれは…。
『約束だよ…、ずっと、一緒にいる…よ……!』
はっとしたころには、意識が途切れていた。
黒い、闇の中におちていった…。
「おい!おいりゆ!!」
誰かの声が聞こえる。
――もう、どうでもいいわよ…、こんな世界…。




