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change1 痛いです。超痛いです。ただ痛いです。

宇佐美春音、現在16歳、今の性別は、男。

1年間、コロコロ性別が変わること約100回。


分かったことは、元には戻れないということ。

そして、約3日に1回のペースで、性別が変わるということ。


「春音、帰るぞ」

急に背後から声をかけられ、振り返ると、俺より1つ分くらい大きな男がそこにいた。


「悠、驚かすなって。心臓に悪いだろ?」

「早くしろ」

俺の話は聞いてくれないようだ。




「ッたく、なんで、一緒に帰らないといけないのさ」

「仕方ないだろう、お前、よく狙われるんだから」

女の俺ならまだしも、男の俺を狙う阿呆がいるのか!?


「そこも問題だろ!俺は、男だぞ!!」

「今は、だろうが」

そこを突かれると、とても痛い。

「しゃーねぇだろ!勝手にコロコロ変わっちまうんだから!!」


こいつの名前は、柴田悠、16歳、普通の男。

小学校からの幼馴染で、俺の体の事情についても知っている…いや、クラスメイトも、まわりの奴ももちろん知っているが。3日に一度くらいのペースで、性別が変わるから。

と、まぁ悠は、性別がコロコロ変わる俺の唯一頼れる奴だ。


「なんで、悠と帰らないとならないのさ!」

「さっきと同じこと言ってるぞ」

「いいの、本当にいやだから」


そうこうしている間に、無事俺の家に到着した。

家といっても、一軒家ではもちろんなく、アパートだ。ものすごーくせまい。

一人だから、全然不便じゃないんだけど。


「んじゃ、また。――――――――次会うときは、女だから一緒に帰んないからな!!」

そう短く告げ、家の中へと入っていった。



●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○



「げ、限界…」

家の中に入ってすぐ玄関口で俺は、倒れこんだ。

痛い…。

「毎回毎回…」

体の中を蛇か、何かがのた打ち回るように痛い。


この痛みは、性別が変わるときに必ず訪れる。

しかも、継続的に。


学校にいる時点で、かなり痛かった。

ある程度は我慢できるが、まぁそれは、やはりある程度である。

許容範囲を超えれば、一発で気絶…なんてことには、残念ながらなってくれない。


あの自称・魔法使いの幼女…仮に、マジョ子としよう。

マジョ子がかけた魔法は、性別が変わる痛みで気絶することはない。つまり、痛みに耐える以外に、選択肢は存在しないのだ。


だからといって、毎回耐えるのはすごくつらいことに何の変わりもないのだが。


「痛ぅぅぅうう…ガハッ」

咳き込んだ拍子に、血も一緒に出てくる。

「またかよ…」

性別が変わるときに吐血するのには、もう慣れてしまった。

血が出るのはやっぱり体の中身まで変わっているからなのか?


手で口元を押さえているが、片手だけではカバーできず、床にも数滴落ち始める。

が、咳は激しくなっていく一方で、床に血溜りが出来始める。


ピンポーン♪


と、そこでタイミング悪く、インターホンが鳴った。


「春音?俺だ。悠だ」

いや、声で分かるって…。

悠だと分かっていても、激痛で動くことが出来ない。


「ゆ………う…」

咳き込んで、血がまた出てくる。


「春音?大丈夫か!?扉を開けろ!!」

いや、無理っす…。


「春音!!」

悠が扉を叩く。


よし、少しだ。少し動けば鍵に手が届く…はず。

少しだけ…。


カチャ


よっし、開いた!!

けど、限界…。もう、無理ッス…。


扉が開くのと同時に、入ってきた悠の足元に俺は倒れこんだ。

「おい!?春音!!しっかりしろ!!」

「……る、…せぇ」

痛いんだよ。大きな声出すなよ。頭に響くだろ?黙っていてくれよ…。

しゃべるのめちゃくちゃしんどいんだぞ!

血吐きそうなんだよ。って、もうある結構吐いてるけど。


痛い、痛い痛い…。

いや、マジで痛い以外に適切な言葉が見つからない。


だって、痛いんだもん。


そんな俺をそっと抱きかかえる悠。

いや、マジ助かる。

この姿勢、超楽。


「大丈夫か?」

悠の顔が…近い!てか、ここまで顔を寄せねぇと、見えんのか!こいつは!?

「すまん…今日は、寝坊してコンタクト入れられなくて…眼鏡だったんだ」

俺の考えを読み、答えてくれた。あぁ、こいつド近眼だったっけ。

「ゴホッ」

咳き込んで、再び血を吐く。

あぁ…悠の制服に血がついちまった。

「大丈夫か?」

「わ、るい…。ふく…血、つけて…」

「気にするな。そんなことより、本当に大丈夫か?」

何度目だ、その質問は!

大丈夫じゃねぇよ!!

これが大丈夫なように見えるなら、マジで眼科へ行けっての!!


超痛ぇぇぇぇえええ。

マジ痛ぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええ。


しばらく、その状態でいると、段々痛みが引いていった。


「春音?」

痛みがなくなっていく、ということは、性転換の終了も合図でもある。

あぁ…女に戻ったんだ…。


こうして、俺……否、私は久しぶりに…といっても、3日ぶりに女に戻りました。


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