change2 言葉は選んでから、言うべきでした。
宇佐美春音、16歳。
たった今、女に戻りました。
これで晴れてピッチピチの女子高生に戻りました!
痛みの終結=性転換終了ということも最近になって分かり始めたことで、この生活にも悪い意味で慣れてしまった。
なんたることだ。
「悠…?えと…私…」
自分の体を見下ろすと、無事女に戻っていた。
やっぱり、感覚も大切だけど目で見ないと納得できないんだよね。
「春音…」
悠が、私から目を逸らす。
「何…?」
悠の顔が赤い。熱かな?
「その……服…ボタンをとめてくれないか?」
よくよく自分の状態を確認すると、男の姿のときはブレザーの一番上のボタンをはずしていたため、胸元があらわになっていた。
「変態っ!!」
私は急いでとめようとした。が、性別が変わったばかりの体が、そう簡単に上手く動かせるわけもなく、案の定、上手くとめられない。
私は悠を見て気付いた。
「―――――――――ご、ごめん!制服に私の血つけちゃって!!」
悠の足元に倒れこんだため、悠の制服に咳き込んだとき吐いた血がべっとりとついてしまった。
さらに、悠が私を膝に寝かせてくれていたため、それはもうべっとりと付いている。
急いで悠から離れようとするが、やはり、性別が変わったせいでうまく動けない。
私の推論だけど、これは体の大きさの変化、体の筋肉、免疫力などなど…それらの変化から来るものだと思っている。
「大丈夫か?春音」
悠が心配そうに顔を覗き込んでくる。
「うん、大分慣れたから……痛いけど」
そういうと、悠が苦笑いを浮かべる。
「そうか。――――――――立てるか?」
悠に差し出された手を摑み、懸命に立ち上がろうと足に力を入れるが、立てなかった。
「…立てません」
「仕方ない」
そういうと、悠がひょい、と私をいわゆるお姫様だっこした。
「ゆ、悠!?」
「立てないのだから、仕方ないだろう?」
うむ…事実だ。
いや、事実だからと言って、受け入れることができるものでもない。
「は、恥ずかしい…」
顔が赤くなっている自覚がある。
今絶対に悠の顔を見ちゃダメだ。
悠はそのまま部屋へと上がり、私をベッドに寝かした。
「ごめん…ありがと…」
悠はそう言った私の頭をそっと撫でる。
「大丈夫か?」
悠は何度目か分からない質問を投げかけてきた。
「もう!何度目か分かってるの?その質問!」
ベッドに横たわる私にタオルケットをかけ、自分もその横に座る悠。
「さぁ?それだけ俺が心配しているということを、忘れるな」
私の鼻と自分の鼻が掠れるところまで顔を近づけて、そう言う悠。
もう!
恥ずかしいことをよくも平気な顔でやるな!!
「じゃ、俺はそろそろ帰る…と言いたいところなんだが…」
何かあるんですね、はい。
「お前がその様子だと、やはり心配だ」
おうっと、雲行きが怪しくなってきたぞ。
これは、避雷針か何かが必要だなぁ…。
「ま、そういうことだから、今日はここに泊まっていく」
で、ですよね~。
その流れですもんね、はい。
もう、そう来ると思ってましたよ。えぇ。でも、分かってますか?
私、こう見えて…
今、女なんですけどぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!
「いや、悠。泊まるのは別にいいんだけど、ほら…私こんな状態だから…ね?」
「何が『ね?』だ。お前、その調子じゃ今日いっぱいは、絶対に動けないだろ、どうせ。」
お耳が痛いです、悠。
「むぅ…」
タオルケットを顔が隠れるまですっぽりと被る私。
この分からず屋!
恥ずかしいという言葉が、お前の頭の辞書にはないのか!?
「晩飯、冷蔵庫の中のもの使っていいか?」
「うん」
「風呂沸かしとくから、あとで入れよ」
「うん」
ヤバイ…。
非常にヤバイ。私、女ですよ?悠は男だよ?
一つ屋根の下に、男女が一緒ってヤバイだろぉぉぉおおお!!
「春音」
もう、頭に何にも入ってこない。
真っ白だ。あぁ、頭が真っ白になるってのは、こういう状態のことなんだ。
ふむふむ、なるほど。
「ご飯、何でもいいか?」
「うん」
「一人で食べれるか?」
「うん」
「…食べさせてやろうか」
「うん……うん?」
今、悠はなんて言った?
「…そうか」
え?
何?私何の質問に対して『うん』って言ったの?
え?
なんか、悠が顔を真っ赤にして向こうでご飯作ってるんだけど。
え?え?えぇぇぇぇぇええええええ?
ま、いっか。
楽観的過ぎるかな?ま、たぶん大丈夫っしょ。
たぶん。
「春音」
悠が台所から呼ぶ。
「風呂、先に入れ」
「うん」
悠が近寄ってくる。
ヤバイ、頭がボーっとしてて、悠が何言ってるのかまったくわかんない。
熱でもあるのかなー?
「一人では入れるか?」
「うーん…たぶん」
大丈夫!
のはず。頭がボーっとしているだけで、あとはどこも問題ないはず…。
そして、立とうとして気付きました。
「…立てないっす………」
すっかり忘れていました。
「一人では無理だな」
「あい…」
この返事が、自分の首を絞めるということに、このときの私は気付いておりませんでした。
なんと愚かなことでしょうか。
言ってしまってから、悠が行動に出てから自分の発言の重さを知りました。
遅くなってすみませんでした。
次回は、がんばります。