『5、待つ木馬/6、ちいさいさん/7、雨に弱い家/8、人の心は絶えず動いている』
『5、待つ木馬 ――――』
揺れる木馬が泣いている。
空っぽの部屋はカーテンが閉じられ、暗く沈む。あのお陽さまのような明るさはどこへいったのか。
「はやく帰っておいで」
閉じた口で木馬はいななく。あの子がいたなら木馬の声が聞こえたろうに。――
――どこにでも連れて行ってあげる。草原にも海原にも宇宙にだって。
あの子がいればどこにでも行ける。心ひとつで飛べる気になる。
あと幾日数えたらあの子は帰ってくるのだろう。蒸し暑い夏はまだ始まったばかりなのに、木馬の心は寒々している。あの幼い子がいないというだけで。
『6、ちいさいさん ――――』
ちいさいさんは、めいっぱい怒っていたんだよ。頭からぽっぽ湯気が出そうな勢いだった。
おおきいさんは、それを見ながらゆったり「うん、うん」とうなずくばかり。
ちいさいさん、よけい怒ってちいさい体でかげんなくあばれたものだから、つかれ果てて、最後はくたり眠っちゃったよ。
『7、雨に弱い家 ――――』
「明日から頑張るぞ!」
青年は自分に気合をいれた。今夜のうちに支度も済ませ、すでに明日の準備も万端。
―― 一夜明けた朝、窓の外はどうどう降りの豪雨だった。
眼前の道は大河もかくや。見る間に家は孤島に早変わりした。
青年は鞄とドアを見比べてうなずいた。
「明日以降、頑張るぞ!」
『8、人の心は絶えず動いている ――――』
宝島を探して彼は旅に出た。
夢は海原同様果てがない。舟は宝島はおろか島の影も掴めなかった。
陸を求め彷徨うこと二か月。
水滴ほどの水さえ費えた彼の目に飛び込んできたのは楽園のように豊かな孤島。
果物の香りが滴り満ちる島に足をおろした瞬間、彼は舟を振り返らず島に根をおろした。




