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最後の英雄譚  作者: 陽無陰
第四楽章 一人で全てを成す気高き者の名は『勇者』
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4-3 厭魔ジェヴォーダン

 コロニーを各国が攻略できない理由は二つある。

 一つ目が、穢魔の数量が軍のそれと比較して尚多いこと。

 人間同士の戦争と違い、政治的背景や戦後の駆け引きなどを考慮せずに済むとはいえ軍の戦力の低下は免れない。過去、コロニー攻略後の隙を突かれ、人類同士の戦争に突入した例もある。

 穢魔は定期的に野に放たれているものの、大規模な侵攻はコロニーが築かれてしまえば滅多にないことから防衛線を築くだけに留まる事がある。

 なので、取り立て急いでコロニーを攻略する必要がないのである。

 二つ目が、各コロニーに守護者の様に生息する厭魔と呼ばれる強大な力を持つ穢魔が必ず一体いるからだ。

 最近では、人型の厭魔が各地に出現しているが、こちらは神出鬼没なため、一つのコロニーに根付いたりはしていない。

 故に、ここフレイス王国のコロニーにも厭魔が存在している事は忘れてはいけない。



 その厭魔は己が巣を荒らしている人類を誅罰すべく、己が巣からのっそりと姿を荒らした。

 その厭魔は牛と同程度の大きさをした狼といった様相である。尻尾は長く曲がりくねっており、尻尾の房まで体毛は覆われている。小さな耳は真っ直ぐ立っており、口からはみ出ている犬歯は獲物を軽く噛み砕けそうなほど巨大だ。そして、特筆すべきは体毛が血の様に赤く染まっており、黒い縞模様が背中で主張している。

 その厭魔、ジェヴォーダンとフレイス王国で名付けられた厭魔は、己が主に命じられた任務を全うすべくその体躯で疾風の様に駆けた。

 


 襲撃は突然だった。

 大地を駆け抜ける音がその兵士の耳に届き、その正体を確かめるべくその方向を見た途端、赤い閃光が彼の頭部を突き抜けた。


「ひ!」


 その厭魔が醸し出す雰囲気は凄烈で、見た者に恐慌を齎す。

 脚を一歩踏み出すと、兵は恐れをなし、一歩引き下がった。

 赤い閃光が宙を舞い、兵の頭を噛み砕く。

 兵の頭部を噛み砕く咀嚼音が静まり返った周囲に響いていく。

 誰もがジェヴォーダンの傍から離れようとはしない。恐怖が彼らの身体を縛りつける。

 ジェヴォーダンが口の中のものを呑み込むと、狩猟の始まりを告げる咆哮を平野に響き渡せる。

 誰もが逃げ惑い、狩るものと狩られるものが逆転した。

 ――狩猟という宴が始まったのだ。



 ジャンは待ち焦がれた宿敵が現れたのを察した。

 あの咆哮は間違いない。父を、友人を殺した宿敵が現れたのだ。

 奴には一般兵では勝てない。

 だからこそ、自分が持ち場を離れたところで問題はない。


「副司令! 指揮を頼む!」


「は! お任せください!」


 馬に命じ、奴の元へと駆けさせる。おそらく、敵の殺気にあてられ途中で引き返そうとするだろうが、ある程度の距離を駆けてくれれば問題ない。どの道奴には馬上では勝てないのだ。ならば、そちらの方が都合がよい。

 ジャンは、軍の中では異例の速さでその地位で登りつめたといってもいい。

 そこまで彼を掻き立てたのは十年前、ジェヴォーダンに頭部を刈られた父が、そして友人が死体となって彼らの元へ送られた事が一因となっている。

復讐心も確かにあるが、同時にこうも思ったのだ。

 ――あのような無残な死骸を晒したくないと。

 彼も軍人として死は覚悟している。だが、顔を抉り取られ、所持品や鎧からでしか身元が分からない死体になるのは嫌だった。

 彼は人一倍功名心があった。なので、誰とも知れぬものに成り下がる事に耐えられなかったのだ。

 だからこそ、強くなった。無様な死体になりたくなくて。

 今、この恐怖の元となった宿敵がいる。奴を倒さねば、安心することなどできはしない。

 十年待った。今こそ、恐怖を断つべきだ。

 そして、祖国を救った英雄として名を馳せる時なのだ。

 全身鎧(フルアーマー)を身に纏い、バルディッシュを断頭台代わりに――。

 ジャンはジェヴォーダンと対峙する!



 バルディッシュの重量を活かし、一撃必殺を主体とするジャンに対し、ジェヴォーダンはその巨躯からは想像できぬほどのスピードで撹乱し、ジャンに攻撃を加えていく。

 上位の穢魔、つまり厭魔は人間と同じようにデュナミスを行使する。ジェヴォーダンが使っているのはノエシスと衝撃のエイドスだけだが、体格差、元々の身体能力の差もあってか、ジャンはバルディッシュの攻撃を当てる事ができず、牽制のデュナミスを当ててもたいした攻撃にはなってなかった。

全身鎧であったからこそ、未だに持っているとジャンは確信を持って言える。

 なんとか打開策を見出そうとも、突破口は見えず、加勢を期待しようにも、ジェヴォーダンの襲撃で戦線が崩壊し、兵はその対応に追われている。ここでジェヴォーダンを見逃せば、被害は拡大することが明白だったので引くことはできない。

 よって、ここを分水嶺とし、修羅となりて目の前にいる獣を粉砕する――


「おぉおおおおーーー!!」


 一つの弾丸となりて、疾風の如く迫り、バルディッシュを叩きつける。

 地面が円状に粉砕するも、狙った獲物は側面に回り、ジャンを噛み砕こうとその顎を開く。

 させじと、バルディッシュを横に振るも、ジェヴォーダンは難なくかわし、その身を引き裂こうと何度もジャンに迫る。

 だが、ジャンも懐に入られれば、成す術はないと分かっていることからバルディッシュを振り回し、攻撃と牽制を同時にこなす。

 事態は膠着状態に陥ったが、先に崩れたのはジャンだった。

 何度も振り回していった結果か、彼のバルディッシュは攻撃の速度を落としたのだ。無論、人間同士であればジャンも成す術はあったのだろうが、相手は実力が格上の獣。

 ジャンの隙を逃さず捉え、懐に入られ、地面に押し倒される。

 獣の牙がジャンに届きそうになった時、炎槍がジェヴォーダンを貫こうと空気を貪りながら迫ってきた。

 ジェヴォーダンは即座に身を翻し、ジャンの上から離れる。

 獣が唸る先にはエリオスがいた。

 彼は戦況が傾いたところに加勢せんと、尽力していたのだ。

 アタル達は、周りの穢魔を片づけさせている。

 アタルはともかく、レイア達ではまだ荷が重いと判断し、単独でジャンに加勢したのだ。


「すまない。助かった」


 ジャンは警戒しつつ下がり、加勢に来てくれた英雄の弟子に感謝する。


「気にするな。それよりも奴を倒すぞ」


「ああ」


「俺が奴の動きを止める。お前はその隙に……」


 エリオスは、ジャンがジェヴォーダンを止められない事は事前の動きから察していた。スタミナが切れている今は、下手に動きまわるよりも、一撃のために体力を回復すべきだと思ったのだ。

 ジャンもそれが分かっているのか、反論はしなかった。


 エリオスは炎の弾丸をジェヴォーダンに向けて発射しながら、自身も接近していった。弾丸は速射性を高めるために威力を落としているが、多少の牽制程度にはなっているようで、ジェヴォーダンは先ほどと違い、弾丸を避ける様に動く。

 エリオスはジェヴォーダンの動きを制限するように弾丸を発射することでジェヴォーダンの動きを制限しているが、ジェヴォーダンは時にはエリオスの予測を見破るかのように、弾丸をその体躯に受けるのを構わずエリオスに攻撃を仕掛ける。

 エリオスの身体に牙による裂傷が増えるが、エリオスは気にせずジェヴォーダンの行動を分析していた。

 ジェヴォーダンは頭部を狙う傾向が高い事を分析したエリオスはある算段を立てる。

 

 ふと、エリオスの身体が先ほどジャンが穿った地面に足を取られ、身体が傾く。

 ジェヴォーダンはその隙を見逃さず、エリオスの頭部を噛み砕かんと、赤き閃光となりて、エリオスに肉迫する。

 ――だが、それこそエリオスの狙いだった。

 エリオスはデュナミスを用いることで、地面にその巨躯を叩きつけた。

 予想よりはるかに早くエリオスの身体が地面に沈んだ事によって、ジェヴォーダンの牙は目標を見失い、その体躯は宙を泳いだ。

 その隙こそが、エリオスが欲していた隙。

 エリオスはジェヴォーダンの腹に向けて衝撃のエイドスを叩きつける。

 致命傷にはならなかったが、体躯は宙を投げ出され、ジェヴォーダンは苦悶の表情を浮かべた。

 ようやく出来た隙を見逃さず、ジャンは必殺の意思をバルディッシュに込め、その刃はジェヴォーダンの首を断ちきらんと迫っていた。

 数瞬後には、ジャンの予測に過たず、ジェヴォーダンの首は胴体から刎ね飛ばされるはずだった――。


  ** *


 ジェヴォーダンは窮地に立たされている事を認識していた。

 このままでは命じられた任務を果たせない。そう思った彼は、自身に秘められた力を解放した。


葬世(ゲブラー)


 それは、自身の渇望を阻害するものを葬る力。

 己が世界を崩壊させるものを排除する破壊の具現。


『《貪り喰らう群狼(ディバウアーウルフ)》』


  ** *


「がはっ!」


 衝撃がエリオスを襲い、地面に身体を無理やり沈ませられた。

 何事かと、ジェヴォーダンを見ると、真紅の毛を逆立たせ、王者の如く君臨する獣がいた。

 ジャンは先ほどの衝撃で吹き飛ばされ、彼も地面に転がっていた。

 魔獣の咆哮がエリオス達を威嚇するように空気の壁となって叩きつけられる。

 変化はそれだけではなかった。

 ジェヴォーダンからは光の粒子が発し、それが狼の形を形成し、エリオス達にその牙を剥く。

 光の狼が触れると、ジャンの鎧が呆気なく弾け飛んだ。無防備になったそこを次の狼が襲いかかる。咄嗟に腕を翳し、難を逃れようとしたが、腕がジャンから千切れ飛ぶ。


「がぁ!!」


 体力を消耗していたところに、腕が千切れ飛ぶという激痛が加わり、ジャンは意識が途絶えた。

 エリオスにも光の狼は襲いかかったが、かろうじて避ける事ができ、その狼は地面にぶつかった。

 ぶつかった地面が弾け飛んだことから、エリオスはこれが衝撃のエイドスだと悟った。

 もっとも、彼の知るそれとは威力も形も異なるが――。

 弾け飛んだ地面の衝撃に押され、エリオスは体勢を整えようとしたが、そこにジェヴォーダンが体当たりしたことで、彼の体は吹き飛ばされてしまった。

 肋骨が折れた事をエリオスは悟るが、彼としては気にする暇もなかった。

 追撃せんと、ジェヴォーダンが迫ってくるからだ。

 ――ここまでか、とエリオスは諦めたが、ジェヴォーダンに肉薄した存在が彼の命を長らえさせた。


「させない!」


 アタルは敬愛する師匠を守るべく、その身を割り込ませたが、ジェヴォーダンは虫でも払う気安さでアタルを軽く撃退した。

 それはアーブも、レイアも同じだった。

 光の狼が彼らに襲いかかり、彼らは呆気なく地面に横たわる事になった。

 一歩、一歩、死神が歩いてくる音がする。

 師に、仲間に、迫りくる死神を誰か退けてくれと思った。

 ――誰か助けてくれ!

 彼の願いが聞き届けられたのかは定かではない。

 確かなのは、魔性の獣がその歩みを止めていることだ。

 何事だと、彼は獣の見遣る先を見た。


 そこには、黒き血で染まった別の死神がいた。



 セレナは刀身に付着した血糊を振り払う。

 もう、この平野に残る穢魔は厭魔一匹だけ。

 フラウを庇いながら、マーテルとエリオスの元へ向かう。

 マーテルはエリオスを回復すべく彼の傍にいたが、アタル達が撃退された事により、呆けていた。


「マーテル、彼らの回復を」


「はい!」


 セレナが声をかけると、自分の役割を思い出したのか、治癒のデュナミスを発動させた。

 フラウも別の者に対し、治癒のデュナミスを掛けていたが、セレナは何もしない。

 いや、フラウを危険から守るべく動くのが、彼女だ。

 彼女はジェヴォーダンからフラウを守るべく威嚇していたが、その必要はなさそうだ。

 シヴァがその破壊を具現化した剣に、獣も彼の剣の葬列に加えるべく対峙している。

 加勢はしない。邪魔になるからというのもあるが、シヴァがフラウを気にせず戦えるようにするのが彼女の役目だ。

 もしかすると、他にも戦力が加わるかもしれないし、人間がフラウに危害を加えるかもしれない。

 だから、彼女はフラウの元から離れない。それが彼女の存在意義だからだ。

 冷酷ではあるが、自分達はこの役目に納得している。

 シヴァもセレナになら、安心してフラウを任せられると思っている。

 

 

 シヴァとジェヴォーダンがその刃を交えた。



 アタルは傷ついた身体で、シヴァとジェヴォーダンの戦いを眼に焼き付けていた。

 羨ましい――自分は足止めする事も叶わず、すぐにやられてしまったのに。

 彼の心に羨望と嫉妬が芽生える。

 どうしてなのだ? 

 彼ほどの力があれば、僕は僕が理想とする『英雄』に『勇者』になれる筈なのに――

 仲間を信じ、助け合い、人々を守る事が出来るのに、彼はその真逆を体現している。

 悔しい――力のない自分が。無様に地面に這いつくばる事しかできない自分が。



 レイアもアタルと同じことを思っていた。

 彼ほどの力があれば、きっと世界を正すことができるのに、彼はその力を殺戮のためにしか使わない。

 自分ならば、きっと――正しい事にしか使わない。

 殺戮のためではなく、人を生かすために使うのに、彼は人を殺すためにしか使わない。

 


 認められなかった。

 自分が理想とする『勇者』がそんな姿をしているなんて。

 自分が目指すべき『勇者』がそんな行動を取るなんて。



 二人は奇しくも同じことを考えていた。



 アーブの心に一滴の闇の雫が垂れた。

 やはり、駄目なのか?

『勇者』でも『英雄』の子でもない『平民』の子では『英雄』にはなれないのであろうか?

 彼は飄々としていて、口には出さないが、実は自分も『英雄』になりたかった。

 実力もない自分がそのような事を口に出しても、笑われるだけだ。

 ならば、小さい事を言って自分を慰めて何が悪い。

 どんなにでかい事を言っても実現できないのであれば、無意味だ。

 ――だけど……強くなりてぇ。

『英雄』だと、こんな自分でも『英雄』になれるのだと吹聴したい。

 彼はそう思った。



 マーテルは嫉妬していた。

 だが、そんな自分を神の使徒として恥じていた。

 彼女が見遣る先には『聖女』。

 彼女は自分が必死になって、一人治療をしていくうちに、二人、三人とその数を増やしていく。

 悔しかった。自分の専売特許を奪われたようで。

 同じ守られる存在なのに彼女は違う。

 彼女は目撃していた。

 フラウとセレナに穢魔が迫った時、セレナがその大半を切り捨てたが、彼女に穢魔が迫ろうとした時、強大なデュナミスで穢魔を滅殺した事を。

 彼女は戦えないのではない。戦わないのだと悟った。

 自分は戦えないのに、彼女は戦える。

 しかも、治癒系や補助系のデュナミスでも一歩も二歩も先を進んでいる。

 悔しかった。これほどの差がつけられていることが――。

 シスターとして生きるのであれば、『聖女』は羨望の的だった。

 実際、彼女はフラウを羨望している。

 だが、彼女に芽生えているのは、嫉妬だった。

 彼女は自分よりも遥かに全てが上だった。

 羨ましかった。憎かった。

 相反する心を宗教心で封じこめ、治療に集中した。



 光の狼がシヴァを喰らわんとその顎を開くが、一度もその牙がシヴァに届く事はなかった。

 シヴァが纏う風の鎧が光の狼を吹き飛ばす。

 狼の形を取っているとはいえ、エイドスである事に変わりはなく、シヴァにとってみれば気にする様なまでの事ではなかった。

 彼の身体は一定以上の攻撃力を持つエイドスでなくては通ることはない。

 とはいえ、これほど強力なエイドスならば、当たった衝撃までは殺すことはできないので、風の鎧で光の狼を吹き飛ばしているのだ。

 その光の狼を発しているジェヴォーダンは、今までとは打って変わって直接的な攻撃を避けていた。

 彼は獣の本能で理解している。もし、接近してしまえば、自分の命は尽きるであろうと。

 だから逃げ回り、必殺の機会を窺っていた。



 ジェヴォーダンの瞬間的な早さと同程度のスピードを出すことはできるが、持続性はジェヴォーダンの方が上だった。

 ジェヴォーダンは一定の距離を保ち、シヴァが近づこうとするとそれを察知し、身を翻す。

 だからジェヴォーダンを倒すには、遠距離から攻撃して当てるか、素早い動きを止めるしかない。

 遠距離からの攻撃は今のところ上手くいってはいない。距離が開けているので、ジェヴォーダンは攻撃が到達する前に避けてしまうのだ。

 大規模な攻撃をしたいのだが、今は些か消耗していることと、器の関係から避けたかった。

 だからシヴァは動きを止めることにした。


 

 ――したのだが、思わぬ事が起きた。


「全軍、奴を仕留めろ!」


 穢魔を全て仕留め終わったことから、遊軍となっていた者達が義憤のためか、武功のためかはしらぬが、次々と襲いかかっている。

 ジェヴォーダンは突如とした現れた乱入者達を慌てることなく、撃退している。

 光の狼が兵士達に次々と襲いかかる。

 兵士達はその数を利用して、光の狼をその身に喰らいながらも、前に進んでいる。

 ジェヴォーダンとしては彼らを撃退することなど容易い事だが、余りの数の多さに意識をシヴァから逸らしてしまった。

 ――それがジェヴォーダンの敗因となった。


「《雷霆の矢(ヴァジュラ)》」


 凝縮された雷霆の閃光が主に命じられた敵を討ち滅ぼさんと、雷速で宙を駆け抜け、ジェヴォーダンの体躯を貫き、蛇の如くその身を這いずり回る。

 ジェヴォーダンの息は既に絶え絶えとしており、最早生きているのが不思議なほどだった。

 ジャンは片腕となりながらも、額に脂汗を掻きながらも、今度こそジェヴォーダンを断ち切るべくバルディッシュの柄を力強く握りしめた。


「オォオオオオオーー!!」


 裂帛の気迫と共に、放たれた断頭の刃は今度こそ寸分違わずにジェヴォーダンの首を断ちきった。



 ――ここにフレイス王国を苦しめていた一角は崩れ落ちたのだ。


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