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『12、納得はいかないけれど引きずるものか /13、久しく姿を見られたことも、叱る心も嬉しく思い /14、挨拶を返していれば』

『12、納得はいかないけれど引きずるものか ――――』


「猫の子連れてるみたいだ」

 二度目のデートでふられた。自分から告白したくせにふるなんてずるい。

 腹が立つし悔しいし、物にあたって1週間で枕を二つも潰してしまった。

 お小遣いを枕で使いきるなんてばかげてる。

 枕はもういい。

 街へ出よう。立ち直るのに必要なのは新しい男じゃない、買い物だ!




『13、久しく姿を見られたことも、叱る心も嬉しく思い ――――』


 陽光差し込む竹林の道の途中。小さな祠に供えられた饅頭に手を伸ばす童がいる。

 帰路を急ぐ一人の少女が罰当たりを見咎めて、横を抜けざまにその手をはたいた。

 目をまるくした童がすぐにうふふと笑うのを見て、少女は悪さん坊めと睨んで通り過ぎる。普段から閑散とした林道は今は童と少女の姿しかない。


「また叱ってくれな」

 

 去る少女の背に声がかかる。

 差す陽光のようにまっすぐ届いた声は、深く凪いだ男性のものだった。少女ははっと体をはねさせて背後を振り向いた。

 見渡す視界のどこにも、声の主は見当たらない。童の姿も忽然となく、立ちすくむ少女の足元をつむじ風がなでるように駆け過ぎていった。




『14、挨拶を返していれば ――――』


 通学途中の道の脇でたんぽぽが一輪だけ咲いているのを見つけた。

 春の陽ざしの下で一輪鮮やかに咲く花を私は心まばゆい気持ちでながめて通りすぎる。

 

 けれど、咲くれんげのその下で、ただ一匹身を休めていた蟻が会釈をよこしていたことに私は気づきはしなかった。






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