ぷろろーぐ。
私、宇佐美春音15歳、女。
ニックネームはウサギ。
そんな私の部屋に、現在侵入者が現れました。
「ふふふ。あたちのマホウにかかったあなたは、もうおんにゃの子ではありましぇん!」
私の前に…どちらかというと下にいる幼い少女…いや、幼女に、そう宣告されました。
先ほどただこの少女に「えい!」と言われて、お腹の辺りをぺちん、と叩かれただけなのに…。
そんなのが、魔法だとでも言うのか…!?
「マホウちゅかいをなめないでくだしゃい!!」
実際問題として、現在進行形で体に…主に、体の内部に激痛が走っているのですが…。
「お嬢ちゃん、おかあさんはどこかな?」
とまぁ、私は当然の答えを返します。
「あたちのかけたマホウは、あなたの性別をコロコロ変えてちまうという、とてもおしょろしいマホウでしゅ!」
さらりと私の質問を無視したな。無視したな。
さらに、意味の分からんことまで…やはりこのまま、交番に連れて行くべきか…?
「どうでしゅかっ!あたちのことが、こわくなったでしゅか?」
どうしよう、怖いっていうより………むしろ可愛い。魔女っ子みたい…服もコスプレみたいだ。
小さい体で、胸を張る姿は純粋に可愛いんだけどな…。でも、幼女の発言を裏付けるように、激痛が体中に走っているわけなんだけど。
痛くて痛くて、立っているのもつらくなった私は、思わず部屋の壁にもたれるようにして、座り込んだ。
「えと…もとに戻してください」
「いやでしゅっ!」
「なんでですか?」
「てすとだからでしゅ!―――――――これで、無事しょうきゅうできるのでしゅ!」
…うむ。どうやら、頭を強く打ってしまったようだ。
私が。
そうだ、これは夢だ。夢落ちだな、うん。まったく…お~い、そろそろ朝だろうから、起きろ自分!!
「夢ではないのでしゅ。現実を見ることをすすめるでしゅ」
この子…何気に腹立つな…。
夢を見たいお年頃なのよ!
「で、私は一生このままなワケ?」
「そうでしゅ。じゃ、あたちはこれで…。ばいバイなのでしゅ!」
そう言い残すと、幼女の姿が煙のように消えた。
「痛ぅぅぅうう…」
体全体が、物凄く痛い。
ただ、痛い。
『痛い』以外に他に例えられる表現がないぐらい痛い。
ゴホっゴホッ
軽く咽ただけで、口の中から血が出てきた。
これは、やばい。
非常にやばい気がする…。
かくして、私、宇佐美春音15歳、女は、男女の性別にコロコロ変わるという謎の魔法を、突然私の部屋に現れた、自称魔法使いの幼女によってかけられてしまいました。
そして、それから1年の月日が流れました。
宇佐美春音、現在16歳、今の性別は、男。
1年間、コロコロ性別が変わること約100回。
分かったことは、元に戻れないであろう、ということ。