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ピアノの音色
放課後。
音楽室の前を通ると、
そっと響くピアノの音色。
何の曲だっけ……?
考える。
思い出すために。
『とても、大事な曲だった気がする。』
思い出そうとすると、頭が痛くなる。
何か不愉快な思い出?
よくわからない。
気になって音楽室をのぞく。
ピアノで顔が見えないけれど、
誰かは特定できる。
普通に聞いていれば
普通にいい曲。
だけれど何か、自分にとって不都合な曲。
誰…?
記憶を探す。
砂を掘るように。
でも、湿気を含まない砂は
さらさらと穴を埋めていく。
「…お前はのぞきの趣味があったのか。」




