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change4 私にとって、大切なもの。

『こんにちは。そこで何をしてるの?』

同じ年くらいの少年が私に問う。


何をしているんだろう?


『なんていう名前?』


何だろう…私の、名前…。


『もしかして、名前ないの?』

私は無言で頷く。

『じゃあ、僕が名前をつけてあげる』

私が驚いて、顔をあげると少年は微笑んでいた。


『あなた…誰?』

少年ははじめて口を開いた私を見て、再び微笑む。

『僕は、悠。―――――――あ!決めたよ!君の…君にぴったりな、名前!』

名前?

私にぴったり…?


『うん。春に鳴く小鳥みたいに可愛い声だから、【春音】でどうかな?』

はるね…春音…。

私の名前…。


『春音…名前…』

『うん、そうだよ!君の名前は、春音!』

『悠くーん。時間よー』

『母さんが呼んでいるから、もう行くね。――――――――またね、春音!』

そう言い残すと、少年は去っていった。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○


「悠がくれた名前だもん…絶対に、それだけは忘れないよ」

これは嘘じゃない。

今でも、悠に感謝している。人形のように何を見ても動かなかった私に名前を与えてくれ、しかも、仲良くしてくれた。


「春音…。俺は、お前がどんな姿になろうが、必ず護ってやる」

「じゃあ、約束ね。―――――――指きりげんまん嘘ついたら針千本のーます。指切った!」

私は悠の右手の小指に、自分の左手の小指を絡めた。


「…嘘ついたら、ホントに呑んでもらうよ?」

「………呑むのか?」

「大丈夫、悠は約束を守ってくれるって信じてるから!」

「あぁ。必ず護ってみせる」


悠は再び私の額に唇を落とす。

その感触がくすぐったくて、私は首を縮める。


「春音」

「何?」

「…なんでもない」

そういうと、悠は私を抱いたまま、再び眠りに落ちた。


「おやすみ、悠」

私も、悠につられるように、再び眠りについた。


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○


次に私が目を覚ますと、悠が隣で身支度を始めていた。

「おはよう、春音」

「…おはよぉ…。悠、早いね…」

眠い、眠すぎる…。

「まぁな。―――――――――体の調子はどうだ?」

「うーん…動くのに、支障はなさそうだから、問題ないと思うよー」

いつもこんな感じだしね。

こんな生活に慣れてしまった自分が少し怖い。


「じゃ、俺は先に学校に行くぞ」

「あれ?朝ごはん、どうするの?」

「コンビニで買って食う」

悠が、ここに泊る羽目になったのは、私のせいだし…。


「朝ごはん、うちで食べていきなよ」

悠が驚いた顔をしている。

そんなに驚くようなことかなー…。


「……お前…自覚あるのか?」

「何が?」

悠が黙り込む。というより、何か考えているように見える。


「はぁ…」

悠の短いため息とともに、悠に手首を握られ強く引っ張られる。

「わっ」

勢いに任せるまま、私の体は悠の体にすっぽりと包み込まれた。


「ゆ、悠?」

「お前、性質(たち)悪いわ」

「はい?」

悠の言っている言葉の意味が分からない。

そうこうしているうちに、私の首の後ろあたりに感じる痛み。


「痛っ!悠!!」

悠から離れようとあがくが、男の悠に力で敵うはずがない。

「春音。お前、俺がなんでコンビニで買って食うって言ったか分かってるか?」

「私のご飯は不味そうだから?」


悠がおなかを抱えて笑う。

ひどいっ…、私をバカにしてるだろ!!


「そこまで笑わなくても…」

なぜ笑われているのか、分かんないけど。

さすがに、傷つく。


「お前の飯は、おいしそうだよ。だけど、それを食べたりしているうちに、余計なものまで食べてしまいそうになるからな」

「余計なもの?」

「少なくとも、今はまだ食べるべきではないもの、だ」

うーん…さっぱり分からん。

悠は昔から何を考えているのかイマイチ読み取りにくい。


「じゃ、そういうことだから」

悠は私をそっと放すと、玄関へと向かっていく。




そして、次の瞬間。

私はとんでもない行動に出た。




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